原根健太のPT名古屋2020優勝レポート ~マジックは情熱~

はじめに

本稿はPT(プレイヤーズツアー)名古屋2020の優勝レポートです。
今回の結果を受け、MRL(マジック・ライバルズ・リーグ)への加入を目標とし、遠征や配信など、プレイヤー業に力を入れようと考えているので、このnoteに掲載を行い、有料設定をさせていただきました。支援の意味合いでご購入いただければ幸いです。
ただし、レポート自体は多くの方に読んでほしく、是非伝えたいことも含まれているため、全体の9割を無料公開範囲としており、本旨をご覧いただく上では支障のない一部分のみを有料設定にしています。支援いただけた際のおまけ的位置付けです。

※おまけの内容
以前の有料記事で取り扱ったテーマである、サイドボーディングの実戦バージョンです。
今大会、僕は練習中に使ったことが無いデッキをぶっつけ本番でプレイしました。そのため、事前に用意したサイドプランなどは特に存在しません。
そのような状況で、どういったことを考えてサイドボーディングを行っているのか、特に有益な情報になるだろうと感じた下記3戦を題材に話しています。
・ラウンド6 黒単アグロとの戦い
・ラウンド8 黒単アグロとの戦い
・準々決勝 八十岡翔太のディミーアインバーターとの戦い
繰り返しになりますが、こちらはあくまでおまけ的内容ですので、ご留意ください。字数にして、約3500字です。

それでは、本題へと移ります。

PT名古屋優勝と、そこに至るまでの迷い、決断

先日開催されたPT名古屋2020を優勝した。

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マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイトより引用

優勝は格別だ。同大会を語る上で人々の記憶に色濃く残り、自身の中でも大変に誇らしく、幸福な記憶として刻まれる。

マジックをプレイし始めて5年になるが、プロを名乗りながらもタイトルの数には乏しく、周囲のプロプレイヤーはいくつもタイトルを抱えたつわものばかり。ビッグイベントのトップ8はもちろん価値あるものだが、優勝は一際大きな意味を持つ。

勝ちたい。渇望していた。
グランプリのトップ8は5回あり、始めの1,2回は入賞の時点で達成感を得ていたが、途中からはさらにその先、「優勝」を強く意識するようになった。慣れもあるが、歩みを進める中で、練習を共にするようになった仲間達と、あるいは対峙する強豪達と、肩を並べたいという思いに満ちていた。

だが気持ちだけでは、そう願うだけではどうにもならないことを、この数年間痛いほど思い知らされていた。MPL(マジック・プロ・リーグ)が設立され、プロの中でも更にその上の存在をより強く認識するようになり、正直なところ、打ちのめされていた。
プロレベル制度が廃止され、MPL・MRLへの移行が発表されるなど、激動を見せたプロシーン。新体制の元で上を目指すことに意欲的な姿勢を見せるプレイヤーも多くいる一方で、当の僕自身は悩んでいた。

プロツアーに参加し始めて3年。世界の強豪を相手に戦い続け、またそこに向けた練習を日本が誇る屈指のメンバーとこなし、トップレベルというものを肌で感じ続けてきた。その結果、今の自分が「どれぐらい足りていないのか」を嫌というほど味わっていた。周囲の目が、彼らと僕との距離をどれほどのものだと考えているかはわからないが、少なからず僕自身は、MPLやMRLを目指すとか、そう言ったことを全く現実のものとして捉えることができないでいた。

昨年末に発売されたマナバーン内の企画で、市川ユウキと対談を行った。プロシーンのこれからをテーマに据えたものだが、あれは僕から持ち込んだ企画で、当時の疑問や感情を赤裸々にぶつけたものだ。揺れ動くシーンの中で、僕自身も迷っていた。どこを目指し、何をすべきなのか。

その後に参加したMC6(ミシックチャンピオンシップ6・リッチモンド)はプロレベル資格で参加できる最後の大会で、「もしかしたらこれが最後のプロツアーになるかもしれない」などと考えながら臨んでいた。しかしながら、当のMC6は十分な準備をこなした上で参加できたとは言い難い大会だった。理由は、武蔵メンバーの大半が権利不所持だったことから、調整チームが空中分解していたためだ。

