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機能不全!!

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これはまずいです!!

 現在DCプランナー1級の勉強をしています。ちなみに試験日は1月26日。あまりに動き出しが遅く、今かなり追い詰められています。それも非常に まずいのですが、もっとまずいと感じることがありましたので、お伝え  したいと思います。今、資格のTACの通信講座を受けているのですが、  その講義の中で、現在の確定拠出年金の加入状況等についての話しがあり けっこう衝撃を受けたデータがあったので、それをご紹介いたします。

 「イデコ」という愛称もわりと一般的になってきているかと思いますが、確定拠出年金の加入者数はどれくらいかご存じですか?約858万人です。 確定拠出年金には、会社員の方が、勤務先の会社で加入する「企業型」と 自営業や主婦、それから会社員だけど会社でその制度のない方などが   加入する「個人型」があります。 

 「企業型」に加入している方が、約720万人で、「個人型」が約138万人 です。ちなみに「イデコ」は「個人型確定拠出年金」の英語名の頭文字を とった愛称です。国が「貯蓄から投資へ」という政策で、アメリカの制度をならって導入したのですが、じわじわと加入者数が増えてはいるものの、 まだまだと国は思っているのだと思います。

 ちなみに、この確定拠出年金に加入できる年齢は、20歳から64歳(厳密にいうと正確ではないですが、本コラムのテーマには影響ないので、ご容赦 ください)です。2019年7月時点における、日本の20歳から64歳の方の  人口が、約6,931万人ということで、人口当たりで見ると、加入率が    約12.3%。国としてもまだまだ増やしていきたいと考えていると思います。


約80万人の運用資産が糸の切れたタコに…

 ここから私が衝撃を受けたことをお伝えしたいのですが、確定拠出年金の加入者である場合に、転職や退職等でご自身の立場が変わった際に、  「移管手続き」をしなければならないことがあります(かなりの確率で  手続きは必要となります)。

 例えば「企業型→個人型」「個人型→企業型」「A社の企業型→B社の企業型」といったように、実はそれまでの運用資産の管理する場所を変える  手続きが必要となることがあります。ここでは、一番問題が発生していると思われる「企業型→個人型」を例にとってお話ししていきます。

 例えばA社に勤めていた山田さん(仮名)が、退職をしました。今後  フリーランスで働こうと思って、別の会社への転職はしていません。   つまり「会社員→自営業」という立場の変化です。この場合、A社で  「企業型確定拠出年金」に加入していた山田さんは、自分で「個人型確定 拠出年金」の方へ資産を移管する手続き(申し出)をしなければなりません(どこでどうするかは、ここでは割愛させていただきます)。

 ちなみに通常は、退職時の手続きの案内の中に、「移管手続きの案内」が入っているはずです。導入企業にはその案内をする義務があります。   ただし、動くのは山田さんご自身で動かなければいけません。このケース では会社がやってくれることはありません(別のケースだとあり得るのですが)。

 そう、この自分がやらなければいけないということが、今問題を引き起こしている大きな要因となっています。何が起こっているのか?     「移管手続き」を忘れ、手続き期限が到来し、「自動移管」されてしまっている人が、約81万人もいるということなのです。全加入者の約9.4%です。「自動移管」とはなんなのか?「自動移管」とは、簡単に言うと「必要な移管手続きがされなかったが、資産残高があるために、ひとまず国民年金基金連合会で預かっている状態」と思ってください。

 預かってくれているならば別にいいじゃない!と思う方もいらっしゃる かもしれませんが、ちなみに口座管理などで費用が掛かり、その費用は時間とともに山田さんの預り金から引かれていきます。つまり時間がたてば、 どんどん自分の資産が勝手に減っていき、最後は無くなってしまうという ことです。また、確定拠出年金制度は、運用を行い、将来(老後)の資産形成を行うことを目的としていますが、この自動移管状態においては、運用はされません。

国や会社が老後まで守ってくれることはない!!

