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令和2年度土木学会全国大会 in中部 オンライン 研究討論会一覧

土木学会事務局です。

こちらの記事で令和2年度の全国大会についてご紹介していますが、ここでは土木学会の委員会が主催する「研究討論会」について、それぞれのタイトルと主題をご紹介します。専門用語がたくさんですが無料で視聴できますので、気になるものがあれば覗いてみてください。
各討論会の出演者はそれぞれのリンク先をご参照ください。

(1)気候変動への備えとしての損害保険そして社会資本整備(水工学委員会

地球温暖化により災害が頻発しており,降水・洪水への適応策や水循環や水環境を含めた気候変動の影響評価,適応策の提案が求められている.一方で,急激に発生規模や頻度が変化している災害への備えとして,損害保険のあり方を含めた議論が必要であることも指摘されている.そのため,水工学委員会の立場だけでなく,国土交通省や損害保険関連団体間での議論を通じて,水災リスクと損害保険に関する情報発信が必要であると考える.本討論会においては,水災リスクと損害保険のために議論・研究しておくべき「環境の変化に伴う技術,計画論とは何なのか?」を,水工学と複数のステークホルダーの観点から議論するものである.

(2) グリーンとグレーの対話と相互理解,その先のハイブリッドインフラに向けて(複合構造委員会

持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のため,2015年9月の国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され,その中では持続可能な開発目標(SDGs)が掲げられている。グレーインフラに関しても例外でなく,構造工学分野においてもSDGsの達成に向けてより一層の取組みが必要である。このような中,グリーンインフラとグレーインフラを融合したグリーングレーハイブリッドインフラというコンセプト提案されている。しかしながら,これらのコンセプトを如何に具現化するかについて,これまでグレーインフラ側の技術者の関与が薄く,議論が十分になされていなかった。様々なステークホルダーが協働する土木構造物において,グリーングレーハイブリッドインフラの実現に向けて,グリーンとグレーが如何に相互理解して合意形成を図るかは重要な課題である。グリーンインフラとグレーインフラはそれぞれ評価すべき指標が異なることから,最適解を得るには多面的視点が不可欠である。
これらの背景から,複合構造委員会では,2018年度にグリーンインフラとグレーインフラの融合に関する研究小委員会(H107)が1年間活動し,2020年度からグリーングレーハイブリッドインフラの評価に関する研究小委員会(H220)が活動を開始している。
本研究討論会では,上記の背景を鑑み,様々なステークホルダーの視点からグリーングレーハイブリッドインフラの実現に向けて,その課題や将来展望を議論する。まず,過年度に設置された「グリーンインフラとグレーインフラの融合に関する研究小委員会(H107)」の成果を報告する。次に,グリーンインフラ,グレーインフラ側の技術者,さらには実務に近い官民双方の技術者によるハイブリッドインフラへの期待と課題について話題提供いただく。その後,話題提供者や討論会参加者を交えた討論を行い,各ステークホルダーの観点からのグリーングレーハイブリッドインフラの実現に向けた展望や障害について議論いただく。これらの議論の成果はH107の後続委員会「グリーングレーハイブリッドインフラの評価に関する研究小委員会(H220)」の活動に活かしたいと考えている。

(3)木材利用による気候変動緩和への貢献 ~この10年を振り返る~(木材工学委員会

日本の森林資源は,現在極めて豊富な状態にあり,森林を適切に管理しながら利活用すべき時期に来ています.伐採した木を木材製品として長期間使うことは,炭素循環の点で人間社会の中に新たな森を築くことと同じ意味を持ち,気候変動緩和に寄与します.土木材料に木材を利用する技術開発や環境影響の評価を行っている木材工学委員会では,6年前の研究討論会にて,「木材利用による低炭素化社会の実現-土『木』の貢献-」と題して,各分野の木材利用の状況について報告するとともに,課題について議論しました.本討論会では,その内容を振り返るとともに, 最近10年間の木材利用の状況について報告し,木材利用推進に向けた方策を議論します.

(4)既設構造物の性能評価ガイドライン(案)の提示 ~構造物の診断技術の高度化を目指して~(コンクリート委員会

既設構造物の外観目視に基づくグレーディング評価は,対策の要否判断に主眼がおかれ,構造性能の詳細な把握は困難である.今後,より効果的な対策を実施していくためには,グレーディング評価を構造性能にリンクさせるとともに,健全性をより正確かつ詳細に把握可能な高度な評価法の構築が急務である.重点研究課題「既設構造物の健全性評価法の高度化および体系化に関する研究」では,土木学会の各種示方書[維持管理編]に記載の健全性評価法を統合することで,構造物の管理者に向けた健全性評価ガイドライン(案)の提示を目指して活動してきた.本討論会では,ガイドライン(案)の骨子を紹介し,健全性評価の高度化に向けて議論を行う.

