〈上越タイムス創刊30年 地域を守る〉産業編(1)人手不足、維持に懸命 産業各界・農山漁村 労働生産性は向上

 人口減少と少子・高齢化は地域の産業にも大きな影響を及ぼしている。後継者不足、人手不足が叫ばれ、最近では新型コロナウイルスの影響もある中、各業界、企業、団体では、伝統産業や美しい農山漁村を維持し、次の世代へ受け継ごうと懸命に活動している。AI(人工知能)やコンピューターが発達しているとはいえ、人の手によるところは大きい。「地域を守る」第2シリーズは産業面のデータや取り組みを紹介する。

グラフ

 5年ごとの国勢調査を基に、上越市創造行政研究所が作成した同市の産業別就業者数の1985~2015年の推移を見ると、30年間で農林水産業の減少率が最も大きく74%減(2015年4832人)、全国平均の59%減よりも高く、高齢化の状況を示している。

 一方で農林水産省公表の統計によると、農業産出額は57%減(2015年160億円)にとどまっている。農地の集約化や機械化などにより、労働生産性の向上が図られているといえる。

 建設業は15%減(2015年1万857人)、全国平均の18%減よりも低くなっている。近年は若年層の就業が少なく、人手不足が生じている。製造業も33%減(同1万7158人)と大きく減少しているが、製造品出荷額は64%伸びており(2014年5202億円)、従業員数が減る中で労働生産性の向上を裏付けている。

 卸売・小売業は7%減(2015年1万9549人)で推移しているが、卸売業だけで見ると、メーカーと小売業の直接取引やネット販売など流通構造が大きく変化し、ピーク時の1991年に比べ、47%減(2014年3460人)、年間販売額も54%減(同1903億円)と大きく落ち込んでいる。

 小売業は、事業所数で1988年、年間販売額で1997年、売り場面積で2007年をピークにいずれも減少している。

 これらに対し、サービス業は55%増(2015年3万717人)となっており、特に医療・福祉の就業者数が全国平均よりも高い伸びを見せている。

 市創造行政研究所は、生産年齢人口の減少よりも就業者数の減少が小さくとどまっているのは、定年延長や退職者の再任用などによって不足する労働力を補っていると推測する。農林水産業は減少幅が大きいが、ほ場や港湾などの基盤整備が進んでおり、一定規模での維持を期待し、景気の動向に左右される製造業は、絶えず構造転換を行うことを指摘している。サービス業は、市外からの外貨を稼ぐ外需産業としての活性化を望んでいる。つづく

※この記事は2020年4月1日付上越タイムスに掲載されたものです。文中の年齢などは当時のままです。ご了承ください。

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