~「ミシックチャンピオンシップ6に向けた思考」より引用~
実は今回、チーム調整を行わなかった。これまでのプロツアーで調整過程を共にしたチーム武蔵の調整グループは、メンバーの大半がプロツアー権利を失ったことで空中分解し、残されたメンバーはそれぞれ独自で調整を行っていた。

そのため、チーム調整を行うことができず、結果ごく一部の人間とのみ練習を行うだけで本番を迎えた。そんな様相で勝ち抜けるほど世界は甘くなく、当然の敗北。最後かもしれない挑戦を不完全燃焼のままに終えることが、ただただ悔しかった。

そんな折、同大会にて、次回PT(今回のPT名古屋2020)の参加権利を昨シーズンのレベルプロに付与する発表が行われた。あまりに急な発表であり、皆呆気に取られていた。なにゆえそのような事態になったのか全くわからなかったし、特に説明が行われた訳でも無い。(少なくとも僕の知る限りでは。)
だがこれにより、自身の権利もそうだが、同じく権利を失っていた他メンバーも権利を手にすることができ、全く意図しないところでチーム武蔵は復活を果たした。消えかけていた火が、再度灯された。

更に、PT名古屋は新設フォーマットであるパイオニアで開催されることが告知された。僕はこれをハッキリとチャンスだと捉えた。なぜなら、新規フォーマットは当然、全員が同じラインからのスタートとなり、既存知識は一切ない。最初期から全力投球し、これに精通することで、他の誰も持ち得ない、絶対的アドバンテージを有することができると考えた。

パイオニア追究

そこで始めたのが、同フォーマットにおける環境分析だ。

現存のカードプールで実現できること、禁止カードが与える影響、メタゲームの変遷など、パイオニアに起きている全ての事象を追い続けた。
ブログの更新自体は1/7に停止しているが、これはあくまでチーム調整のため、情報を共有するチームメンバーに損害を与えないための配慮であり、個人としては毎日欠かすことなく続けてきた。要約したものをチームメンバーと共有し、理解を深め合ってきた。

フォーマットの仕様を理解していることは明確な強みである。例えば、始めに追究したマナベースからは「なぜ強力なカラーリングとそうでないカラーリングが存在するのか」を理論立てて説明することができ、その法則から逸れるものは「コンセプトの強さ」や「環境上のポジションの良さ」が際立つ証である。今回で言えば、バントスピリットはこれに該当する。

環境の変遷についても「なぜそう動いているのか」を全て説明できるよう、理解に努めた。わからないことがあれば識者に問い、それでもわからなければ自身で研究し、「理解度世界一」を真剣に目指し、時間とコストを費やした。あらかたのデッキは組んだので、練習期間中MO(Magic Online)の課金額は10万円を超え、途中からは数えるのを止めた。情熱の価値や意味は、自分さえ理解できていればそれで良かった。

また新設されたばかりの環境であり、禁止改定が繰り返され、『テーロス還魂記』のリリースも控えていたことから、環境が動く要素が多く存在。そのため早々にデッキをロックすることはせず、柔軟に立ち回り、直前の段階でも選択肢を可変させられるよう、あらゆるタイプのデッキを学び続けた。自身でプレイすることも大切だが、個人的に「自分に無いものは外から吸収する事が大切」という考え方を持っているので、「見る」ことにも重点を置いた。現在は配信を行うプレイヤーも多いため、教材は無限にある。目についた発信は片っ端から目を通したし、有料記事も買い漁り、MOでよく勝っているプレイヤーを見つけては動向やデッキの変遷を追い掛けるなど、やった方がいいと感じたことは全てこなした。

