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【ブランディング】エステ系サロンにおける差別化の初期段階検討

エステサロンのデザイン設計をするとき、不動産条件とエステサロンの事業コンセプトが摩擦を引き起こしてしまい、デザインする足かせとなってしまうシーンがあります。いくつかのポイントとその対応するためのコツをご紹介します。


外部からの検討

明るく開放的な待合・隠れ家的な待合

エステサロンをはじめとする美容系サロンでは、自身の身体の悩みを抱えた処置を必要とする方がターゲットの場合と、メンテナンスし維持管理あるいはディテールアップを目指す方がターゲットの場合とで心理的条件が異なります。明るく開放的で外からの視認性が高いエントランスを設ける場合、通行人からの視線が気になってしまうデメリットもあります。受付対応スタッフにとって来店する様子などが目前に広がるため、常に来客意識を高めることができますが、緊張状態が続き気が抜けないということもいえます。逆に隠れ家的な待合の場合、来店された際に受付対応の担当者が気を緩めてリラックスして業務をすることがしやすい一方、突然の訪問に対応しないといけないような場面もあります。運営側の都合としては慣れればどちらでもさほど問題ないと思いますが、顧客にとってはエントランスの状況は気になるものです。
こうしたエントランスのデザインでは「開放的にデザイン」する方が難易度が高いということがポイントです。開放的にデザインするためには扉や正面の壁にガラスがないと見透しのよいウェルカム空間が作れません。一方でガラス部についてはフィルムなどで不透明にすることが内装工事でも可能なため、ある程度デザインにより「隠れ家的にデザイン」することは可能です。

身長170㎝のスタッフでちょうどよいサイズのカウンターとすることで、
平均的身長のスタッフはしゃがむと休憩できるようにデザイン
©(株)白井一級建築士事務所/SHIRAI ARCHITECTS

入店するまでにストーリーをつくるか

美しさを追求するためのサロンをデザインするために、入店までの空間体験も重要なポイントとなります。完全な隠れ家であれば、あえて目立たないように計画をすることもあります。しかし店舗という性質上ある程度「目を惹く」ことも重要です。単純にサイン計画で目立つことも可能ですが、ワンランク上のデザインを追求するならばアプローチにも物語感を演出することも視野にいれるといいでしょう。
こうした外構工事は一般的に不動産所有者に許可確認を取る必要があります。中には別区画の住居用ガス管などが埋設されたりしていて、そもそも工事ができないような舗装もあったりします。まずはデザイナーや設計者へ相談し、どのように相談すると実現可能か不動産仲介業者と協議することがオススメです。

入店するまでに庭の横を通るアプローチデザイン
©(株)白井一級建築士事務所/SHIRAI ARCHITECTS
街路樹に近い駐車場区画が停車しにくいことから、付加価値空間への変更を提案
©(株)白井一級建築士事務所/SHIRAI ARCHITECTS

内部からの検討

トリートメントに集中するためのプライバシー空間

美容トリートメントを受ける際、緊張を和らげ、リラックスした状態で顧客に滞在してもらうことが重要となります。そのためには「閉鎖的でプライバシーを感じる」デザインであることが重要です。一目を気にせず、落ち着いて身を任せることができる環境はエステ空間では大変重要となります。
ビルオーナーの心理からすると、窓がないテナントより窓があって明るいテナントの方が貸しやすいと考えるのが自然です。しかしこうしたエステサロンでは確実に施術スペースはプライバシーが要求されることから、窓が少ないテナントの方が有利に働くことがあります。少し暗そうなテナントで、不動産賃貸借条件が良い場合はチャンスかもしれません。
(もちろん建築基準法とのバランスもありますので、適切にテナントを活用することが重要となります。)

囲まれた安心感を感じる施術スペース
©(株)白井一級建築士事務所/SHIRAI ARCHITECTS
窓をしっかりと隠し、ホテルライクな施術スペースデザイン
©(株)白井一級建築士事務所/SHIRAI ARCHITECTS

一目がつなかない場所であれば思い切って景色を取り込む

不動産立地条件によりますが、人目を気にしないで済む環境であれば思い切って窓際に待合などをデザインし、開放的な環境を用意するのも良いでしょう。非日常的な空間を演出することができれば、「また行こう」と思える顧客が増えることでしょう。

住宅街のT字路に面したテナント立地を活かした窓
©(株)白井一級建築士事務所/SHIRAI ARCHITECTS

景色は窓から取り入れますが、壁に鏡を設けることで反射光も利用してデザインできます。大型のミラーを設置することで部屋の広さを演出することが可能です。明るさと開放感を適切に取り入れ、特別な空間を演出することが望ましいでしょう。
こうした風景を感じられる環境は不動産立地条件を事前に考えておくことがポイントです。

階段を上がって目の前に広がる巨大ミラー越しの風景

まとめ

いくつかのエステ系サロンの差別化を図るための初期検討しておくと良いポイントをご紹介しました。よりオリジナリティのある考えやアイディアをもつことで、デザイナーと話を進めている間に盛り上がってより良い意見が生まれるかもしれません。立地条件から左右されるものが多いため、良い物件探しは重要な事業成功の秘訣でもあります。「おしい!」と思われる箱が見つかったときはチャンスかもしれません。ご相談されているデザイナーや設計者に連絡をとり、意見を伺うとよいでしょう。

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