JUDI 『名水が育むまちづくり』第3回
公募型プロジェクト 北陸+東北ブロックの第3回(今期最後)は、名水が育まれているエリアを巡検しました。場所は富山県黒部市とその近隣。
1.黒部市生地
はじめに訪れたのは黒部市生地。黒部漁港に隣接する生地地区には20箇所以上の「清水(しょうず)」と呼ばれる湧水洗い場がある。湧水箇所は600以上あると言われ、それぞれ微妙に味が異なる。各清水洗い場は周辺の住民によって管理されている。近隣の町から水を汲みに来る人も多く、それぞれ自分の好みの清水を選んでいるという。「この水で煎れるお茶や珈琲が美味しいのよ」と話していた。
生地地区には清水を仕込み水にしている皇國晴(みくにばれ)酒造がある。ここには深さが違う清水が有り、浅い方は軟水、深い方は硬水。黒部川の伏流水が地層と絶妙に絡み合って味の違いを生み出している。ちなみに仕込み水は軟水を使用しているとのこと。
生地の街のあちこちから清水のせせらぎ音が聞こえてくる。清水はまちのコミュニティーを育んでいることが伝わってきた。
2.入善町杉沢の沢スギ
次に訪れたのが入善町に残る杉沢の沢スギ。沢スギは黒部川扇状地末端の豊富な湧水地に立地するスギ木立で、砂礫層で地下水位が高いという悪条件下で成長してきた杉林は、住民とっても生活の一部として守り育ててきた歴史がある。伏条更新と呼ばれる独自の成長過程の跡を見ることができる。名水はその地域の風土に合った自然現象をも育み、人はその恩恵にあやかってきたこが分かる。
沢スギについては、「とやまの文化遺産魅力発信事業実行委員会」Webページに詳しい説明がある。
3.黒部市宇奈月温泉トロッコ電車 黒部峡谷
2日目は宇奈月温泉からトロッコ電車に乗って欅平まで黒部川を遡ってみた。
2000~3000m級の峰々から雪解け水が流れ込み、今が一年で最も水量が多くなる季節である。この水が扇状地を流れ下り、伏流水となって生活を潤している。自然の中に人は活かされていることを痛感する。
4.魚津市円筒分水槽
最後に訪れたのは魚津市にある「東山円筒分水槽」と「貝田新円筒分水槽」。扇状地の田畑を潤す農業用水を灌漑区域の大きさに応じて分水する装置。水騒動に苦しめられてきた人びとの知恵が生み出した壮大な装置だが、その水量の豊富さと迫力に圧倒される。
豊富な水資源と黒部川扇状地に育まれた人びとの暮らしを目の当たりにして、名水の恩恵をあらためて強く感じることができた。
次は、東北エリアの名水を探ってみたい。
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