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Cannibal Abduction

2023年にselewiからリリースされたホラーゲーム。

映画悪魔のいけにえを想起させるホラーゲーム。車の故障により田舎の路上で立ち往生してしまったヘンリー。たまたま通りかかった農夫から、自分の農場が近くにあるのでそこで修理できるとの申し出を受けたことから悪夢の一夜が始まる。

ヘンリーを操作して食人鬼の徘徊する館からの脱出を目指すのがゲームの目的。グラフィックはPS1時代のバイオハザードやサイレントヒルの様なローポリゴン&固定カメラ、そして左右で旋回し上で直進するタンクコントロールという昔懐かしい操作方法。

くるくる回るインベントリー画面、サイコー
暗がりはライトで照らそう(画像はライトオフ)

インディーゲームで価格も1400円くらいなので、ゲームボリュームは短め。謎解きもそこまで複雑ではなく、この手のゲームを遊ぶ人ならほとんど立ち止まらずにクリアできると思う。

びっくりしたのは字幕とメニューが日本語に対応している点。そしてその日本語クオリティがかなり怪しい点だ。

ヘンリーさんは主人公。ライトをつけると「敵に」気づかれやすくなるはずが…。

過去の記事でもゲームの話と見せかけて思い出話ばっかり書いてきたが、このアヤシゲな和訳にも思い出がある。

大学生だった頃、英語力を上げようと色々な事を試していた。当時はスマートフォンが出たすぐ後くらいで、デスクトップPCから利用できるアプリケーションがまだ沢山残っていた。Skype, mixxerなどなど、無料で使えるサービスは結構なんでも手を出していたと思う。

そんな中、conyacというWebサービスが発表された。ドラえもんのひみつ道具ほんやくコンニャクから名付けられたというそのサービスは、なんと資格登録など一切不要で、翻訳作業に対してリアルマネーが報酬としてゲットできるというものだった。
小学生からのインターネットユーザーだったので、お金の話が絡むとネットは非常に危険なものになるという真っ当な感覚を持っていた。でもまぁ、とりあえず翻訳だけしてお金の事は後で考えようという事で利用を開始した。

案件は大体140文字くらいの短文の翻訳がほとんど。自分の登録した対応言語に当てはまる依頼が通知されるので、逐一翻訳をしていく。依頼者が先着3-5個目くらいの回答の中から一つを選ぶというシステムだったと思う。一案件30-50円くらいの報酬がポイントで貰え、出金時には手数料を引いた額が振り込まれる。
金額は微々たるものだったが、かなり熱中してやっていた。わずかでもスキルがお金に変わるのは気持ちのいいものだった。

依頼内容は様々だったが、依頼文の文字数制限があったからか、5案件くらいの細切れにされたオークションの説明文のようなものをよく目にした。先述の早い者勝ちシステムゆえに、本来一つの大きな文章だったものが、それぞれ別の翻訳者によって訳されていく。その過程で、代名詞が指している内容が訳出されなかったり、文体がチグハグになったりしている翻訳が沢山あった。それでもまだ当時のweb翻訳は頼りになるクオリティではなかったので、conyacは十分な品質を持っていたんだろう。妥協点としてのwin-winな関係性で、自分を含むアマチュア翻訳家の訳文が誰かの助けになっていたいい時代の話だ。

本作の日本語訳はまさにそんな感じの文体。アイテムごと、機能ごとに文体が統一されていないので、日本語でプレイしているのに頭の中で翻訳作業が必要になってしまい、オープニングが終わった後ですぐ英語に切り替えた。ま、調べた限りこのゲームを作ったseleviさんが何処の人かまでは分からなかったので英語がオリジナル言語じゃない可能性もあるが、とりあえず日本語よりスムーズに遊ぶことができた。

ゲーム自体は短いながらかなり勘所を押さえた作りで、敵の出現に怯えながら楽しく遊べた。どうやら日本語版はゴア表現にモザイクがかけられているようなのだが、そもそもがファウンドフッテージっぽい表現なのでモザイクも違和感がないのと、ローポリゴンなので逆にグロテスクな雰囲気を盛り上げる働きをしていると思う。

モザイクある方がグロくなってます確実に

2種類あるエンディングどちらも一捻り効いててとても良かった。どちらのパターンも個人的な大好物でございました。

なお、PS版は同じ作者の前作The Night of The Scissorsも収録されている。こちらはCannibal Abductionと比べると荒削りだけど、雰囲気が良くて同じく良作だった。ただ、クリアに必要なパスコードの表記が日本語字幕だと文字化けしていたので要注意。

直訳っぽくもあり、語尾に人間っぽさを感じる訳文は同じ。
わかったわ❤️と返したくなる。

サクッとトロコンしてプラチナトロフィーまでゲットすることができた。やはりセンスの合うホラー作家の作品は良いものだ。次なる作品に期待しております。

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