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ネックスピーカーをやめて骨伝導イヤフォンを使う

骨伝導タイプのイヤフォンが届いた。骨伝導タイプを使うのは初めてである。自転車に乗る際、ブケファラスの音声を聞くために使う。

これまで使ってきたネックスピーカーに比べるとだいぶ小さい。後ろの部分がヘルメットや上着の襟と干渉するのが不快だったが、すぐに慣れて気にならなくなった。

movioという骨伝導イヤフォン

付属品の中に耳栓があった。耳栓をすると再生音が劇的に大きくはっきりと聞こえるようになるのである。自分の指を耳の穴に突っ込んでも同じ効果が得られる。「なるほど、耳を塞ぐと環境音を遮断することになるから、骨伝導で呈示される音が聞きやすくなるということね」と理解した。しかし、音が大きく聞こえるようになる原理は、環境音が遮断されるからではなく、耳の穴を密閉したことによる音響効果のせいなのだそうだ。環境音の遮断が原因だとすれば、静かな室内では耳の穴を塞いでもほとんど効果が無いはずである。実際には静かな場所でも耳を塞げばやはり音が大きく聞こえる。

…と耳栓のことを長々と書いたが、私が骨伝導タイプを選んだ理由は、自転車乗車中に耳を塞がずに済むことなので、付属の耳栓を使うことはないのであった。

骨伝導イヤフォンの実力を試すため、ブロンプトンでラブホ前の河津桜まで行ってみた。

骨伝導イヤフォンを装着しての初ライド

ネックスピーカーの音質はそれほど良いものではなかったが、骨伝導イヤフォンの音質はそれよりも更に悪い。私はこれで美しい音楽を楽しむつもりはなく、ブケファラスの音声と効果音を聞くだけなので、このレベルの音質で十分である。

音質が悪いことに加えて、音量が小さく聞き取りづらいと感じた。これは装着位置が最適でなかったからなのかもしれないが、特に高音が著しく聞きづらかったのには驚いた。ブケファラスは曲がり角が近づくと、探知音と呼ぶ高音の効果音をピコンピコン鳴らす。これがほとんど、あるいは全く聞き取れない。

私が「ラブホ前の河津桜」と呼ぶフォトジェニックなスポット

曲がり角が近づくとピコンピコン鳴るというのはナビ機能の重要な要素であるから、その音が聞こえないというのは困る。その音量を大きくしたい。使用する再生装置に応じて、探知音の音量をユーザが自由に設定出来るようにしたら良いんでは無いか。それができないならこのイヤフォンをやめてネックスピーカーに戻したい。 などと考えながら設定画面をなんとなく開いてあらびっくり。 探知音の音量を自由に設定する機能は既に存在していた。作ったのはもちろん私。過去の私。こういう機能があると良いんじゃ無いの、わぁすごいアイディア!と思ったものがとっくの昔に実装してあった、ということが誰にでもよくあるでしょう?(同意を求める視線)

人間の聴覚系には、音が鳴っている場所を知覚する能力があり、これを音源定位と言う。ネックスピーカーを使うと、再生音は顎の下の辺りに音源定位される。これに対して骨伝導イヤフォンの場合は頭の内部、左右の耳を繋ぐ線の中央付近で音が鳴っているように感じられるのが基本(そうでないこともある。後述)。このような音源定位を頭内定位という。長いことネックスピーカーを使っていたので、自転車に乗っている間に体験する頭内定位はなんだか新鮮だ。ナビ音声が頭の中で再生されると、アシスタントが脳内に実装された様な、サイバーパンクな気分になる。なった。単純な私。

ラブホ前の河津桜の裏

骨伝導イヤフォンは、左右の耳に異なる音を分離して呈示することができる。右スピーカーの音は右耳にのみ聞こえるし、左スピーカーの音は左耳にのみ聞こえる。ネックスピーカーの場合はこのような完全分離が成立しない。左右のスピーカーで再生した音は反対側の耳にもある程度聞こえてしまう。

桜のベンチで骨伝導イヤフォンを試す

音を左右の耳に分離して呈示できるといろいろと都合が良い。はずである。

ブケファラスはナビ中に、目的地の方向を3Dサウンドで呈示する。例えば目的地が左前方にあれば効果音が左前方から聞こえてくる。ただし、3Dサウンドが期待通りに音源定位されるには、適切に計算された音が左右の耳に分離呈示される必要がある。左右の耳への分離呈示が不完全なネックスピーカーで3Dサウンドを聴くと、なんとなく右とかなんとなく左という知覚を得るのが限界であった。では、左右の耳への分離が完全に行える骨伝導イヤフォンでは音源定位がずっと明瞭に行われるのではないか?

と、期待していたのだが、実際には骨伝導イヤフォンにしても、なんとなく〜が分かる程度だったのは残念。3Dサウンドの計算が近似的なものだし、厳密な計算ができていたとしても人間の音源定位はそれほど明瞭なものではないのだから、期待しすぎだったか。それでもやはり、ネックスピーカーよりは明瞭だと思う(という思い込み?)。

左右の耳に音を分離して呈示できるというのは他にもメリットがある。ブケファラスは劇場版マクロスの艦橋みたいに複数の発話が同時にわやわやと行われて、非常に聞き取りが難しい。そこで、発話が重なる場合は、左右のスピーカーに振り分けて再生するようになっている。

ラブホ前で写真撮っていると嫌がられるかもしれない

ネックスピーカーだと片方のスピーカーから出した発話が反対の耳にも聞こえてしまうけれど、骨伝導イヤフォンならば左右にはっきりと分離するので、聞き取りが少しだけしやすくなった。まあそれでも、同時に行われた複数の発話を聞き分けるタスクが人間の脳には難しすぎるという事実は変わらないけど。

いままで使っていたネックスピーカーは、無音の状態から音を鳴らすときに、ビープ音を鳴らす仕様になっていた。 アプリのボタンに効果音が付いていると、アプリを操作する間ずっと追加のビープ音がポポポポ鳴って鬱陶しいことこの上もない。 嫌な仕様だな!

これを解決するためにブケファラスには、何も入っていない無音のサウンドファイル「沈黙の音」を再生するオプションが付いている。 沈黙の音が再生されていても無音なので全く気にならないが、ネックスピーカーは音が鳴り続けている状態と同様の処理を行うことになり、追加のビープ音を鳴らさない。 ただしアプリは沈黙の音を再生し続けるという余計な処理負荷を負う。

今回入手した骨伝導イヤフォン movioではビープ音が鳴らない。沈黙の音もオフにできる。うれしい。 しかしよく聞いてみると、無音の状態から何かを鳴らすときに、音がふわっと立ち上がるようになっている気がする。 はっきりしないのでもしかしたら勘違いかもしれないが。ブケファラスはポタリング中に色々な音を鳴らしては止めを繰り返すし、いろいろなことを喋っては黙りを繰り返す。 そのたびに音がふわっと立ち上がるイフェクトが掛かるのは鬱陶しいことこの上もない。 嫌な仕様だな!

もしかしたら骨伝導イヤフォンを使ったときに聞き取りづらいと感じた理由の一つは、この「ふわっとイフェクト」なのかもしれない。 試しに沈黙の音をオンにしてみたところ、普通に再生されるようになった。ように感じる。もともとの現象が不明瞭なのでちょっと自信が無いが。なんでこんな仕様にするんだろう。 多分、聞けば「なるほどね」と言いたくなるような合理的な理由があるのだろうとは思う。

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