兎にも角にも、パイオニアというものに対し、詳しく"あり続ける"ことを心掛けていた。

パイオニアの環境変遷はいくつかのステップに分かれる。PT初日で公式からインタビューを受けたので、基本的な流れは下記を参照。

要約すると、禁止改定が落ち着くまでは《守護フェリダー》《豊穣の力線》《密輸人の回転翼機》《死者の原野》《王冠泥棒、オーコ》と言ったパワーカードが順に使い倒され、環境を席捲。それ以後は構築ノウハウが既に確立されていたアゾリウスコントロール・イゼットフェニックス・グルールアグロといったデッキが流行し、またパイオニアフォーマットの特性を活かしやすく、構築も簡単な各種単色デッキ(黒単、赤単、緑単)がそれに続いた。終期に差し掛かると5色ニヴミゼットのような完成に時間を要したデッキが浮上し始め、デッキの種類が増えたことで環境が多様化。そしてダメ押しとなる『テーロス還魂記』によってインバーターコンボやヘリオッドコンボのような強力な選択肢が追加されたことで、フォーマットは一気に複雑化した。

デッキ選択、チームで臨むことの意義

今回のチーム武蔵の調整は「消去法」の形が適用された。10人のメンバー(山本賢太郎、市川ユウキ、覚前輝也、八十岡翔太、行弘賢、石村信太朗、高尾翔太、川崎彗太、宇都宮巧、原根健太)で調整を行い、対戦データを共有しながら、互いをカバーし合うように一通りのデッキタイプをテスト。選択肢が出揃うまではデッキそのもののポテンシャルを図り、デッキパワー自体が低いもの、将来性がないものを順々にカットしていき、選択肢が出揃った後は、環境的な有利不利を見定めて選択肢を絞っていった。このあたりの過程は公式コラムで市川ユウキがまとめてくれると思うので、そちらを心待ちにしていただければと思う。

紆余曲折を経て、最終的な候補として残ったのは下記4デッキ。
・ディミーアインバーター
・青単信心インバーター
・オルゾフオーラ
・バントスピリット

ダウンロード

『テーロス還魂記』リリース後のパイオニア環境は《真実を覆すもの》を用いたインバーターコンボのデッキパワーが頭一つ抜けており、基本的にはこれをプレイするのがベスト。多様化した環境において、不利なデッキがほとんどないという壊れたデッキパワーを持つ。
チーム武蔵としての結論は、自身もインバーターコンボをプレイするか、インバーターコンボに最低限の勝率を保ちながら、他デッキ相手に勝率を担保できるデッキをプレイするかの2択。条件を満たすデッキをリストアップし、最終的には各々の適性に合わせて選択が散る格好となった。

ダウンロード (1)

僕自身の選択はバントスピリット。
インバーターコンボとの択で悩んでいたが、微妙な分岐を渡り切る判断で躓いてしまうことが多く、デッキの強さは間違い無いものの、適性にやや欠けると判断。このデッキは本当に難度が高く、使いこなすのが難しい。PT名古屋初日第9ラウンド・八十岡翔太 vs Alexander Hayneの試合を見てもらえば明らかだ。

このデッキは非常に多角的な戦略を有している。コンボとして立ち振る舞うべきか、コントロールとして立ち振る舞うべきか、対戦相手のデッキはもちろんのこと、ゲーム中ですら、状況次第で取るべき立場が目まぐるしく変化していく。僕の見立てでは、「使えた気になっているプレイヤー」がほとんどだと思う。

一方、《集合した中隊》デッキの扱いは過去の経験で慣れている。幸い、立ち位置の良さはインバーターコンボと同程度を示していたので、同格の選択肢なのであればこちらを優先したいと考えた。また世に出回っているディミーアインバーターのリストがコンボに寄せた形であったことも大きい。この場合、バントスピリットは同デッキに対して僅かに有利の認識で、これがこのデッキの選択を肯定する要因となる。今大会においても3度マッチングしたが、その全てに勝利することができた。

冒頭でも記したように、このデッキは調整段階で一度もプレイしたことが無かったが、他人のプレイは何度か見ていたし、信頼できるメンバーが作り上げたリスト、積み上げたデータ(勝率)があったため、何も心配すること無くデッキをサブミットした。

