[Footwork&Network vol.27 ]図書館の空間作り
まちライブラリーとの出会い
7月7日、「まちライブラリー」という図書館に足を運んだ。きっかけはゼミのプレゼンだ。長岡ゼミに入って半年間様々な越境活動を行ってきたが、なかなか掘り下げていきたいテーマを見つけられていなかった。これをきっかけにどこか新しい場所を見つけたい!と探していた時に出会ったのが「まちライブラリー」だ。私は小学生の頃本が大好きで、毎週図書館に通っては本を10冊借りて読んでいた。そんな身近な存在であった本と図書館だが、今はむしろ遠い存在である。自分から進んで本を読むことがなくなり、図書館にはもう何年も行っていない。まちライブラリーを見つけた時、そんな幼少期本好きだった私を思い出して行ってみることにしたのだ。
まちライブラリーとは
そもそも「まちライブラリー」とは何なのか。「本」を通して「人」と出会うまちの図書館というテーマで、従来の図書館とは違って本をみんなで持ち寄り、みんなで育てて行く空間となっている。持ち寄って集まった本には持ち主がメッセージを書き、それを読んだ人が感想を書いていくというような、本を介して人々が出会い、交流できるコミュニティ型図書館だ。図書館という名前だが、カフェや病院、お寺、美容院、個人宅など様々な街の中に存在している。私が今回訪れたのは西東京市にある「まちライブラリー@MUFG PARK」だ。武蔵野のMUFG PARKという自然豊かな広場には、まちライブラリーの他にグラウンド、テニスコート、BBQ施設などがあり地域の人達の憩いの場となっている。38度という猛暑日だったが、施設内には多くの人がいた。勉強する学生、ヨギボーでくつろぐ親子、テラスで気持ちよくうたた寝をしている人、広場で走り回る小学生、飲み物を片手にお喋りをしている人達など様々な人が自由にこの図書館を利用していた。図書館というと、静かにしなければならないという固定概念があったが、ここはそんな固定概念を覆すような空間だった。その日は「心が喜ぶ3色パステルセラピー」というワークイベントもやっており、一人一人が思い思いの時間を過ごしている、そんな図書館だと感じた。
感想カード
約1万5千冊もの本が所蔵されている本棚をゆっくり見たあと、私は「村上T」という村上春樹さんの本を手に取った。Tシャツが好きな彼が、集まってしまったTシャツの写真と伴にそれに関連深いエピソードを加えながら話している本である。もちろんこの本にも「感想カード」がある。冒頭で話したような、感想を書き繋いでいくカードである。「村上春樹さんのファンです。こんなTシャツがあったら絶対に手に入れたい。」や「自分もTシャツ好きです。いつまでもTシャツが似合うカッコいい男性になることが目標です。」などと見知らぬ人同士、時間のギャップもあるのにも関わらずコミュニケーションを取っていた。沢山ある本の中から、同じ本に出会うこと自体そもそもなかなか少ない。なのにも関わらずそんな素敵な出会いをしたからこそ、そんな人がどんな感想を持ってこの本を読んだのかが気になるのだ。私もお気に入りのTシャツについて感想を残してきた。私の次に読んだ人がどんなメッセージを残しているのかを見に、近いうちに足を運ぼうと思っている。
タイムカプセル
それだけでなく私が特に惹かれたまちライブラリーの魅力的な点をもうひとつ紹介したい。それは「タイムカプセル」だ。日々の出来事や思い出を本型のタイムカプセルに詰めてライブラリーの本棚にディスプレイするというものである。最短1年から最長10年までディスプレイすることができる。人々がどのような利用をしているのかに興味を持って施設の方に話を聞いてみた。「1年後仲良くふたりで取りに来れることを願っています。また来ようね。」というカップルや、「娘が生まれてすぐにこのMUFG PARKが出来たので、この場所とともに成長してくれることを願って」と娘の1歳記念のために利用している親御さんもいるそうだ。タイムカプセルという時間を経て思いを伝えるロマンティックなコミュニケーション方法が私の心に響いた。
新しい図書館のあり方
先程も話したように、まちライブラリーに出会って「図書館=静かにする場所」という固定概念が覆された。図書館は市民の憩いの場なはずなのにどんどんハードルが高くなっているような印象である。特に私のような若者は足を運ぶ機会が減っているだろう。けれども幼い頃から身近にあって親しみのある図書館が無くなってしまうのはなんだか心寂しい。子供から大人まで前世代が集まる図書館を居場所作りの場にするなんてなかなか思いつかないアイデアで新鮮味があった。一人一人が好きなように過ごす場だが、コミュニケーションの場にもなる。1人でふらっと訪れてもなんだか寂しくない。そんなまちライブラリーに多くの人が訪れているのを実際に見て、誰しもが気軽に訪れることの出来る空間作りはこれからの社会にとって必要なものとなっていくのであろう。