会社をやめ、TBHを聴いている話

会社をやめた

特に言うことはない。楽しんで働けた。辞めたかったので辞めた。

THA BLUE HERB

北海道出身のヒップホップグループ。
Wikipediaによれば、1997年に結成とあるのでかなりのキャリアである。

ブルーハーブといえばセルフボーストとストイックな姿勢だが、それにも時代が下るとともに微妙に変化がある。

個人的に、最近のブルーハーブのメッセージに非常に響くものがあったので、その話をしようと思う

矛盾する二つの姿勢

昔には戻れん 戻ったところで別に何もねえ 前向きに跳べ
("MAINLINE")
まだまだだってことなら知ってる 顔で笑って 闘志と狂気を内に秘める
新しい季節 過去の栄光に逃げず この先も変化を恐れず楽しみ生きてく
("RIGHT ON")

両者に共通するのは「過去に戻っても仕方がない」ということだが、その根拠となる姿勢が微妙に違う。そしてその矛盾こそが、「ストイックなセルフボースト」のスタンスそのものであると感じる。

その矛盾とは、
「過去の成果は大したことがない、満足しない」
という態度と、
「過去の成果は素晴らしいが、それに逃げてはいけない」
という態度である。

事実として、過去の自らの成果をどう見るかは純粋に主観の問題だ。

この二つの態度を行き来する、その揺れてしまう感じが最近とみに「わかる」ようになってきた。

私自身の成果などあってないようなものだが、それでも過去作がそれなりに高い評価を受けていて、それに逃げてしまいたい反面、でもいつまでも「高い評価を受けている」なんて思ってもいたくない、という気持ちになる。

「スタミナ」というキーワード

もちろんゴールはまだまだ先だ
キーワードはスタミナ 上手く使いな
("MAINLINE")

ブルーハーブは「スタミナ」というキーワードを非常に大事にしている。

ここまで 生き残ってこれたのは何故か
YES I’M LUCKY YES I’M LUCKY
単に周りが勝手に落ちてっただけだ やっていることは変わってない
NO.1は誰だ? 今でも彼等 何度も祭り上げられたが浮かれない
常に最悪の事態に備えた 音楽が売れない時代 なんてのは言い訳さ
("LOST IN MUSIC BUSINESS")

突然だが日本のジャグリング界の話をすると、他ならぬ私が主催の一人となって開催したTJS2015(シアタージャグリングストリーム、舞台ジャグリングのフェスティバル)をピークとして、舞台でまとまったジャグリングをやるという流れは下火になった感がある。

私自身も同様に活動をフェードアウトしていたが、そのことについてピントクルの中西氏から批判されたことがある。実際には主旨はいまいちつかめなかったが、結局そういう話だと理解している。

普通でない売れ方

時を同じくして、MOFというダンス団体の公演に照明として関わった時に感じたことがある。MOFはなんというか、真の意味でインディペンデントでありつつ、あるいはだからこそ、お客さんをしっかり楽しませるということに成功していた(当然だが、ただのエンタメに留まらず批評性も兼ね備えていた)。

主宰の諸岡氏が打ち上げで言っていたことで印象的だったのは、「普通の売れ方をしたくない」という発言だった。ここでいう普通の売れ方とは、コンペで入賞して、補助金をとって……というイメージ。

では普通ではない売れ方とは何か、という話は具体的にはわからなかったが、現状のMOFのアンケートをみると、「MOFのファンを増やす」というものではないかと思われた。

ブルーハーブの「スタミナ」の概念、そしてTJSについての批判、MOFの売れ方についての考え方、それぞれが私の中ですべて繋がり、私に新しいスタンスを示してくれた。それは、

目の前のお客さんを楽しませ続ける

ということである。

ここにはいくつかの考え方が混ざっている。

まず、「日本のジャグリング界」について何か責任を負うのをやめる。

別に最初から何も負ってはいなかったが、負っている意識を捨てる。

日本のHIP HOPのため 勝手なことをほざいてた奴等も 順にいなくなって
3000枚売れれば ヒットアルバムだなんて しょっぱいシーンに 成り下がっちまったね 
今は15年前とは違い 俺等をいらつかせ 奮い立たせたベテランはいない
 IT WAS A GOOD DAY あの頃は俺等以外 誰一人聴く価値ないとも 思ってもいたし
見上げていたプラミッド 底辺がふりだし がしかし 実際 俺等も40代になり
去っていったMC達へのシンパシー これが長距離走者の孤独の後味かい
("UNFORGIVEN'')

そして、自分たちのやるべきことをやり続ける。

北の本物は 何よりも先にやるべきことをやるんだよ
("孤憤")

やるべきこととは、キッチリお客の期待に応え、楽しませるということである。

そして、戦略的に、ファンを増やしていく。

信頼している人のリコメンドを通して、満足してもらう。

そしてそれを続ける。

キーワードはスタミナ。

CwCは次で第7回めの公演になります

思えば、これもスタミナだ。

これからも続けていこうと思う。

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