見出し画像

マリ北部でまた紛争再発

直前の投稿「夕方、妻と公園を散歩」には続く話があります。
そちらはFacebookに、妻の何枚かのポートレートと一緒に載せたのですが、文章だけこちらに転載します。

昨夕と今夕、近くの公園まで妻と車で出掛けた。
子供たちの明るい声を聞き、池の水の香りをかぎ、木々の緑を愛でながら、たわいない話をした。
1日の暑さがまだまだ残っていたが、木陰に吹く風は心地よかった。

長い前置きになるが、ギニア、マリ、ニジェール、ナイジェリアの4カ国を横切り4,000km以上にも及ぶニジェール川は、熱帯雨林がサハラ砂漠に挑んだような川だ。
ギニア湾から300kmしか離れていないギニアの水源から、海とは逆の北東に流れ出てマリに入りサハラ砂漠にぶつかる。
しかし砂丘に勝てず東に進路を変え、ついには砂漠に負けて南東に下りニジェールに入る。
そして最後はナイジェリアで真南に下ってギニア湾に注ぎ出る。
妻の生まれたラスエルマは、そんなニジェール川の最北部に氾濫期に溢れ出てできた支流の行き止まりに、季節的に現れる季節湖「ファギビーヌ湖」の最端部の村だ。
ラスエルマはアラビア語で水の頭(水の縁)を意味し、タマシェク語でも、やはり同じ意味のエガフナアマンという地名を持つ。
ラスエルマの砂丘は、やや赤みを帯びたトンブクトゥの砂丘とまったく違いとても白い。
私が訪れた1980年代前半には数年続いた旱魃の影響でもう水が来ておらず、多くの人が去り、砂漠の中の寂れた遊牧民のキャンプ地でしかなかったが、妻が生まれ幼少期を過ごした1960年代には、この地域の中心地で、遊牧民の小学校もあり、湖の水で穀類も栽培されている緑の豊かな土地だったそうだ。

公園を歩き、貯水池とその周りの緑の木々とを見ていたら妻は在りし日のラスエルマの風景を思い出し、とても切なくなったと言う。
今またマリ北部に平和に暗雲が立ちこめている。
いつになったら妻はこの地に安心して里帰りできるだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?