非常勤講師のやりがい搾取を解決しないとオンライン講義の可能性の話はできない:謎の大学批判や提言のその前に
後期のオンライン講義、辞退する非常勤講師が次々に…というツイート。
ツイートされた先生も書かれてますが「インフォーマルなねぎらいの言葉」だけだと辞退される方々ますます大勢出てくる気が…。
(逆に早々にオンライン手当を支給した非常勤先に来年の予定聞かれた時、爆速でお返事しました…笑
1000人近い学生の通信環境を教えてもらって、リアルタイム講義を諦めたり、オンデマンド配信のツールで困ってること聞いてYouTubeにしたり、24時間体制でLMSの挙動や教科書販売の動向を学生に伝えたりとか、全部時間外労働ですもん。。辞退する非常勤講師も現れますよね。。
そもそも
非常勤講師が頑張ってしまうのは、
①オンライン講義対応できないと職を失って生活できない(無理難題でも低賃金のまま無理難題に対応せざるをえない立場)、
②大学ごとのチカラの抜きどころの共通理解が非常勤講師には伝わりづらい、
③講義自体は好きでやりがいを感じるので手を抜けない(でもしんどい)
(上記①②③に加えて「学生さんのためを思って」を付け加えてほしいとTwitterで新稲法子さんに指摘していただきました。①②③すべての大前提ですよね。)
後期のオンライン講義がこのままの体制で(不)可能かどうかは、SNS上で「コロナ禍で論文執筆がはかどった」と公言する先生方の実践を共有するだけではなく、それを可能にする社会的条件を明らかにして、それを非常勤講師が獲得するところから議論を始める必要があるのではないでしょうか。
1度調べてみたいのですよね、どなたか、いかがでしょうか(「コロナ自粛で論文執筆はかどった」と公言されておられる方々の常勤講師の割合、大学でのポジション、ジェンダー、国公立/私立、都市/地方、家庭環境、任期付きか否かetc.)
非常勤講師のやりがい搾取の構造、その不平等と不公正の是正があって、はじめて後期のオンライン講義の可能性について議論できる。学生の通信環境・家庭環境、任期付き教員、文科省の難儀さもひっくるめて。そこをスルーした大学批判も楽観的な戦略の提示も、机上の空論&砂上の楼閣。
そう思います。
落ち着いてオンライン講義と対面講義の準備をしたい。論文書きたい。それだけっす。そのための社会的条件の是正がほしい。それだけです。
一応書きますと「なんもしてこなかった」わけではないんです。リスク承知の上でこの身を晒したりもしてきました。でも、まだ状況ガッツリとは変わってないんです。
非常勤講師の問題は1人だと解決しないし1人だけで直面してる問題でもないのでNHK #ニュースウォッチ9 に出演してみた話
困ってる状況で黙っとくのが目をつけられなくて「賢い」のかもしれないですけど、黙ってたらずっと困り続けますし、ほかの困ってるみなさんも後輩たちも困り続けるじゃないですか…
非常勤講師のやりがい搾取の問題、まわりまわってどころか直接的に学生にとっても大学にとってどえらいマイナスです…。どんどん疲弊していく先生たち、本当はおもろい(かもしれない)講義を受けられたのに、失策だらけの「大学改革」のせいでとばっちりを受けるのは、学生。
大学非常勤講師のやりがい搾取の問題をとりあげずになされる、大学批判や未来への提言って本当に的を外していると思います。
そして、この状況を招き寄せたのは「大学改革」なのですから、批判的検証が不可欠。学生の声を取り上げるのは大事なのでやるべきですが、上記2点をふまえないと空回りにしかならない気がします。
常勤の教員の困難も、常勤・非常勤の職員の困難も、学生の学費問題も、「大学改革」の検証と、早急な是正が必要なのではとおもいます。。
あと、対面講義を迫るだけの報道も国会議員の論説も、感染リスクの増大に資する上に、なにかあったら大学の「自己責任」にしそうなので、乗れないし、乗らない(ところが多いでしょう)し、そもそも学生の生命と生活をどう考えてるんだろうとも思ったり。。
てんてこまいになってる上に非常勤講師の待遇改善のために(SNS内だけではなく)学内でたたかっている常勤の先生たち、職員のみなさんと共に、変えていきたいことばかりです。。
そろそろなんとかしませんか、後期が始まる前、この暑い盛りのうちに🌞
ではでは
じゅりあん
【ご報告】
雑誌『都市問題 』に「コロナ禍のオンライン講義と非常勤講師のやりがい搾取」という論考を寄せました。春学期からちょこちょこ書き足していた文章に、居場所を与えて頂き感謝です。「コロナ禍の大学」特集で、非常勤講師の苦楽・仕組み・連帯について書きました。
コロナ禍の大学については、論じる個人の立ち位置でまったく違う景色が広がっていると思います。学生の皆さん、保護者の皆さん、常勤の先生の皆さん、職員の皆さん、地域の商店街や施設の皆さん、なにより、非常勤講師の1人1人にとっても。書かないことで得られる「安心感」より、書くことを選びました。
あ、大事なことを。「搾取」の意味合いは、読んでからのお楽しみなのです。
『都市問題』には1月号と12月号という、幕開けとトリにお呼びいただき、とても嬉しく思っております。1月号では朝日新聞・天声人語でも取り上げられた「共に都市を歩く」という大切な論考を寄せています。日経テレコンでも配信中ですので、ぜひ。
こっちは朝日新聞。
ではでは、今回はこのへんで。
じゅりあん
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