ちなみにこうした経験は今回が初めてではなく、プロツアーのような大きなイベントで、練習中一度もプレイしたことが無いデッキを使ったのはこれが7回目になる。そしていずれのケースにおいても、成績はそれほど悪いものでは無かった。(PT-AER 7-3、PT-AKH 6-4、PT-HOU 9-1、PT-DOM 7-3、PT-GRN 8-2、MC1 6-4。そして今回のPT名古屋が10-1-1。)
そして「できれば使いたい」と思い強引に使ったデッキはすこぶる成績が悪い。(PT XLN 1-2初日落ち、PT-RIX 5-5)

チーム調整の結果、自身が調整していないデッキがベストデッキとなることは決して珍しいことではない。チーム全体で選択肢を網羅していくため、自分自身が当たりを引けている確率はむしろ低い。そして、そうした状況では「自分で調整を続けてきた、環境に合っていないデッキ」よりも「不慣れだが、環境に合ったデッキ」をプレイした方が良いと考えている。でなければ、チームで調整を行っている意味がない。個人でカバーし切れない範囲をチーム全体でカバーするのがチーム調整の意義だと思っているので、最終的な判断がブレてしまっては全てが無駄になる。選択は信頼の証だ。

PT名古屋使用デッキ「バントスピリット」

クリーチャー(32)
4 霊廟の放浪者
2 幽体の船乗り
4 無私の霊魂
4 鎖鳴らし
4 至高の幻影
2 厚かましい借り手
4 ネベルガストの伝令
4 呪文捕らえ
4 天穹の鷲

呪文(4)
4 集合した中隊

土地(24)
2 平地
2
4 神聖なる泉
4 寺院の庭
4 繁殖池
4 氷河の城砦
4 植物の聖域

サイドボード
2 蔓延するもの
4 拘留代理人
1 大天使アヴァシン
2 安らかなる眠り
1 軽蔑的な一撃
4 神秘の論争
1 残骸の漂着

結果的に、チーム武蔵が選んだ4デッキは、メンバー自身の手で、その全てが今大会のトップ8に進出し、チーム調整としては大成功を収めた。成功の要因として考えられるのは、以下の通り。

①大会のメタゲームが事前に予想立てたものと概ね一致したこと
②集積したデータにより確立した有利・不利の相性認識にズレが無く、持ち込んだデッキの優位性を正しく発揮できたこと
③ドラフト合宿によって得られた結論にズレが無く、ドラフトラウンドが好成績だったこと

①・②に関しては、チームとしてずっと続けてきたデータマジックが上手く機能した格好。集積の仕方や内容は明かせないが、強みを出せたと思う。

③に関してはやや話が反れるが、ドラフトラウンドの成績を安定させることは"上位進出""メタ外のデッキとの対戦機会を減らす"という2つの観点で重要なことだ。"上位進出"に関してはトップ8に進出できるスコアの関係で当たり前のことなので割愛。もう一方の"メタ外のデッキとの対戦機会を減らす"に関しては、例えば僕が今回選んだバントスピリットは赤単アグロに弱い。だが赤単アグロはトーナメントで勝ち組になるであろうディミーアインバーターに駆逐されるはずなので、"順当に勝ち進めば"マッチングの確率はどんどん低下していく。だが、ドラフトラウンドで成績を下げ、下位卓に入り込んでしまうと、"駆逐されてきた赤単アグロ"とマッチングする可能性はむしろ高まる。構築ラウンドが快調でも、ドラフトラウンドで躓けば、全てが無になってしまう。つまり、PTで勝つためにはバランスの良い練習が必要不可欠だ。

今回もドラフト練習はTeam Cygames主催のドラフト合宿に参加させていただいた。感謝。
そこで得られた結論は、ザックリ言えば「レアに寄せる」「緑にはコモンから入らない」の2点になるが、リミテッド下手の僕があれこれ話すのも野暮なので、詳しく知りたい方は下記2つの動画を参考にしてほしい。

