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ネオユニヴァースシナリオから読み解く、「ウマ娘とは何か」。

先日、ウマ娘でネオユニヴァースが育成ウマ娘で実装された。見た目が好みなので貯めていた石を解放したのですが、ウマ娘界に激震が走るとんでもないシナリオだったので熱の冷めぬうちに記事を書こうと思います。
※本記事にはネオユニヴァースの育成シナリオのネタバレが含まれています。

これまでのウマ娘考察「ウマソウル」について

これまでのウマ娘についておさらいしましょう。
これまでウマ娘の考察にあった用語として「ウマソウル」というものがあります。ウマ娘は別世界(つまり我々のいる世界)の魂を受け継いで走る、というのが公式設定としてゲームやアニメのOPで語られています。ですのでウマ娘たちは現実の競走馬と大まかに同じような道筋を辿ることになります。その魂をウマソウルと一部で呼ばれています。
さて、ウマ娘の中にはウマソウルの影響を色濃く受けたり、その存在を示唆するようなシナリオがあります。それらのシナリオによってウマソウルというものの考察が進んできました。
まず、ウマソウルの強制力を一番強く受けているのがアニメやメインストーリー。レース結果や怪我など、ほぼ史実通りに描かれることが多いです。
しかし当然、育成シナリオではプレイヤーがトレーナーとして関わることもあり、その結末が変わるのは勿論、出るレースやその結果、展開まで含めれば全てが史実とは違うことになります。

では、何故そのようなことが起こりうるのか?
「プレイヤーが介入するから」とまず最初は思われていましたが、充分な答えではないことが判明しました。恐らく最初に分かったのはメインストーリー第5章、スズカの秋天の最後のシーンでしょう。史実では怪我をする場面でそれを乗り越えた。
これこそがウマソウルの力。つまりウマソウルは「その馬だけでなく、関係者やファンの想いなどが受け継がれる」ことによって、IF展開が起こり得る、というのがこれまでの考察でした。

ネオユニヴァースシナリオにて判明した衝撃の事実

その後もウマソウルの存在を示唆するような場面は多くありましたが、ネオユニヴァースのシナリオでは、ウマソウルとは別の「ウマ娘世界の仕組み」ともいえる事実が新たに判明しました。

さて、ネオユニヴァースは非常に賢い馬で「弱点は人の言葉が話せないことだけ」と言わしめたほど。ウマ娘においても賢すぎて普通の会話ができない、まるで宇宙人のようなキャラとなっています。
とはいえ宇宙人な訳もなく、ややコミュニケーションに難があるだけの普通のウマ娘……と、キャラストーリーを読んだ時点ではそういう結論でした。
しかし育成シナリオの最中、ネオユニヴァースは先の展開を次々に言い当てます。予知能力……とまではいかないまでも、高い知能から未来を“予測”することができるのではないかと仮説を立てるが……ネオユニヴァースの返答は「ネガティブ(否定)」。“観測”をしているのだという。予測と観測では意味が大きく異なる。一体何を観測しているのかとトレーナーが問う。
ネオユニヴァースの返答は

──『別          宇         宙アナザーバース』。

別宇宙。つまりは我々の住む現実世界だ。
それだけではなく、ウマ娘世界の別宇宙──史実に近い結末を辿るウマ娘世界をも見ている(正確には他にも色んな宇宙が見えているがこの二つを特に選んでみている)。
これがゲーム内で明かされ、なんとなくの感覚などによる匂わせではなくハッキリと見え、しかもトレーナーにもそれを共有するというのは……サイゲさん、いきなり飛ばしすぎちゃいます?

そしてネオユニヴァースとトレーナーは、別宇宙の歴史を回避するために動く。その歴史とは、まず天皇賞春で大敗して怪我が発覚しての引退、そしてゼンノロブロイが孤立する歴史。
史実においては春天で大敗した後、レース中に怪我をしたことが発覚して引退。ゼンノロブロイは秋古馬三冠をとって一瞬跳ねるが、ゲーム内で“大王”と”特異点”と呼ばれる、キングカメハメハとディープインパクトが台頭したことによって、その偉業が目立たなくなってしまうことが表されている。

別宇宙のネオユニヴァースは怪我を「伝えられなかった」。
一つの宇宙ではコミュニケーションエラーで、一つ宇宙ではそもそも人の言葉が話せなかったから。
でも”この宇宙”でのネオユニヴァースは違う。彼女の言葉は難解だが中身のないことを言っているのではない。トレーナーという理解者がいれば齟齬なく言葉を伝えられる。
かつて「弱点は人の言葉が話せないこと」と言われた彼だったが、この世界のネオユニヴァースにもはや”弱点はない”。

こうして春天を乗り越え、ゼンノロブロイのライバルとして台頭することでゼンノロブロイは”大王”と”特異点”に呑まれることもなくなった。この二人も、ロブロイを阻む存在ではないと判明した。

そしてネオユニヴァースふと、「なんのためにこの宇宙に生まれたのか」と思案する。最初は自分とロブロイを救うためと考えていたが、結果的にこの宇宙のロブロイは自分がいなくても奮起すると気づいたからだ。
そうしてようやく理解する。『あなた』の宇宙に来た理由……否、私たちの宇宙が生まれた理由に。
”戦い”は理由ではない。競走や継承のために生まれた宇宙ではない。ただ『あなたと過ごしたかっただけ』なのだ。
かつてそう、別宇宙の”騎手”がこう言った。ネオユニヴァースは『自分の一番愛していた存在』だと。そんな人と、ただ一緒にいたかった。それは決して叶わぬ願いのはずだった。
でも、その願いを叶えようと動く者がいた。その願いを叶えようとすることを許可する者がいた。そしてきっともう一度逢いたいと願う者がいて、『わたし』も『あなた』を愛していると伝えたい者がいた……少なくとも、そんな宇宙がどこかにあったはずだ。

ウマ娘世界とは、ただの異世界、ただのパラレルワールドではない。
勝利ではなく、”一緒に勝利を目指すこと”を目指すため、”愛”によって作られているそんな世界だったのだ。

個人的な解釈というか感想というか

めちゃくちゃ感動したので思わず記事にしてしまったが、これではただの要約である。
ただ、考察をすることもない。これまでのウマソウルシナリオと違って、匂わせるとかですらなく答え合わせみたいなシナリオだからだ。なのでせめて、もう少し感想だけでも。

振り返ってみると、これまでのウマ娘も愛によって史実を変えるストーリーというか、無念のまま終わった競走馬とその関係者やファンが、これで少しでも救われてほしいと、全くの無関係ながら思う。というか二次創作というのは得てして愛によって作られているものだ。ただここまで愛をこめて、そして愛を語ってくれる二次創作はウマ娘だけではないだろうか。
そして『ウマ娘世界は”愛”によって作られている』という世界観を語るのがネオユニヴァースであるというのも素晴らしいポイントだ。
ミルコ・デムーロ騎手が語った、「弱点は人の言葉が話せないことだけ」と「自分の最も愛した馬」という二つのセリフだけでここまで壮大な世界観を語ることができるのかと。ただ世界観を語るだけでなく、デムーロ騎手への返歌という側面もあり、ただ世界観を語る装置で終わらないあたりも流石という他ない。

まとめ

勝負の世界では”もしも”を語ることは推奨されない。勝ったものにも負けたものにも失礼だからだ。少なくとも外からグダグダいうものではないのは確かにわかる。
それでももしもを語る”新宇宙ネオユニヴァース”を創るなら、誰もが幸せな結末を迎える別宇宙が重なり合う、そんな世界であって欲しいと改めて思った。

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