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『Lies of P』プレイ感想

けっこう面白かった。
いわゆる「ソウルライク」を楽しく遊んでいる人には、新しいソウルライクタイトルの一つとしておすすめしていいと思う。

プレイ環境:PS5
ソフトバージョン:1.004
発売当初からいくつか大きなアップデートを経ているようなので、旧バージョンを遊んだ方とは異なる体験をしている可能性あり。
3周プレイし、すべてのエンディングとサブシナリオを視聴した。4周目以降に解放される新要素はない模様。

以下、ゲームの各要素ごとに思ったことをコメントする。

内容はネタバレを多分に含んでいます。
閲覧にはご注意ください。


概要

冒頭で述べた通り、本作は「ソウルライク」と呼ばれるアクションRPGである。
モチーフは『ピノキオ』。架空の街「クラット」特産である不思議エナジー鉱物「エルゴ」を用いて、ゼペット爺さんは自律行動する人形を開発することに成功した。大量生産された人形たちは街の労働力・観光資源として大いに活躍するが、ある時を境に次々と暴走を始める。人間の抵抗もむなしく、瞬く間に荒廃していくクラット。その中央駅で、人の姿をした一体の人形が目を覚ます……
という導入で始まる本作。従来のソウルシリーズと同様に、レベル上げやショップ利用ができる拠点があり、そこから様々なエリアを探索しに向かい、ボスを倒してシナリオを進行させる。道中で出会ったキャラクターが拠点に来てくれる要素も健在。

武装は攻撃の主軸となる右手の「武器」と、戦闘をアシストする左手の「リージョンアーム」の二つ。

右手武器は「ブレード」と「柄」の2パーツに分かれており、攻撃力や属性はブレードが、能力補正は柄がそれぞれ保有していて、ブレードと柄を組み換えることで好きな武器を作ることができる。
オリジナリティは感じられたが、目的に応じた最適な組み合わせは自ずと決まってしまうので、自分のステ振りに合った武器を2つ3つ作って終わり、という流れが多そうである。分割ができないボス武器にも強いものがあるので、筆者は初期武器→中盤のボス武器→終盤のボス武器、と一切組み換えをせず一周目をクリアしてしまった。

リージョンアームは固有の能力を持つ仕込み腕で、遠くの敵を引っ張る、近距離への放電、防御特化の盾など、用途は様々。『SEKIRO』の忍義手が類似品。

こうやって見ると、
『DEVIL MAY CRY 5』ネロの「デビルブレイカー」にも似ている

一番最初にタダでもらえる「パペットストリング」を最大強化したものがあまりに強すぎて、結局それ一本で3周してしまった。雑魚とボスでは違う戦い方を要求されるのがこのゲームなのだが、パペストは敵にワイヤーを撃ち込んだ後「軽い敵は引き寄せる」「重い敵には飛び掛かって大ダメージ攻撃」という双方に適したアクションが用意されているので、本当に全局面でベター以上の対応ができる。

ソウルシリーズで使用される左手武器としての盾は存在しない。ガードは武器で行うスタイルで、元ダメージの何割かは貫通してしまう。この貫通ダメージは一定時間内に反撃を当てることで回復できる。『Bloodborne』のリゲインシステムと似ている。
敵の攻撃にぴったり合わせて出す「ジャストガード」が成功すれば、貫通ダメージは発生しない。このゲームのアクションはジャストガードに非常に大きな重きを置いているので、詳しくは後述する。

難易度はソウルライクらしくそこそこ高い。
ボス戦が難しいのは言うに及ばずだが、中ボスクラスでも最初は相当手こずる。雑魚でも複数を一度に相手したら一瞬で死ねる。ちゃんとソウルライクしている。
時間と命をたっぷり使って徐々に攻略を安定させていく、という楽しみは十分感じられた。

ラスボスまでクリアすると、プレイ時間はおよそ25~35時間ほど。
ボリューム感はかなりあるが、寄り道やサブダンジョンといった要素がほとんどなく、一本道の攻略になってしまうのはやや残念。
しかしダンジョンの構造やそれぞれの繋がり方についてはちゃんと工夫がなされており、ショートカットも多めなので快適に遊ぶことができる。

ジャストガード周りのシステム

先述した通り、本作はうまくジャスガすることを前提とした作りである。

まず、敵キャラにのみ「フューリーアタック」なる技が存在し、体が赤く光る攻撃はジャスガでしか防げない、というシステムになっている。『SEKIRO』の”危”攻撃が近いシステムだろうか。
ジャスガに成功すると相手にスタン値が溜まり、攻撃を当ててジャスガして……を繰り返すことでスタンを取って致命攻撃を入れる。強敵と戦う際はこれが基本のルーティーンとなる。
他にも、スキルツリーで獲得できる新能力には「ジャスガで必殺技ゲージが溜まる」「武器耐久値が回復する」「貫通ダメージが回復する」など、ジャスガをトリガーとするものが多い。