八十岡翔太twitch 2/4配信アーカイブ

行弘賢youtube 2/4配信アーカイブ

日本MPLメンバーであり、リミテッド巧者でもある2名が振り返り及び解説を行っている。いい時代になったものだ。僕が駆け出しの頃はこんな有益な情報は存在しなかった。
目を通す際は、『テーロス還魂記』のドラフトテクだけでなく、「どのように環境を紐解いているか」にも注目してみてほしい。動画内にあるように「青をやれ」「緑をやるな」と言った断片的な情報だけを持ち帰れば瞬間的な勝率は上がるかもしれないが、刹那的な勝利に価値を置き過ぎないでほしい。「なぜそう考えたか」を彼らは詳細に渡り話してくれているので、この貴重な機会を逃すことなく、吸収することに努めてほしい。

ともあれ、本番のドラフトラウンドにおいて、チーム武蔵のドラフト合宿に参加した面々は、全15回のドラフトで3-0が4回、2-1が10回、1-2が1回、0-3が0回という圧倒的好成績を収めた。

簡易レポート

大会当日の対戦内容を簡潔に記す。

▼1日目・ドラフトラウンド

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セテッサの勇者》《狼のまとい身》の2種優良レア入り白緑オーラをドラフト。《狼のまとい身》は《牧歌的な教示者》でサーチでき、一度手札に入れば《ラゴンナ団の語り部》《流星の執政官》で使い回せるため、見た目以上にレアをプレイできる機会は多く、白緑の中では強い部類。上記「レアに寄せる」をわかりやすく表現したデッキ。

R1 青黒(クリスティアン・カルカノ) ○○
強カラー・強プレイヤーの組み合わせだが、肝心のデッキは弱め。
相手側の的確な手札読みでイージーには勝たせてくれなかったが、根っこの強さで差がつき勝利。

R2 白青タッチ黒 ××
夢さらい》《悪夢の詩神、アショク》のボムレア2枚入りデッキ。
こちらのデッキにとって非常にクリティカルで、全くいいところなく敗北。

R3 青緑 ○○
かなり弱めの青緑。申し訳ないが、よく1勝したなという印象。
全く危なげなく、一方的に蹂躙して勝利。

▼初日・パイオニアラウンド

R4 ロータスコンボ(三原槙仁) ○○
メインボードはこちらが《霊廟の放浪者》+《至高の幻影》or《天穹の鷲》のセットと《呪文捕らえ》というコンボへの干渉手段を何枚引くかの勝負で、サイドボード後は相手がそのいずれにも引っ掛からない《パルン、ニヴ=ミゼット》を引けるかの勝負になる。
両ゲーム共こちら側に傾いて勝利。

R5 ディミーアインバーター(杉山雄哉) ○○
コンボに傾倒したリストで、この場合は相性が若干良い。(※理由に関しては有料部分に記述あり
相手がデッキの扱いにやや不慣れだったことも影響して勝利。

R6 黒単アグロ ○××
サイドボーディングミスが影響し、敗北。
※詳しくは有料部分にて

R7 緑単タッチ黒アグロ(熊谷陸) ○○
ネベルガストの伝令》と《拘留代理人》が相手のゲームプランを破壊して勝利。《朽ちゆくレギサウルス》《グレートヘンジ》といった相手側の強み全てに対処可能で、逆に相手からは干渉されない《拘留代理人》が輝くマッチアップだった。

R8 黒単アグロ ○○
R6の反省を踏まえて、勝利。
※詳しくは有料部分にて

R9 アゾリウススピリット ×○-
対戦相手のプレイが非常に遅く、ジャッジを呼んで張り付いて貰いながらのゲームとなったが、あまり改善が見られず、ゲームカウント1-1で引き分けに。スロープレイによる注意や警告のラインがよくわからない。あのプレイ速度では絶対に3ゲームを消化し切ることはできないし、この対戦相手は結局、同大会で3分けを記録。明らかに適正な速度ではないはずだ。

