「真帆片帆 渡る風は心あいの風」*言の葉Break9/19*
いろいろあらーな
夏の終わりの蝉
川崎展宏
書きはじめに、
今一番好きな俳句をご紹介してみました。
読売新聞の朝刊、
長谷川櫂さんがご担当のコラム、
「四季」2024年8月31日から、
解説によると、
作者が82歳の時の俳句であり、
この俳句を詠み、数ヶ月ののち、
お亡くなりなったとありました。
「いろいろあらーな」、
ここには、作者の患う病気や、
訪れるであろう死についての、
受け止め方を、感じることができるのですが、
わたくしは、この俳句を夏の間、
大切に、何度も読み返してまいりました。
短い命を生ききる蝉、
人も同じく限りある命、
「いろいろあらーな」と、
心で呟くと、不思議と心の重さが、
軽くなるようで、
いろいろあって、あたりまえかなぁと、
納得のいくような、
この感覚こそが、
受け入れるということなのかもしれません。
けれど、そんなに簡単にはいきません、
それも、そんなものでしょう、
納得したり、突っぱねてみたり、
怒ってみたり、悲しくなったり、
可笑しくなったり、
気がつけば涙があふれたり、
乾いていたり、
ひとりになりたい時もあれば、
ふたりがいいときもある。
街の中に溶け込みたい時もあれば、
静かな森の木陰で休みたいときもある。
時の流れを追いかけて、
急ぎすぎる時もあれば、
時についてゆけず、
立ち止まるときもある。
移りゆく季節を愛おしく、
迎えることのできる時もあれば、
去りゆく季節を、
追いかけたくなるときもあるでしょう。
そんな日々をかさねて生きることを、
人生というのだと思います。
何者かに成ることを目標にしたり、
なにかを成し終えなくては、
人生が成り立たないと感じるのは、
すこし違うのかもしれません、
それは、わたくしの思いですが、
「いろいろあらーな」と、
軽やかに、流れる時に身を委ね、
人生に起こる、小さな出来事を、
素直に受け入れ楽しむこと、
また、哀しむこと、
悲しい時は泣いて、
楽しい時は笑って、
微笑みがこぼれたり、
たまには恨んでみたり、
ちょっとキケンですが、
致し方ないことかと…。
そうしているうちに、
忘れてしまって、
思い出せなくなったり、
忘れられなくなったり、
いろいろあって、大丈夫。
きっときっと、大丈夫。
真帆片帆、まほかたほとは、
真帆が、順風の時に帆を一杯に張り、
追い風で走ること、
片帆は、横風の時、帆を一方に片寄らせて走ることをいいます。
真帆片帆とは、
いろいろな風を受けながらも、
帆を巧みに操りながら、
帆走するという意味なのです。
逆風、いじわるな風、
厳しすぎる風、キケンな風、
追い風、優しい風、寄り添う風
人生に吹く、いろいろな風を、
真帆片帆と心の帆を操りながら、
渡ってゆけたなら、
風が止むときも、
慌てず心合いの風を待ち、
感謝しながら、
心合いとは、心の通じ合うこと、
ここに風がつくと、
自分の気持ちを察して吹く風という、
意味になるようですが、
今も実のところは、
吹いているのかもしれません…。
感じるのは、自分しだい。
ここまで書いて、思うことは、
やはり、生きることは、
辛いことが多く、哀しみも深い、
納得のゆかないことの多さに、
立ちゆかなくなる…。
すべての風が、ピタリと止んで、
息苦しくなる…。
それでも容赦なく、
時は流れ、季節は移ろい、
太陽も、月も、星も、
なにもなかったような顔をして、
大地を照らしている。
それこそが自然なのかもしれない。
「優しさ」、この言の葉は、
人の世にだけ、存在し共有される、
自然界には存在しない、
そのようなモノではないかと思う。
生きることを求めるがゆえに、
間違いや、暴力、哀しみが生まれる。
ただあるだけで、
この星は哀しいのかもしれないが、
ただあるだけで、
美しくもあり、あたたかくもある、
ただあるだけで…。
優しさは、優しさと呼ばれる前から、
いつもそばにあるものなのではないか、
それは、草木や鳥や虫、魚に、菌類に至るまで、優しさという言の葉は知らないけれど、
ただあるモノとして、
受け入れているからこそ、
生きてゆけるのかもしれない。
さてと、わたくしも、
受け入れてみようと思います。
いろいろと吹く風を、
愉しみながら、待ちながら、
真帆片帆でまいるといたしましょう。
彼岸の入を迎えました。
暑さ寒さも…のはずが、
残暑の厳しさと、湿度の高さに、
気持ちが滅入りがちの、
今日この頃です…。
蝉の声も聞こえなくなり、
暦は秋への方へと急ぐものの、
なかなか、
秋の風が吹いてはくれません…。
このような風のない時は、
帆を休ませまて、波に揺られる如く、
緩やかに、自分に優しく…。
「いろいろあらーな」。
この言の葉をお守りに…。
週末の雨を境に、
暑さも落ち着くようで、
もうしばらく、残暑にご自愛を。
感謝の心をこめて…☘ 深謝
追伸
皆様の記事に、
励まして頂いたり、
お勉強させて頂いたり、
おそばにいなくても、
記事を読み始めると、
おそばにいるようで、
いつも優しさを感じております。
ありがとうございます
わたくしも、そんな優しい記事を、
書いてゆけたら幸せです🐝))
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参考資料
ふうちゃん様 イラストより
いつもありがとうございます☘
山下景子先生著
「美人のいろは」より
読売新聞の朝刊
コラム「四季」より