リネージュのZELとDAIの語源のお話

一度調べたにも関わらず忘れてしまったので、再度調べなおして残しておくことにしました。
この記事は一部推測を含んでいますのでご了承ください。
また文中の翻訳も不自然な部分がありますがご容赦ください。

TL;DR

リネージュ初期(1998年)の、リネ内のショップで販売していた未鑑定スクロールの名称の略称。ZELGO MERを略してZELDAIYEN FOOELSを略してDAI

もしくは、元の NetHack の設定から援用するなら "古代の魔術師が、面白そうだからとスクロールに刻んだ謎の文字" 


リネージュとしてのもう少し詳しいお話

リネージュ1としての話では、LineageTimesのVol.6(2002/5/10)で、ZELとDAIについて触れていたようです。
元のメルマガを探してみましたが、引用している記事しか見つけることができませんでした。
どこかにアーカイブがあれば教えてください。

実はこの『ZEL』という呼び方は、1998年の防具強化スクロールの登場時
に由来します。
リネージュが日本に来るだいぶ前、防具強化スクロールだけでなく
スクロール全般は鑑定しないと正式名称がわかりませんでした。
それは店で買っても同じで、店に陳列されている商品も鑑定前の名称で
表示されていたんです。
で、その当時の防具強化スクロールの名称は、鑑定前が
『scroll labeled ZELGO MER』、鑑定後が『scroll of enchant armor』
というものだったんですけど、当時のプレイヤーには、鑑定後の名称より
も鑑定前の名称の方が通りよく、必然的に『ZELGO MER』の略『ZEL』が
使われるようになったというわけです。
ちなみに、武器強化スクロールも『scroll labeled DAIYEN FOOELS』と
いう鑑定前の名称から現在も『DAI』と略されてますね。

引用元: http://zakodann.nobody.jp/vega/2005-10/02/02.html

なので、リネージュのお話としては、以下のようにまとめられるかと思います。

・1998年のリネ1では、未鑑定の "scroll labeled ZELGO MER" を鑑定すると "scroll of enchant armor" になり、このZELGOを略してZELと呼んだ
・同様に "scroll labeled DAIYEN FOOELS" を鑑定すると "scroll of enchant  weapon" となり、DAIYENを略してDAIと呼んだ

ではこの ZELGO MER や DAIYEN FOOELS とは一体なんなのでしょうか。

これは1980年代に作られた NetHack というゲームに遡るようです。

NetHackの ZELGO MER, DAIYEN FOOELS

NetHack というのは、80年代に作られた、テキスト文字だけで作られたRPGゲームで、元祖のRogueの流れを組む Rogue Like RPG / Game のことだそうです。
そして今でも時々アップデートされているようです。

そういえば昔、こんなゲームを少しやった記憶があります。テキストでダンジョンが表現されていて、自分自身も @ のような記号で示されていて、それを動かして、ダンジョンを攻略していくRPGです。

この NetHackの中に出てくる未鑑定スクロールのラベルに、ZELGO MER, DAIYEN FOOELS が出てきます。

おそらくこれを、リネージュ1の開発者か誰かが、リネージュの世界に持ち込んだのでしょうね(単なる推測ですが)。

Scroll Originsのページ を見てみると、以下のように記載されています。

DAIYEN FOOELS
"Dying fools". Originally scroll of enchant weapon.
("死にゆくばか者", 元々は武器強化のスクロール)
ZELGO MER
Unknown meaning. Originally scroll of enchant armor.
(意味は不明, 元々は防具強化のスクロール)

元々は〜、というのは、どうやら最初はこれらのラベルはスクロールの種類とペアで付けられていたが、シャッフルされるようになったようです。

実際にNetHackをやってみると、未鑑定時のスクロールは以下のように表示されました

o - a scroll labeled JUYED AWK YACC
(o - "JUYED AWK YACC"とラベルされたスクロール)

JUYED AWK YACC は Scroll Originsのページによると、scroll of destroy armor つまり防具破壊スクロールのことですね。
(そしてリネ1にもそんなスクロールがありましたね)