過去に『SEKIRO』をやりこんでいたり、他作品でもパリィ中心の立ち回りをしていた人であれば、このデザインにはそれほど苦労せずになじむことができると思う。
ちなみに筆者は最初大いに苦戦した。過去のソウルライクでは『DARK SOULS』シリーズや『ELDEN RING』通して、大盾+巨大武器のゴリ押しスタイルが多かったためだ。『SEKIRO』『Bloodborne』はどちらもクリアしたが、なんでクリアできたのかと聞かれると、”頑張ったから”以上にコメントできることがない。特に『SEKIRO』は本作にかけた労力と同じくらい”頑張った”はずである。許すまじ獅子猿。

お前だけで何時間かかったと思ってるんだ

ボス戦は何度かやっていればそのうちジャスガできるようになってくる。けっこう多くの敵が露骨にディレイ(攻撃動作を遅らせてくること)してくるものの、まあ死にながら敵の攻撃パターンを覚えるのはフロムゲーの基本なので、初見で見切りづらいからといって文句を言うのはやや筋違いな感がある。
慣れれば予備動作がはっきり見えるようになっているので、「同じモーションから違う種類の攻撃が飛んでくる」というようなメチャクチャはない。
つまり根気よくやればちゃんと対応できるようになっている。「高難度」と「理不尽」をあまりごっちゃにしていないので、このあたりはちゃんとソウルライクしているな、と感じた。

ただ、フューリーアタックについては賛否両論あるところだと思う。
この攻撃は先ほども述べた通り「ジャスガでしか防げない」のだが、この「防げない」には実は「回避不可」の意味も含まれているのである。
フロムゲープレイヤーなら誰もがアクションの前提としている「回避モーション中の無敵時間」が、このフューリーアタック中には機能しないのだ。

これはやってみるとけっこうストレスだった。
プレイヤーの皆さんなら経験があることと思うが、例えば自分の攻撃中に相手が攻撃モーションを始めてしまって、自分の攻撃終わりまで待ってガードでは間に合わない、早め回避からガードしようにも回避終わりを狩られそう、これはジャストで回避成功させるしか……!というシーン。フューリーアタックだと詰みである。
フューリーがすべて単調な攻撃なら心配は少ないかもしれないが、残念なことに大半の敵がフューリーもちゃんとディレイしてくる。チュートリアルで雑魚敵が初めてフューリーを仕掛けてきたとき、筆者はあまりにタイミングが読めなさすぎて、フューリーの時だけ大きく離れてまた戻って殴る、というのを繰り返して突破した記憶がある。
そして、フューリーのジャスガに成功しても特にボーナスはない。普通の攻撃をジャスガしたのと状況は一緒である。

まあそのうち慣れて守れるようにはなるのだが、これは「単にプレイヤーが不利益を負うだけのシステム」という感じがする。マイナスからゼロに向かうだけ、ありていに言えば「ダルい」。
ちなみに、周回を進めると「フューリーアタックを回避できるようになる」「普通にガードできるようになる」というボーナスが得られる。やはりマイナスからゼロへ向かっている。

ストーリー・演出

ソウルシリーズはどれも「多くは語らない」ことを美徳にしているようで、ストーリーは大枠でしか説明されないことが多いし、人物たちは自分のことについてしか話さない。キャラや世界観の詳細はアイテムのフレーバーテキストに片鱗があるのでそれを読み解こう、といった仕様のものが大半である。
この点に関して、本作は真逆の路線を行っている。登場キャラは非常に多くを説明してくれ、フレーバーテキストは特に意味がないか意図がわかりにくい、といった感じ。

説明してくれるので流れについて行きやすいのだが、そのせいでストーリーへの関わり方がものすごく受け身になってしまう。
お前のすべきことはあれだ、お前の使命はこれだ、みんなのためにああしてくれこうしてくれ、と言われ続けていると、何となく自分が置いて行かれているように感じてしまうのは筆者だけだろうか。自分の選択で進行が変わるポイントもないので、本当に操り人形として働いている気分である。

そしてそこまで分かりやすく話をもっていくわりに、あまり盛り上げてくれない。
特にラストのゼペットのくだりはかなり残念で、あのジジイどうも臭いぞという情報はちょこちょこ出されているから驚きはないし、映像を使って感情移入させてくるなどもない。さらっとセリフで「計画通り」という話を聞くばかりでは、「ああ、そうなの」としか反応できないのだ。

多様なキャラクターたちが絡むサブシナリオも、厚みのなさが目立つ。
アリドーロとユージェニーのくだりはまだいいものの、比較的中心にいるはずのアカギツネ・クロネコなんかはただの人間不信エピソードだったし、中には「仲間を探してくれ」と言うだけのキャラまでいる。なんで出てきたんだ。