(5)今後の海外インフラ展開に向けた変革のあり方(今後の海外インフラ展開に向けた変革のあり方検討会

わが国のインフラ産業にとってビジネスの場を海外に展開することは、当該産業界の将来性の確保のみならず国益上も重要な課題である。そして海外展開を推進するためには、我々の「強み」や「オリジナリティ」を発揮すると共に、自らの「弱点」を認識し、多様なビジネス形態や競争社会に対応できるように変革しなければならない。このような問題意識のもと、会長特別委員会として「今後の海外インフラ展開に向けた変革のあり方検討会」を組織し、わが国インフラ産業が世界で活躍するための課題、方策、今後のあり方について、産官学で検討している。今回はこれまでの議論のポイントを報告するとともに、代表メンバーによる公開討論会を実施する。

(6) 環境システム研究と地域イノベーション(環境システム委員会

「環境」を人および人の生活する社会との関連のもとで「システム」として捉える。これが、環境システム研究で最も大切にする基本姿勢である。一方、地域イノベーションとは、新しいアイデアから社会的意義のある新たな価値を創造し、より良い地域・産業・社会の形成につながる変革を意味する。本研究討論会では、いくつかの「地域」に着目した具体的な事例報告を行い、環境システム研究が果たす役割や今後の課題について討論を行う。地域エネルギー事業を活用したまちづくり(福島県新地町)、グリーンインフラを用いた洪水管理(タイ)、産業を支える水道インフラ(愛知県西三河地域)の話題提供、自治体や民間企業の討論参加を予定している。

(7) JSCE2020-2024を強力に推進するために(企画委員会

土木学会では、土木学会設立100 周年を機に「社会と土木の100 年ビジョン」を制定し、土木学会、土木技術者が100 年先の目指すべき社会像を見据え、今から行動すべきことを示した。2014 年11 月に制定されたJSCE2015 では、このビジョンに基づき、20~30 年後に達成すべき目標として「中期重点目標」を示すとともに、5 年間の活動目標として10 の重点課題を定め、精力的な活動を展開してきた。2020年4月には、新たな5か年計画である「JSCE2020-2024~地域・世代・価値をつなぎ、未来社会を創造する~」を始動させた。今後、JSCE2020-2024を強力に推進していくために、土木学会が何をすべきか、JSCE2020プロジェクトのリーダーからの話題提供を踏まえ、学会内外からの意見、若手技術者の意見も集めながら議論を行う。

(8) 日本経済と土木(土木計画学研究委員会

社会資本整備に代表される公共事業のマクロ経済への影響を改めて議論し,特に,失われた20年以降のデフレ状況下におけるフロー効果・ストック効果の役割,さらに,税制・国債発行などの財政政策の関係から,より実践的な視点と、MMT等の最新の経済学の視点から,日本経済における土木の役割を改めて討議する.

(9) 岩盤力学におけるICT/AIの活用(岩盤力学委員会

岩盤プロジェクト分野でのICT及びAI適用事例はまだ少ない。より合理的な岩盤構造物の構築や維持管理の実現に向けこれらの有効活用が期待される。このため、現状における活用事例を確認したうえで、今後活用が期待される技術、活用に向けた課題についてディスカッションし、今後の有効活用に向けた礎とする。ディスカッションテーマは、「現状技術の紹介」、「実用化に向けた課題」、「今後の展望について」、の3点。

(10)パンデミック特別検討会

世界中がパンデミックを経験したこの新たな未来を「ポストパンデミック時代」と位置づけ、COVID-19災禍を踏まえた社会とインフラに関して現状認識及び今後の方向性について幅広い視点で討論する。特に、従来型のインフラを水平的に展開することに留まらず、既存の制約を乗り越え、新技術をも駆使して、ポストパンデミック時代のインフラの進化と転換―すなわち「垂直展開」を進めることが重要であると考え、積極的なパラダイムシフトの推進と「防疫」社会の具体的実現に向けた方策を模索する。