初日は6-2-1で終了。

▼2日目・ドラフトラウンド

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地盤の巨人》《アクロス戦争》《狼のまとい身》入りの白赤タッチ緑をドラフト。
ファーストドラフトではお目に掛かれなかった《ヘリオッドの巡礼者》が6枚取れたので、《狼のまとい身》はデッキに7枚入っているような扱い。残念なのは、メインカラーが白赤なのでせっかく3ターン目に《狼のまとい身》をサーチしても緑マナが無ければプレイできない可能性があるのと、《地盤の巨人》がダブルシンボルのせいで赤マナを多めに取らざるを得ず、その事態が比較的発生しやすいこと。
また《凄絶な無気力》《イロアスの恩寵》《戦茨の恩恵》といった除去オーラが1枚も流れてこなかった関係で《ヘリオッドの巡礼者》を除去として換算することができない。オーラデッキの割に速度も担保できず、欠陥が多いが、その分レアに傾けているデッキなので2勝は狙うことができるだろう。

R10 青赤(加藤健介) ○○
相手側のデッキに2種類の強レアが潜んでいたが、2ゲーム共潜んだままとなり、勝利。

R11 白緑 ××
太陽の恵みの執政官》と《太陽の宿敵、エルズペス》が入っており、それ以外の部分も非常に完成度の高いデッキ。全く歯が立たず、敗北。

R12 赤黒タッチ青 ×○○
悪夢の詩神、アショク》入りの除去コントロール。第1ゲームは完全にコントロールされ敗北したが、第2・第3ゲームをこの大会中屈指のブン回りにより勝利。ツイていた。

▼2日目・パイオニアラウンド

R13 白単ヘリオッド(ケルヴィン・チウ) ○○
高相性のマッチアップ。両ゲーム共コンボへのアプローチが弱く、その間に飛行クリーチャーで蹂躙して勝利。

R14 白単ヘリオッド(クオ・ツーチン) ×○○
第1ゲームはコンボパーツの連打に対応し切れず敗北。第2ゲームを速やかに取り返し、第3ゲームが激戦となるも、際どい状況で対戦相手がミスを連発し、流れが傾き勝利。除去の対象、呪文をプレイする順番、タイミングなど。焦りが感じられた。

R15 イゼットエンソウル(加藤健介) ○×○
先手ゲーム。ダイスに勝利して先手を掴み、先手を交互に取り合ってマッチが終了。今大会全18回戦中、先手が2回に後手が16回と後手に偏っていたのだが、ここだけはというタイミングで先手を選ぶことができた。

予選ラウンドの成績が11-3-1となり、決勝シングルエリミネーションに進出。

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トップ8は過去に類を見ないほどに豪華な面々となった。石村信太朗、高橋優太、行弘賢、八十岡翔太、浅原晃、リーシータン、ドミトリーブタコフ、そして僕。前述の通り、チーム武蔵からは4名がトップ8に進出し、調整は大成功を収めた。

▼決勝シングルエリミネーション

SE1 ディミーアインバーター(八十岡翔太) ×○○
厳しい戦いだったが、事前に考えた策が功を奏し、勝利。
※詳しくは有料部分にて

SE2 青単信心インバーター(石村信太朗) ○○
基本的には高相性のマッチアップで、ゲーム開始時に《予期の力線》が設置されることで初めて均衡したゲームになる。どちらのゲームも対戦相手の手札に力線が無く、一方的なものとなった。

SE3 オルゾフオーラ(行弘賢) ×○○
互いがキーカードをどれだけ引き込むことができるかが焦点。1ゲーム目は有効牌に辿り着けず蹂躙を許したが、2ゲーム目は《ネベルガストの伝令》《拘留代理人》を、3ゲーム目はここしかない場面で《厚かましい借り手》をプレイすることができ、ゲームを決定付けた。

優勝。
「望外」の言葉で終わらせたくはない。そうありたいと願い、そのための歩みと覚悟があった。掴んだのだと、胸を張って言いたい。謙虚であるのも良いが、努力することの大切さや、叶える喜びを伝えていくのも勝者の務めだと僕は思う。

