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「土木学会インフラメンテナンス実践研究論文集」と「インフラメンテナンス分野の表彰制度」について。

土木学会事務局です。

近年、社会インフラの高経年化が進んでいます。当たり前のように存在しているけれど普段はあまり意識されず、でも日常的に、そして直接・間接に使っている社会インフラの多くは高度経済成長期以降に整備されたもので、今後、建設から50年以上経過する施設が加速度的に増加する見込みになっています。そのため、様々なインフラについて、今後はインフラの老朽化による社会経済活動や日常生活への支障など、さまざまな不具合が懸念されます。

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出典:令和3年版 国土交通白書

さらに社会情勢が変化していくなかで、この国でこれからも安全で豊かな生活を享受するためには、対応する行政や管理者、専門家だけでなく、市民の方々も含め、多くの方が知恵を絞り、日常を支え、守る「社会インフラ」をメンテナンスして、マネジメントしていく必要があると土木学会では考えております。

社会インフラのメンテナンスを更に進めていくために、今般土木学会では、「土木学会インフラメンテナンス実践研究論文集」「インフラメンテナンス分野の表彰制度」を創設しました。今回はその経緯と、論文集・表彰制度を簡単に紹介いたします。

創設の経緯

土木学会は令和3年6月8日に、「今、そして未来に欠かせないインフラメンテナンス、 直面する困難を乗り越えるための処方箋」を公表しました。

声明では、日本のインフラとメンテナンスに関する現状認識(課題の整理)を踏まえ、インフラメンテナンスの変革のための基本的考え方を示すとともに、インフラメンテナンスの変革に向けて今後進めるべき具体的方策として、国を挙げて取り組むこと、土木学会が取り組むべきことを提示しました。詳細は上記のnote記事をご覧いただければと思いますが、土木学会が取り組むべき具体的方策の1つに「インフラメンテナンスの優れた取組みの顕彰」として、以下の内容を挙げています。

土木学会には、これまで構造物の設計や施工に関する高度な技術に対し、論文集に論文を掲載したり、学会賞などを授与する仕組みはあったが、様々な工夫により地域のインフラを長持ちさせたり、市民との協働につなげるような取組みについては、評価する仕組みが存在しなかった。そこで、土木学会は、インフラメンテナンスシンポジウムを定期的に開催し、並行してインフラメンテナンスに関する論文集を編集・発刊することで、メンテナンスに関する地域の好例や新技術の導入、国際展開などに関する情報発信を行うとともに、優れた実践例に対し、賞を授与する仕組みを構築する。

今般、これを具体化した「土木学会インフラメンテナンス実践研究論文集」「インフラメンテナンス分野の表彰制度」がスタートすることになりましたので、ご案内いたします。

なお、2022年3月14日~15日にインフラメンテナンス・シンポジウム(第1回)(運営主体:インフラメンテナンス総合委員会アクティビティ部会)を開催し、そこで論文内容を講演したり受賞式を行う予定です。

土木学会インフラメンテナンス実践研究論文集(第1巻)

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インフラのメンテナンスを効率的、効果的に実践していくため、実施主体や実施方法のしくみを工夫した実践例、新技術を導入した好事例が数多く報告されています。これらの取組みは、メンテナンスの手法やしくみを新たに提案したり、既存のものを改善したりすることで、これまで達成できなかった効果を創出している点で、工学上、実用上の価値が高いものです。これらの事例について、一連のプロセスを客観的事実としてまとめるとともに、得られた成果の適正な評価と今後の課題や展望の示唆を論じたものを学術論文として広く公表することは、インフラメンテナンスを実践した好事例が国内外に展開される上できわめて有意義なものと考えます。

そこで、本論文集では、以下のカテゴリーにおける取り組み事例や実践例を対象として、論文を募集します。

A.担い手と体制
組織、市民参加(協働)、人材育成・教育、普及・啓発、倫理、など
B.技術とプロジェクト
技術開発、実験・試行、適用・導入、設計、リニューアル・更新、異分野の協働、など
C.マネジメント
メンテナンスシステム、ビジネスモデル、政策・法制度、計画、経済効果、調達・契約方式、合意形成、減災・防災、BCP、アセットマネジメント、環境、国際展開など

また対象となるインフラは、橋梁、トンネル・地下構造物(抗土圧構造物)、走行路(舗装、線路)、交通施設(道路、鉄道、港湾、空港、など)、河川・砂防、海岸・海洋、上・下水道、エネルギー・通信、農業水利施設、など多岐にわたります。