ベル、何しに来たの

また本作では、ゲーム中にたびたび与えられる選択肢に対して、事実ではなく”嘘”の選択肢を回答すると、「人間性」というものが上昇しエンディングに影響するようになっている。
が、選択肢には「こんなうわべを取り繕った嘘つくより、ちゃんと真実を伝えた方がいいのでは?」「どちらにせよ一択じゃね?」と感じるようなものも散見され、これで人間性が上がったと評価されるのは納得いかないな、と思うシーンがままあった。
本作は自我が芽生えた人形と人間との境目を問う脚本だが、このように「嘘は人間の証」と決められてしまっているせいで選択の主体性が失われているので、人形でなくなるエンディングをたどったとしても「俺は人形をやめるぞ!」感はさほどない。もとから人形じゃなかったんじゃないの?

正直なところ、ストーリーや演出に期待して本作をプレイするのはおすすめできない。
しかし、背景にそれほど注目しなくても、アクションしていて楽しいのがソウルライクの魅力のひとつである。俺より強いやつに会いに行きたいだけの人なら、それほど大きな問題ではないかもしれない。

音楽は非常に良かった。
各ボス戦の曲や最終ダンジョンのBGMなども良かったのだが、他にも評価できる音楽がこのゲーム内には存在している。

本作は道中で様々なレコードを手に入れることができ、拠点の再生機でそれらを聴けるようになっている。
曲を最後まで再生すると人間性が上昇する。「嘘をつく」以外にも、人の感性に触れることで人間に近づくことができる、というフレーバーのようである。
レコードは11枚+バリエーション5枚があり、どれも本当に出来がいい。筆者は音楽に詳しくないので、具体的に何が素晴らしいなど取り上げることができないのが惜しいところである。
特に最序盤で手に入る『Feel』は名曲。YouTubeに歌手本人の動画が上がっていたので、ぜひ聴いてみてほしい。同歌手の『Quixotic』もおすすめ。

その他

主人公の強化方法はレベルを上げる以外に、「クォーツ」を消費して行う「P機関」というスキルツリータイプの能力拡張もある。
回復アイテムの所持数増加や必殺技ゲージの増設など、積極的に獲得したい能力が多数あり、クォーツを集めることが短いスパンでの目標となりやすい。
1周目の時点ではフェーズ1~5までを利用することができ、2周目に入るとフェーズ6、3周目ではフェーズ7が解放される。上位のフェーズではより強力なボーナスを獲得できるし、エンディングの種類も3つなので、3周目まではゲームを遊んでみる価値があるだろう。

3周目で大きな追加要素があるのは珍しい

ボス戦の際に「助霊」を呼ぶことができ、これを召喚すると戦闘を手助けしてもらえる。
同様のシステムはソウルシリーズにもあったが、本作の助霊は呼ぶとボス戦の難易度が飛躍的に下がるので、2周目以降などサクサクプレイしたい人はぜひ利用をおすすめする。
これは助霊の性能が高いというよりも、おそらくボスのターゲッティング仕様の問題である。一度助霊を狙い始めるとしばらく連続して助霊ばかり攻撃するので、こちらがフリーで動ける時間がとても長く取れるのだ。

ソウルシリーズで広く親しまれたオンライン要素は、本作では用意されていない。
初めて作ったソウルライクで、いきなりオンラインサーバーまで準備するのはハードルが高かったのかもしれない。エンディングでは次回作の存在を強く匂わせていたので、本作がウケれば次回作での実装がありうるかも。

舞台となる街クラットはパリを意識していそうで、BGMやレコードにもシャンソンがある。キャラクターボイスは英語だが、バチバチのイタリアなまりでしゃべるベニーニや、アジア系のユージェニーなど、国際色豊かな作品だ。
ちなみに本作の製作会社は韓国で、エンディングの曲もハングル。ほんとに豊か。

ユージェニーと言えば、ゲーム終盤で拠点のホテルが襲撃された後、彼女の胸元がちょっとはだける。
陰鬱で暴力的な世界で戦い続けるこういうゲームにおいて、きれいなおねいさんの肌を見ることができる機会は極めて少ない。ちょっと癒される。
なお、ゲームメニューのギャラリーでキャラクターの3Dモデルを鑑賞することができるが、こちらのユージェニーはいつものお堅い服装。差分もなし。残念。

地味め、いい

まとめ

シナリオ部分については不満があるものの、「既存のソウル系作品を相当数プレイしたうえで、まだ同様のアクションを体験したい」という欲は十分に満たしてくれる。
けっこうはっきりとマイナスの話を書いたので、ネガキャンだと思われるかもしれないが、その裏でなんだかんだ3周遊んでいる、という事実を汲んでいただきたい。アクションゲームとしてはちゃんと面白いのだ。特に人形の王戦とラクサシア戦、名もなき人形戦はかなり楽しめた。

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