 なぜこういったことが起こってしまっているのか?本事例の山田さんの ような方が、約81万人もいらっしゃる。かなりの人数だと思います。   私は加入者(本事例の山田さん)が、今まで自分が何をしてきていたのか つまり確定拠出年金自体がなんなのか知らないまま過ごしてきてしまった ことにあると思っています。

 私の本業はファイナンシャルプランナーであり、主の対応分野が生命保険関係です。私はお客様との生命保険に関する相談が終わった後に必ず「確定拠出年金に加入していますか?」という質問をします。以前と比べ、「Yes」の回答が増えていますが、「中身についてきちんと把握できていますか?」という質問に対しては、ほとんど「No」「よくわからないので放置しています」といった回答です。

 そこから運用レポートなどをご用意いただき、まず確定拠出年金とは? といったところからお伝えし、ご自身の対応一つで、将来の資産額が大きく変わることをお伝えし、しっかりご自身で運用に対して意識を持って対応いただくようにしています。

 なぜそういったことをしているのか?実は会社によっては、この確定拠出年金が退職金の全てだというところもあるのです。多分これからそういった会社はますます増えていくと私は思います(その理由については、またの機会にしたいと思います)。多くの若者が「老後が不安」と今から思って  います。

 その不安を解消するための手段にもかかわらず、こういったことになってしまっている。この分野に限ったことではないのですが、やはり日本における教育の在り方に一つの原因があるのでないかと私は思っています。金融関連に限らず、社会保障や医療などについても私たち日本人は自立、自己責任で暮らしていくための知恵を学んでいないと思います。学校でそういった教育が行われていないこともそうですし、学校を出て就職した後に、あらためて何かを学びなおすという文化もあまりないと思います。どこかで「国や会社が守ってくれる」といった雰囲気もあります。

 様々な問題があるので、国はどんどん新しい法律を作って、新しい施策を進めていく。ただし作るだけ作って、後は企業に丸投げとなり、最終的に対象となる国民が置き去りにされてしまっているのだろうと思っています。まさに「仏作って魂込めず」で、いわゆる機能不全状態かなと考えています。

 もちろんそういった変化に対して、知識をつけて主体的に行動している人もたくさんいます。だから余計に格差が広がっていくのかとも思っています。確定拠出年金でいうと、本来は加入者それぞれの知識レベルに応じた投資教育を「導入企業が継続的に行う」ことが、実は法律で定められています。ただし現実は企業でそれを適切に行うことはそれほど簡単ではないですし、まして規模の小さな企業では、人的な問題も出てきてしまいます。

 私のお客様のほとんどが「相談する場所がない」とおっしゃっていました。確かにその通りです。ですから、私は自分が関わった方には必ず情報提供しています。もしこの文章をたまたま見て、ご自身の現状に疑問を持った方は、まずは現状確認を行っていただきたいと思っています。

制度自体は本当に良い制度!!

 最後になりますが、この確定拠出年金制度は、老後の資産形成という観点において、非常に利用価値がある制度だと思います。ここでは詳しくは述べませんが、特に税制上のメリットが大きいです。それだけ国も税金で優遇 するので、そのかわり老後の資産は国の年金だけに頼らず、自分で準備をしてくださいというメッセージを発信しているのだと思います。

 また、年金については常に議論が起きていますが、受給開始年齢が現在の65歳から70歳になるのではないかと私は思っています(以前は60歳からでした)。善し悪しは別にして、自己責任感がより強まっていくのだと思いますので、将来に不安がある方は、少しでも早くアクションを起こした方が良いと思います。私自身もこれから先、一人でも多くの方にお伝えしていこうと思っていますし、私自身ももっともっと学んでいこうと考えています。

 ちなみに今は「イデコ」という愛称で多くの人に知られていますが、この制度導入当初は、「日本版401k」なんて呼び方していましたね。いつの間にか聞かなくなりました。

 あと、昨年(2019年)に、「老後に2,000万円必要」という話題で大騒ぎになりました。私は、老後にそれくらいは必要だと思いますし、騒ぎになったからといって、なかったことにするのはどうなのか?と思いました。その是非はともかく、あの騒ぎのおかげ?か、あのあと老後に不安を抱えた多くの方が、新規にイデコの申し込みをしたそうです。前年比でかなりの増加率だったそうです。国としては結果オーライだったのでしょうか?

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