学術研究論文だけでなく、実用性、実効性の面でメンテナンスの品質向上や効率化、社会的認知度の向上等に寄与する論文も歓迎します。投稿要領等、詳細については以下のページをご参照ください。
論文投稿の締切は、2021年9月末日です。

日常を支える土木インフラを守る全国各地のとりくみについて、多くの投稿をお待ちしております。

インフラメンテナンス分野の表彰制度(第1回)

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この表彰制度では、インフラメンテナンスに関連する優れたプロジェクト(事業)、人や団体(技術者、オペレーター、管理者等)、個別の要素技術(点検・診断、施工方法、材料等)および論文(実践的研究)を評価し、「インフラメンテナンス賞」として表彰いたします。

賞の構成は、つぎの通りです。

インフラメンテナンスプロジェクト賞

インフラメンテナンスにより地域のインフラの機能維持・向上に顕著な貢献をなし、地域社会の社会・経済・生活の改善に寄与したと認められるプロジェクト(マネジメント、ビジネスモデル、制度設計等に関連する総合的なプロジェクトを含む)を対象とします。なお、プロジェクトの⾏われた時期は問わないものとしていますので、最新の取り組みでなくともOKです。

インフラメンテナンスチャレンジ賞

地域のインフラメンテナンスに寄与した、点検・診断、設計、施工・マネジメント等の個別または組合せ技術を駆使した取り組みや、創意工夫によりインフラメンテナンスに対する管理者、市⺠等ステークホルダーの意識の向上が認められた、市⺠協働、⼈材育成等を含む取り組みを対象としています。

インフラメンテナンスエキスパート賞、インフラメンテナンスマイスター賞

独自の技能・技術を駆使することによりインフラメンテナンスの発展に貢献があった、もしくは、⻑年にわたる事業実施、研究または技術開発等の活動を通してインフラメンテナンスの発展に貢献があった個⼈または団体を対象としています。

インフラメンテナンス実践研究論⽂賞

インフラメンテナンス実践研究論文集に投稿された論文から、優秀な論文を表彰いたします。

また、各賞の選考過程において、特に表彰するべきとされた事案については、インフラメンテナンス特別賞を授与することも予定しております。

土木学会の会員資格の有無によらず、個人または団体を受賞対象としており、応募については自薦・他薦を問いません。詳細については、以下のページをご参照ください。応募の締切は2021年10月29日です。

この表彰制度を通じて、インフラメンテナンスに焦点をあて、それに携わる関係者のインセンティブを高めるとともに、広く一般の方々にもインフラメンテナンスに関心を持って頂くきっかけになればと考えております。

その他の取り組みーインフラ健康診断

「インフラ健康診断」は、日本のインフラの状態を評価し、その状況を判りやすく一般の方にお伝えするための取り組みです。

インフラの状態を、人の健康と同様に捉え、「健康診断」として「現在の状態(=健康度)」「維持あるいは回復するための日常の行動(=維持管理体制)」から評価を行っています。

「健康度」は「インフラの現在の健康状態」を表し、「維持管理体制」が現在の取り組みがこのまま進んだときの「インフラの将来の健康状態」を表しています。内容については、以下のnote記事をご覧下さい。

その他の取り組み-インフラパートナー制度

2021年4月よりスタートした『インフラパートナー制度』は、国土やインフラ保全、地域づくり、人材育成などを目指し活動している市民グループ等を「パートナー」として、土木学会がパートナーと連携・協力し、インフラ関連の活動の活性化、また、地域のインフラの質的向上を図る取組みです。地域に根差したより密接な『連携』という観点から、インフラに関わる市民・団体とパートナーシップ(合意書)を結び、土木学会各支部を交え、連携を図っています。2021年8月時点で、16の団体とパートナーシップを締結しています。

インフラメンテナンス総合委員会

土木学会のインフラメンテナンスに関する調査研究活動は、「インフラメンテナンス総合委員会」で「知の体系化」「インフラ健康診断」「新技術の適用」等の取り組みを継続的に進めています。活動の詳細は、以下のページをご参照ください。


国内有数の工学系団体である土木学会は、「土木工学の進歩および土木事業の発達ならびに土木技術者の資質向上を図り、もって学術文化の進展と社会の発展に寄与する」ことを目指し、さまざまな活動を展開しています。 http://www.jsce.or.jp/