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中小企業のDXについて

 コロナ禍を受け、日本がデジタル後進国であることが露呈し、全国的にDXが叫び始められている昨今ですが、実は世の中的にはひっそりと法改正が来年から予定されています。

 その内容をご紹介する前に、中小企業の会計経理の実態について、特に記帳の自動化と帳簿書類の電子保存という観点から、私が把握しているところをご紹介したいと思います。


■記帳の自動化

 AIにより会計が自動化され、税理士や会計士が不要になるという論調が展開されています。ここに、会計の自動化とは何か?という点についてまずまとめたいと思います。

 ここでいう会計の自動化とは、記帳の自動化を意味しています。

■人手を介した作業

 売上請求書を発行した、仕入れの請求書を発行した、経費を使用した、こうした取引の結果が「仕訳」として「記帳」されます。従来は、請求書、領収書の内容に基づき、借方・貸方の勘定科目を「人」が判定し、「手を使って」コンピュータに入力(記帳)をしていました。

■FinTechによる自動化

 こうした中、FinTechによる自動化という手法が登場してきました。通帳やクレジットカードの明細を自動的に取り込み、明細の「取引先名」や「摘要」をもとに勘定科目を自動判定し、「記帳を自動化」するというものです。freeeやMoneyforwardといったサービスがその代表格です。

 当初、通帳の情報は「スクレイピング」という手法で取得されていました。「スクレイピング」とは、みなさんが、インターネットバンキングで確認している通帳明細と同じ画面をロボットが確認しに行き、そこからデータを取得する方法です。

 銀行によって通帳明細の列数や列の順番は異なりますので、データの取得方法は銀行によって異なります。銀行からは「勝手に」やられていることなので、「取得の仕方」が説明されることも通常ありません。
 明細の形式が変更されてしまうと、*データが取得できなくなる*ということも頻繁に起こりえました。

 このような状況の中、2018年6月の「改正銀行法」を受け、「銀行API」の開放が進むようになりました。「API」というのは専門用語になりますが、要は銀行と契約を結んだFinTech企業であれば、きちんとデータを取得できる仕組みとその仕様を公開するというものです。これにより、通帳明細が安定的に取得できるようになっています。

 こうなると、あとは、銀行を経由しない掛仕入、従業員の立替精算など、他の取引の自動化をどうするかということになります。

■スキャナでの読み取り

 こうした取引については、紙で受領した領収書をスキャナやスマホで画像として読み取り、AIにその内容を認識させるといった対応が可能です。これにより、取引先名や金額などが自動判的に認識できます。

 従来は、請求書ごとに読取位置をあらかじめ指定しておく必要がありましたが、現在はAIが読取位置を自動判定してくれるようになりました。いわゆるAI−OCRと呼ばれる技術です。

■はじめから電子データとなっている取引

 昨今では、領収書や請求書などのPDFがメールでやりとりしているケースも増えていると思います。こうしたPDFも上述したAI−OCRを使って読み取ることができます。

■帳簿・書類の電子保存

 こうやって、記帳を自動化したとしても、残る課題があります。それは帳簿・書類の保存方法です。

■帳簿書類は原則は書面(紙)での保存

 帳簿、受領した請求書・領収書は、原則として書面(紙)で保存する必要があります。先ほど記載した、電子メール経由で受領したPDFであっても、あえて簡単に説明すると、紙に出力して保存することになります。

■特例により認められる電子的な保存

 電子帳簿保存法という特例法により、電子データとして保存することが可能ですが、これは事前に承認申請を税務署に提出する必要があります。また、会計システムやスキャンした証憑書を保存するシステムも、電子帳簿保存法に定められた要件に対応している必要があります。

■そして電子帳簿保存法の改正

 ということで、中小企業が会計業務のデジタル化を推進しても、帳簿書類は結局紙で残さなければならないという状況になっています。
 この状況を打開しようとするのが冒頭で述べた法改正です。具体的には、電子帳簿保存の際の承認申請を不要とし、かつ会計ソフト等に求める要件も大幅に緩和するというものです。この改正により、ほとんどの会計ソフトが電子庁帳簿の要件に対応できることになります。

■むすび

 2023年から、インボイス制度の導入が決定しています。政府はこのインボイスを電子化する(電子インボイス)計画です。中小企業がこの電子インボイスに対応するためには、現時点から会計業務のデジタル化を進めていく必要があるでしょう。

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