ですが、これを実際に r (read)で読んでみると、別の場所にテレポートしてしまいました。つまり実際には テレポートスクロールだったわけです。

Randomized appearanceのページ を見てもわかるように、鑑定はNetHackの中でも結構大きな部分を占めていて、見た目(Appearance)はランダムだと説明されています。

A major part of NetHack is identifying items. To make this more difficult, the appearances of scrolls, potions, rings, amulets, wands, spellbooks, and some armor are randomly shuffled at game start. This page lists the possible appearances.
( NetHackの主要部分の一つはアイテムの鑑定です。鑑定をより難しいものにしているのは、スクロールや、ポーション, 指輪, アミュレット, 杖, 魔術書と幾つかのアーマーの見た目が、ゲーム開始時点ではランダムにシャッフルされていることです。このページでは、あり得る見た目について一覧にしています)

では、このスクロールの見た目(Appearance)として付けられている DAIYEN FOOELS や ZELGO MER には、何か特別な意味はあるのでしょうか。

これは、NetHackのガイドブック を読むとその意味を少しだけ垣間見ることができます。


古代の魔術師のアナグラム

NetHackでは名称などにアナグラムが好んで用いられていたようなので、基本的にはScrollの見た目はアナグラムの一種だと言うことができます。

例えば、ELBIB YLOH は "Holy Bible" のアナグラムです。
ELBIB YLOHとラベルされたスクロールは、元々は Scroll of genocide(皆殺しのスクロール) で、最も強力なスクロールの一つで、ゲーム中のほとんどのモンスターの種族を永遠に消し去ることができる、と書かれています。(中々に皮肉ですね)

また、NetHackのガイドブックによると、スクロールについては以下のように書かれています。

7.5. Scrolls (‘?’)
Scrolls are labeled with various titles, probably chosen by ancient wizards for their amusement value (for example “READ ME,” or “THANX MAUD” backwards).
(スクロールには多くの種類のタイトルが付けられている, 恐らくこれは古代の魔術師によって、彼らの楽しみとして付けられたものだ (例えば "READ ME" や "THANX MAUD"の逆文字など) )

なので、設定上は、 "古代の魔術師が、面白そうだからとスクロールに刻んだ謎の文字"  といったところでしょうか。

個人的にはこの解釈が好きなので、リネージュにもこの解釈を援用してしまいたいです。

古代の魔術師が、(以前は未鑑定だと中身の分からなかった)武器強化や防具強化のスクロールに刻んだ文字を、現代の冒険者が、スクロール自体のこととして、ZELやDAIと呼んでいる。

そう考えると、ZELとかDAIの呼び名も中々面白いです。
細かいディテールがあると、世界観にどっぷり浸かることができますしね!

さて、ここまでで一応自分の中で区切りがついたので、調査は終わりです。

ここまで読んで頂いた方、長い文章に付き合っていただき、本当にありがとうございました!

付録: NetHackをインストールする(macOS Mojave)

調べている最中にNetHackでちょっと遊んだので、インストール方法を記載しておきます。
環境は macOS Mojave 10.14.6 です。

コンパイルにgccが必要で、gccをインストールするのに、HomeBrewを使っています。
HomeBrewはMacで開発者が良く利用するパッケージマネージャです。
このあたりの記事 を参考にインストールしてください。他にもググると沢山出てきます。

また、ソースコードをダウンロードするのに、gitコマンドを使っています。
Macであればデフォルトでインストールされていると思います。

NetHackのソースコードは以下のgithubにあります
https://github.com/NetHack/NetHack

インストール方法は以下に記載されています
https://github.com/NetHack/NetHack/blob/NetHack-3.7/sys/unix/NewInstall.unx

私の環境では、以下の手順でインストールしました。

# homebrewを使ってgccをインストール
brew install gcc

# git でNetHackをローカルにクローンする
git clone git@github.com:NetHack/NetHack.git

# クローンしたディレクトリに移動してセットアップ用のシェルを実行する
cd NetHack
sh sys/unix/setup.sh sys/unix/hints/macosx10.14

# fetch-Luaをコンパイルする
make fetch-Lua

# NetHackをコンパイルしてインストールする
make install

# 自分のユーザのホームディレクトリの nethackdir にインストールされるので移動する
cd /Users/{your_user_name}/nethackdir

# nethackを実行する
./nethack


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?