(11) 建設ロボットの開発、導入、活用促進のための課題と対策~コロナ時代の建設施工の在り方を考える~(建設用ロボット委員会

“Withコロナ・Afterコロナ”社会における建設施工の在り方の一つの方向性として、少ない人数で、あるいは遠隔地からの施工の可能性もある自動化機械や建設ロボットの導入への機運が高まりつつある。一方、一般工事へ建設ロボットの導入促進のためには、技術的、経済的、体制的な課題も多い。例えば、建設ロボット導入・使用時の安全に対する法規制の在り方、次世代無線通信技術など建設ロボットの共通基盤的な技術の共有化、オープンイノベーションを醸成する体制構築など、産学官連携での検討が望まれる。本討論会では、建設ロボットの開発から運用までのプロセスにおける共通な課題・問題点を抽出して、建設ロボットの活用を促進できる方策を議論する。

(12)防災・土木分野におけるAI・データサイエンス(地震工学委員会 AI・IoT技術の地震工学への有効活用検討小委員会

AI・データサイエンス技術は近年に飛躍的な性能の向上を遂げており,土木分野の中でも少子高齢化が引き起こす社会的課題に対する解決のキー技術としての期待が高まっている.一方で,その技術発展の速さは格差の更なる助長や人間の役割の喪失といった事象につながる危険性も指摘されており,そのような社会の崩壊を引き起こさないためには,目指すべき社会ビジョンの共有と,その達成に向けた技術のハンドリングが重要であると言える.

本討論会では, AI技術の現状や見通しを防災・土木分野への応用の視点から概観した上で,同技術の活用によって実現の期待できる都市の未来像や我々に示される課題を産官学の専門家を交えて議論する.個々の分野を越えた共通の課題や広い社会像を取り扱えるよう,主催委員会に加えて各部門の委員会からの協力の下で企画・実施を予定している.

(13)ICTを活用した河川・港湾維持管理システムの展望-i-Construction, CIMの維持管理への活用-(土木情報学委員会

ICTの導入(i-Construction等)が急速に進む国土交通省の将来の動向を見据え、河川構造物や港湾構造物等について維持管理段階におけるCIMモデルのあり方を議論し、維持管理データの保管や、活用手法の検討を行ってきた。
本討論会は、維持管理で活用できる新しい調査・検査技術やシステム技術を紹介するとともに、産(設計者、施工者)、官(事業発注者)、学(技術開発者)の立場から、維持管理システム合理化の方向性について、パネルディスカッション形式にて提案を行う。

(14)インフラメンテナンス、次のステージへ ~自治体、市民、土木学会、それぞれの役割は~(インフラメンテナンス総合委員会

少子高齢化が進む将来のわが国でも、安全で安心な豊かな国民生活と安定した社会経済を保証するためには、インフラの機能を常に維持しておくことは不可欠であり、そのためのメンテナンスは国家の最重要課題である。インフラメンテナンスの高度化と実装は地方自治体等において強く望まれており、そのための情報発信や人材育成は土木学会にとって緊急に取り組むべき重要な課題の1つである。2020年6月、学会内のインフラメンテナンスに関わる委員会等を統合し、学会としての方向性を力強く打ち出していくために、インフラメンテナンス総合委員会が設置された。本研究討論会では、インフラメンテナンスを効率的に進める上での本質的な課題がどこにあり、それを解決するために土木学会が果たすべき役割について議論する。

(15) 社会インフラメンテナンスに関わる新技術の開発と活用拡大を考える- 取組みと提言(インフラメンテナンス総合委員会

社会インフラの崩壊に伴う重大リスクの顕在化や維持管理費の増大が社会問題化して久しい。厳しい財政状況の下、予防保全による事故防止、ライフサイクルコストの最小化を実現するためには、新しい技術の開発とそれを活用する社会制度が不可欠であるが、多くの有用な技術開発成果が実用段階にきているにもかかわらず新技術の社会実装が不十分な現状にあることが危惧される。このような認識から、インフラメンテナンス総合委員会・新技術適用推進小委員会では、新技術適用推進のための制度構築とその基幹となる、性能規定に基づく発注仕様制度の具現化方策を提言した。本討論会では、この提言を基に、新技術開発とその技術開発成果の活用拡大方策を議論する。


国内有数の工学系団体である土木学会は、「土木工学の進歩および土木事業の発達ならびに土木技術者の資質向上を図り、もって学術文化の進展と社会の発展に寄与する」ことを目指し、さまざまな活動を展開しています。 http://www.jsce.or.jp/