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【歩き遍路】傾向と対策 [準備] 『四国遍路』

辰濃和男 『四国遍路』 岩波新書

著者は元朝日新聞論説委員、天声人語を長く書いてきた人で、2017年の暮、亡くなった。著者は四十代、六十代、七十代と三回歩き遍路をしている。この書はその二回目の記録である。これは遍路に出る前、そして帰って来てからも再読し何度も深く味わった。一読、どうしても(そしてまた)四国に出掛けたくなる、そういう本である。お遍路を始める前、帰って来たあともおすすめしたい珠玉の一冊だ。

岩波新書

四国八十八カ所。金剛杖を手に、千数百キロをひたすら歩く。土地の人から受ける「お接待」が心にしみる。人はなぜ四国をめざすのだろうか。いま、ひとりのお遍路として四国路をたどる著者の胸に去来する問いだ。人びとと出あい、自然の厳しさに打たれつつ歩む巡礼行を、達意の文章で綴る連作エッセイ。

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歩き遍路は四国の自然、山河、その中にある人を引きつけやまないものを探しての旅だ。ゆっくり、静かに遍路道を歩く。歩きながら考える。人の不思議な強さ、やさしさに触れる。透徹した目で四国の自然と人と寺と空海を語る、その明快で味わい深い文章が心地よい。

単なる「お遍路日記」でもなく「お遍路記録帳」でもなく「八十八ヶ所お寺情報」でもない。四国遍路を歩く思索書だ。「四国を歩くこととはなにか」というお遍路の本質を指し示してくれているようである。四国遍路に行きたいと思っている人、行った人、そのどちらにもおすすめ出来るお遍路の教科書のような本である。

辰野和男『四国遍路』岩波新書


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