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日々進化して、”強い”ライダーへ。荒川晃大、成長の先に見据える姿とは。【ライダーインタビュー#2】

深緑のバイクに、鮮やかな緑のヘルメット。サーキットを軽やかに、時に激しく走る姿を、気づいたら目で追ってしまう。そんな荒川晃大の背中を見ながら、彼の将来へ期待を寄せずにいられるだろうか。



ーー まだ20歳*。高校1年生から全日本ロードレースに参戦してたということは、クラスに全日本ライダーがいる環境…レアですね。

レースの話は全然しなかったですけどね笑
レースの関係で平日休むこともあったけど、申請をきちんとすれば公欠を認めてもらえて、成績には関係なかったですし。
友達には、バイク乗ってくるわ〜って言って、聞かれて初めて結果の話もちょっとする、みたいな感じでした。
高校の友達とは今も仲良いですが、なんだか恥ずかしくて、バイクの話やめよう〜ってよく言ってましたね。

ーー バイクに乗り始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

自分でレースに出るくらいバイクが好きな父親の影響です。
乗り始めたのは3歳くらいで、物心ついた時にはすでにバイクに乗っていました。

小さい頃を思い返すと、とにかく怒られるのが嫌だ!って思いながらバイクに乗っていたような気がします。
練習=怒られる日、みたいなイメージだったから、練習もあんまり好きじゃなくて。
でもバイクに乗るのは楽しいし、サーキットに行けば友達がいて楽しいし、良い結果を出せば怒られないしみんなも喜んでくれるし、
バイクとか、レースが好きだって気持ちは今も変わらないですね。

幼少期@ご本人提供

*20歳: 取材日(2023年7月3日)時点


「レースに勝てないとくるしい。本当にくるしいです。」

ーー なるほど。私の印象だと、荒川選手はレース結果で表情が結構変わる気が...

一度悔しさが顔に出過ぎて怒られたこともあります...よくないことですよね。
今はもう昔みたいに怒られることはなくて、チームのみんなも「次頑張ろう」って言ってくれますけど、
やっぱり結果が出ないと自分を納得させることができないんですよね。
結果が出ないってことは「タイムが出ない」「レースで勝てない」ってこととイコールだから。

ーー 勝てないと、つまらないですか?

つまらないという気持ちもちょっとあるけど....くるしい。本当にくるしいです。
そういう時は、周りの人と比べて自分って本当にダメだな...と思ったりもします。

ーー 荒川選手が「自分ってダメだな」と凹んでる姿、あまり想像できないです。

全然ありますね。
トレーニングも体作りもしているし、チャリトレも好きだけど、結果が出なかったらその努力を認められないんですよね。
頑張ったなとは思うけど、意味ないよなって。
自分の努力を認めるためにも、レースの内容と結果は重要です。

自分のためもそうだけど、応援してくれる人のために結果を出したい気持ちもあります。
例えば去年、ST600クラス*でチャンピオンをとった2022年は、本当に皆に恩返しがしたくて頑張っていました。
2019年にST600クラスに出るとなった時、自分とチームの目標では3年でチャンピオンをとるって決めていたんです。
でも、結局3年目もあまり良い結果が残せずに3位で終わってしまって。
その時も本当に凹んだけど、もう1年頑張れる環境を用意してもらえて、サポートしてくれる人も応援してくれる人もいて、本当にありがたかったし、絶対結果残して恩返しがしたかった。
その分結果を残さなければというプレッシャーもすごかったけど、周りのことを考えて頑張ったらシーズンチャンピオンになることができました。

レースが好きっていう気持ちはずっと変わらないけど、やっぱり1人でできるスポーツじゃないから。
レースを続けていく上で、
自分のためにも、応援してくれる人のためにも結果を求めるってことはずっと大事にしています。

ーー 今までで、納得のいったレースはいつでしょう?

2021年のSUGO**か、2022年のSUGOのレース2ですね。
どちらも自分のレースができた実感があって、納得できる走りでした。

ーー 今もまだYoutubeでその日のレースが見れるので、ぜひ皆さんにもご覧いただきたいですね!

