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『最長片道切符の旅』を旅する day25 ローカル線のひそかな楽しみ

昨夜、深夜にチェックイン、そして今朝は夜明けにチェックアウト。昨夜降りたときに迎車を頼んであったタクシーで森宮野原駅へ。今日も始発だ。これから直江津糸魚川松本経由で名古屋まで。

本日の切符 飯山線・信越・北陸・大糸・篠ノ井・中央西・東海

森宮野原0620(飯山線)0701 戸狩野沢温泉 0706(飯山線)0751 豊野 0824(しなの鉄道)0941 直江津 0947(えちごトキめき鉄道)1025 糸魚川 1050(大糸線)1148 南小谷 1207(大糸線)1415 松本 1419(中央本線)1622 中津川 1639(中央本線)1759 名古屋(新幹線)(東京)

森宮野原ー直江津ー糸魚川ー松本ー名古屋 

森宮野原駅にわずか7時間後に帰ってきた。駅は昨夜も今朝も閉まっていた。ホームに「日本最高積雪地点」の標が立っている。なんと7.8m。このあたり、ふだんでも4、5mの雪があるからなあ。ちなみにこの辺りでは「雪掻き」とは言わない。「雪掘り」という。文字通り「雪」から家を「掘り出す」からだ。しかし、この大雪は一体どこに行ってしまったんだろうか。

日本最高積雪地点

ホームには昨夜乗ってきた列車がそのまま待っている。これが始発となる。この始発に乗るために昨夜あれだけの思いをしてここまでやって来たのだ。

昨日乗ってきた編成であった。きのうと同じ席に座ってみる。留め金が壊れて中ぶらりんになった灰皿に見覚えがあった。

(新潮文庫)

左側に昨日は「信濃川」だった「千曲川」が流れている。県境で川の名前が変わるのだ。実際は飯山に向けて川を遡っているのだが、どんどん平野が広がって来るので「川を下って平野に出たような錯覚を覚える」(新潮文庫)。

りんご園ではスプリンクラーで散水をしていた。豊野しなの鉄道(信越本線)に乗り換える。途中、関山駅では使われなくなったスイッチバックの引き込み線とホームが見えた。

関山駅

並行する道は広くていかにも雪国の高原だ。スキー場がいたるところに見える。

登るにつれて霧が深くなり、山肌のカラマツが乳白色に包まれる。黒姫で15分停車。その間に霧は晴れたが、黒姫山も妙高山も見えない。

(新潮文庫)
(鉄レコ)

0941 直江津着。トンネルばかりの元北陸本線を1025 糸魚川へ。この時間に糸魚川に来たのには訳がある。接続する1050発の大糸線を逃すと、この後2時間ほど接続列車がないのだ。この列車に乗るために昨夜22時過ぎまでかかって森宮野原まで来て今朝の始発に乗ったのだ。40年前の先生の時代でも11時の次は13時台で事情は変わらない(とはいえ、このころは12時発の急行「白馬」があった)。これだけ時刻表が変わらないというのもすごいんじゃないかな。

大糸線

JR西日本大糸線JR東日本南小谷(みなみおたり)までディーゼルの一輌編成である。ぶるっと車体を震わせてディーゼルが発車する。列車は「暴れ川」と言われた姫川沿いにゆっくりと登って行く。

姫川

(ディーゼルは)エンジンをいっぱいにふかす。雲が低く、姫川の谷は小雨にけぶって視界はきかないが、既に両岸は鋭く迫り、片側だけトンネルのような雪覆い、防雪堤、防雪柵、落石覆い、落石柵、そしてトンネルの連続となる。列車はぶるんぶるん唸りながら這うように登って行く。まだ雪はないけれど、雪の季節に乗ってみたいと思う。登るにつれて雲が谷を埋めはじめる。谷底から沸き起こるように雲が縦になっている。山水画そのままの景観である。

(新潮文庫)

景観描写がすばらしい。先生の真骨頂である。この景色、先生が乗った40年前と全く変わっていないだろう。雪の季節にまた乗ってみたいものだ。

海ノ口駅 Mister0124
カモシカ

海ノ口駅の先でひょっこりカモシカが顔を出した。いるんだなあ、この辺には。

白馬駅から登山帰りのおばさま達が沢山乗ってきた。山の名前を次々に数え上げている。車窓から上に見上げるように山が高い。

大糸線から北アルプスを望む 常念岳 kuraken

松川駅から少女とおじいさんが乗ってきた。少女が「初めて電車乗った」と教えてくれた。鉄道の世界へようこそ。

森宮野原ー直江津ー糸魚川ー松本ー名古屋

松本からJR東海の列車に乗る。本日、JR三社目である。長野県との県境を越えた坂下駅から大勢の高校生が乗ってきた。中にはおっという美少女がいる。いるんだな、こういう磨かざる原石が。ローカル線のひそかな楽しみの一つだ。

18時過ぎ、名古屋着。『最長片道切符の旅』はここまで。山本屋の「味噌煮込みうどん」を食べて新幹線に乗る。21時、東京着。今回はここまで。お疲れさまでした。次回は名古屋から紀伊半島をぐるっと回って大阪を目指す。


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