また決勝シングルエリミネーションの3戦は全てチーム武蔵のメンバーと戦った。僕以外に3人のメンバーがトップ8に進出していたので、その全てとマッチングしたことになる。トップ8メンツは錚々たるものであったため誰と戦うことになっても厳しい戦いを強いられただろうが、共に努力してきた仲間達と最後の舞台でぶつかり合えることがただただ嬉しく、そして楽しかった。
掛かっているものの大きさだとか、勝った先のことだとか、そんなものは全く頭になく、純粋に目の前の対戦を楽しんでいた。「やはりマジックはこうでなくちゃな」と心の中で噛みしめていたが、気付けば笑みがこぼれてしまっていることも多かった。強者との戦いは本当に楽しい。最高の舞台で、最高の対戦相手と、最高のゲームを。僕がマジックに求めてきたものだ。

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おわりに

一番に言いたいのは、チームメンバーへの感謝。
先に述べた通り、デッキリストは僕が用意したものではないし、当該のデッキでデータを積み重ねてきたのも仲間の面々だ。自身では、情報収集・分析・共有に徹することで彼らがパフォーマンスを発揮しやすいように務めてきた背景はあるが、それに応え、確かなものを提供してくれたのは彼らに他ならない。最大限の敬意と、感謝をここに示したい。本当にありがとう。

ともあれ、昨年から走り込みを続けてきたパイオニアにおいて、優勝という最高の成績を収めることができた。1プレイヤーとしてトーナメントに参加する以上、目指すものは優勝に他ならず、冒頭にある通り近年僕はこれを欲して止まなかった。今回の結果にはとても満足している。
また、英語版カバレージのスタッフからインタビューを受けた際、「時差の関係で、同時開催のPTブリュッセルよりも先に君がチャンピオンになった。世界で最初のプレイヤーズツアーチャンピオンだ。」と話された。世界一精通することを目指したパイオニアで、世界で最初のチャンピオンになったことは実に感慨深い。

努力は裏切ることもあるが、しない努力には裏切りも報いも無い。まずは自分に賭けてみることが必要だ。
5年前を思い出していた。実力も伝手も何も無い、ただトーナメントマジックに身を投じたいという想い、情熱だけが、持ち合わせる全てだった。
時が過ぎ、多少の実力が付いて、頼れる仲間と関わりを持つことができた反面、情熱はやや失われつつあった。プロ制度の変革はそれに拍車を掛け、心の灯が消えてしまいそうな程に追い込まれたが、チーム武蔵の復活により再び熱意が込み上げ、情熱の炎を燃え上がらせることができた。

大会を終えて、有難いことに祝福のメッセージを沢山いただいた。その中で最も嬉しかったのが、「自分も頑張ってみようと思えた」という声だ。僕にとっての始まりも、ある男が立派に戦う姿に惹かれ、感化されたことであり、他の誰かに影響を与えられるようになった事がただただ嬉しい。
そうした人々に向ける言葉があるとすれば、「マジックは情熱」だということ。モチベーションは最大の武器であり、何を成すにも必要なものだ。今大会、僕が他の誰にも負けていなかったと言えるものも、結局それに尽きるのだから。

読んでくれてありがとう。皆に感謝を。

購入者へのおまけ~PT名古屋におけるサイドボーディング実戦編~

本文は以上となり、ここからは冒頭で記したように、今後の活動を支援いただける方に向けた有料部分です。本大会中行ったサイドボーディングの中で、読者の皆様のスキルアップに繋がるであろうと感じた下記の3戦をピックアップして記述を行っています。

・ラウンド6 対黒単アグロ
・ラウンド8 対黒単アグロ
・準々決勝 対ディミーアインバーター(八十岡翔太)

今回使用したバントスピリットは前述の通り練習段階で一度もプレイしたことが無かったため、本番中、対戦相手とデッキリストを交換した際(本大会はデッキリスト交換制)、そこから得られた情報と、第1ゲームで感じたことを反映させてサイドボードプランを組み立てることにしました。僕のサイドボーディングの基本は過去に執筆した記事の通りですので、興味がある方はそちらも読んでみてください。

ラウンド6の黒単アグロとの対戦について

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原根健太のPT名古屋2020優勝レポート ~マジックは情熱~

Harane Kenta

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Magic: the Gatheringのプロプレイヤー。PT名古屋2020チャンピオン。 プロレベル制度終了までの間、ゴールドレベルを維持。