*ST600クラス: 全日本ロードレース選手権で開催されているクラスの1つ。若手の登竜門的立ち位置。荒川晃大は2019〜2022年まで出場した。
**SUGO:スポーツランドSUGO。宮城県にあるサーキット。記事内で触れているレースは①2021年|https://www.youtube.com/watch?v=ylaw3PAd3mA (4:55:22~)
②2022年レース2|https://www.youtube.com/watch?v=sbbslY930mc



「速いライダーはもちろん、”強い”ライダーになりたい」

ーー 荒川選手といえば、緑のイメージを持っている人が多いんじゃないでしょうか。

MOTO BUM HONDAのチームカラーの緑ですね。
父親がMOTO BUMでバイクを買っていた関係で、チームの方にはずっとお世話になっています。

全日本ロードレース選手権にMOTO BUM HONDAとして出たのは2019年が初めてですが、
小さい時に走っていたミニバイクコースでも同じチーム名を名乗らせてもらっていました。


ーー そんな小さい時から見ていると、チームの方からしたらもう息子みたいなものですね。

どうでしょう、ちょっと気になるから聞いてみたいです笑

MOTO BUM HONDAではライダーとメカニックの人が二人三脚でバイクを調整していきます。
常にライダーとバイクとメカニックが寄り添ってやっていく方法で、僕にとってはすごくやりやすいですね。
今、僕のバイクを見てくれているのはチーム監督の岡部さんで、
「こう走ってるのにこうなっちゃう」とか「ここをどうにかしたい」という僕の感覚に対して、答えを出してくれたり、選択肢を出してくれたりしてくれます。
岡部さんは教えるのも上手いし伝えるのも上手くて、本当にすごいと思います。

ーー 教えるという点では、最近荒川選手もライディングスクールの講師になることがありますよね。

そうですね。
自分の経験やスキルを考え直すきっかけにもなりましたし、
相手がどう感じているかとか、どういう感覚でバイクに乗っているかとかをすごく考えるようになりました。
自分が無意識にやっていたことだったり、逆に無意識にやらないようにしていることを、皆さんの走りから気付かされることも多いです。
僕はあまり言葉で伝えるのが上手じゃないかもしれないですが、バイクを楽しんでもらえたらいいなと思いながら参加しています。

2023.11.13. 鈴鹿で1位に @Team Étoile 提供


ーー ライダーとしての目標を、お聞かせください。

2019年にST600クラスで全日本に挑戦すると決めた時から、僕の目標は世界、SBK*です。
そのためにやるべきことはこれからも変わらず、常にトップを目指すことだと思います。

今の自分のライダーとして弱い部分って、タイムは出るけどレースで勝ちきれないとか、自分に有利なレースができる状況を作れないとか、そういうところ。
これからはそういう部分を克服して、速いライダーはもちろん強いライダーになりたいです。

ーー 荒川選手にとって”強い”ライダーとはどんなライダーでしょうか?

いちばん簡単に言えば、バトルの勝率ですね。
レースを観てる人から、バトルになった時に前に出るライダーだって思われたいし、実際にそういう姿をたくさん見せたいです。
そのためには、技術ももちろん必要だけどメンタルも重要だと思っています。
どんなに技術があっても、気持ちで負けてたら絶対勝てないので。

ーー なるほど。荒川選手のバトル、今後も注目ですね!

ーー 最後にファンの方へメッセージをお願いします。

結果にこだわり続けて、強いライダーに進化します!
これからも僕の成長と、進化を楽しんで欲しいです。
応援よろしくお願いします!

ーー ありがとうございました!

(取材日:2023年7月3日)
ヘッダー写真提供@Team Étoile

*SBK: スーパーバイク選手権の略。全日本のST1000・ST600クラスと同様に、公道走行可能なバイクをレース仕様に改造し、レースを行う。他のメジャーな世界選手権・MotoGPは、完全にレース専用で開発されたマシンを使用。


荒川晃大|Kohta Arakawa
2002年生まれ、東京都出身。2023年度はMOTO BUM HONDAより全日本ロードレース選手権ST1000クラスに参戦。
X(旧ツイッター):@kohta_54  
https://twitter.com/kohta_54
インスタグラム:@kohta_54 
https://www.instagram.com/kohta_54/


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