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~由井薗健先生と横浜を巡る~教材研究ミニ旅行と授業作りライブ

こんなにはやく、研修の1日がおわるということが、あるのでしょうか…。
午前10時から始まり、懇親会の3次会が終わった深夜0時。
宿泊場所に向かって歩いている私の中に、充実した気持ちと、あっという間に楽しい時間が終わってしまった喪失感が、ふつふつと起き上がってきたのでした。
42歳の私が、子どものようにわくわくとした気持ちで学ぶ楽しさを、これでもか!というくらい、味わい尽くしたのでした。

3人一組でチームとなり、授業について話し合います

1.教材を見て授業を作るのは、その「人」である

午前中に横浜県立博物館と、ニュースパークの見学をして、午後からその教材を生かした授業づくりを行いました。
まさに、料理人が、市場で買った食材を生かして美味しい一皿をつくるように、私たちは教材を選び、授業を作っていきました。
同じ食材を見ながらも、何を買うのかは一人一人違います。
もちろん、調理の方法も、料理も違います。
それが本当におもしろかったのです。
私のチームのウメちゃんは、サッカーの試合で「顔面ブロック」をした写真から、5年生の「情報」の授業をつくろうという提案をしました。
サッカー選手が相手のクリアボールを顔で受け、肉がゆがんで痛々しい写真です。
普通、この写真を使って授業をしようとは、なかなか思いつかない一枚だと思います。実際、私も「面白い写真だな」くらいで、授業に使おうなんて、思いつきませんでした。
「この写真が、もし自分だったら、新聞に載るのはどうおもう?」
という発問で、情報を発信する側の意図と、受け取る側のモラルを考えさせる授業でした。
授業てらすの代表星野達郎も、
「この提案、ぼくも追試します!」
と言うほど、ユニークで、考えさせられる教材となりました。
聞くと、ウメちゃんはサッカーをやっているそうです。
ウメちゃんだからこそ、生まれた授業だと思いました。
由井薗先生からも、
「授業を生み出すのは、その「人」です。その人らしい見方が発揮されるのです」
という一言がありました。
まさに、ウメちゃんだからこそ生まれた授業なのだと感じました。
同じ「材」を見ても、料理に使うかどうかだけでなく、調理する方法もちがうわけです。
授業って、本当に面白いものだと感じました。

2.資料を見ながら、語り合う価値

ニュースパークにて

見学場所では、由井薗先生と教材を見ながら、語り合うことができました。
「見て、この資料」
由井薗先生が、私たちを呼びます。
行ってみると、頭が陥没したおじいさんの写真。
おじいさんは、何かを言いたそうな表情…。でもどこか、納得したようにも見えます。
「沖縄集団自決の生存者~父親に棒で殴られた傷跡が生々しく残る~」
というタイトル。
「おやじに恨みはないよ。そういう時代だったから」
というコメントも添えられていました。
由井薗先生は、
「この資料がもっている力、そしてこのコメント…。なんて言えばいいのかな。沖縄集団自決の事実だよね。」
と言いました。私たちも、しばらくその写真の前から動けなくなりました。
父親が、「米兵に連れていかれると、辱めをうけるぞ」という言葉を信じ、つらい思いを子どもにさせたくないという「守る」意識から、「殺そう」と「愛する子」を棒で殴りつける…。
そして、その子は生きていて、父親を恨んでいないと言う…。
写真一枚ではあるものの、圧倒的な「語り」がありました。
その資料を見ながら、由井薗先生と一緒に語り合い、社会科の授業とは何かを考えることができました。
水俣病のトヨコちゃん、東日本大震災の中国人実習生…「人のいる風景」を大切に授業をしてきた由井薗先生の教材を見る視点を感じ、これまでの授業が生まれた背景を感じることができました。
授業を生み出すのは教師の人間性なのだと、改めて感じました。

3.「同じ体験」の「共有」
朝から、参加者みんなで同じ場所、同じ資料を見てきました。
つまり、同じ体験がそろっていたわけです。
理科の授業と同じように、授業作りの条件は同じです。
だからこそ、一人一人の授業者が、どのように資料を見て、どんな授業をするか、ということに、人間性が際立って、非常におもしろかったのです。

企画展のおかげで、私たちは資料を見る目を養うことができました

授業づくりセミナーだと、それぞれが教材を持ち寄って模擬授業を見せる、という形が一般的だと思います。
でも、今回は、みんなが同じ資料を見ているのです。
それはまさに、テレビ番組「料理の鉄人」のようでした。
同じ食材を使って、それぞれが違う料理を作るわけです。
「そんな素材を使うか!!」
「こんな調理方法だと、その素材がぐっと生きるわけか!」
という驚きでいっぱいなわけです。
私たちの持っている授業力というものが、いかんなく発揮される舞台。
わくわくしないはずがありません。
私たち教師の授業力には、料理人や彼らが運営するレストランのように星がつくことはありません。
でも、教師の実力は、常に子供や保護者、そして同僚からは見られているわけです。
だからこそ、こうした同じ食材を使った料理披露のような場所には、価値があると思いました。


4.まとめ

こんなに楽しい学びの機会があり、私はHAPPYでした。これも授業てらす「社会科部屋」の素敵な仲間たちと、語り合う中で企画が誕生したからです。そして、由井薗健先生という社会科が大好きで、仲間を愛し、きさくな先生がいたからこそ、この企画が成功したのだと思います。そして、この企画に参加してくださった方々がいて、楽しい時間が生まれました。懇親会の参加率は、まさかの100%。それだけ、充実したセミナーだということが、物語っていると思います。

心の底から、みんなに感謝したいと思います。

            授業てらす 社会科部屋 三浦健太朗

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