演者(タレント)とオタクの関係とは

はじめに

筆者は2014年末頃のラブライブ!がきっかけで声優アイドル業界の沼から抜け出せなくなりつつあるドルもどきオタクです。
最近周りのオタクたちの喜怒哀楽が激しいので、演者(タレント)とオタクの間に発生するいくつかのワードに対し独自解釈を語り、そのうえで演者とオタクの関係について語りたいと思いました。
ちなみに前回の『オタクのあるべき姿とは』で自身の背景を書いたのでよければ見ていってください。

認知について

例文として「〇ヶ月ぶりに✕✕ちゃんに会ったら認知切れてた〜」というオタクのツイートがあるとします。普通に読解力がある人なら文脈から単語の意味を推測できると思いますが「認知切れてた」は「忘れられてた」と同義です。
では「〇〇です!って名乗ったら✕✕ちゃんに認知されてた!」はどうでしょうか。本人の申告によれば認知されているということになります。
しかし、あなたが日本マクドナルドの社員だったとして「フジパンの山田です!」と名乗る人に出会ったらどう答えるでしょうか?(※日本マクドナルドのバンズの大半はフジパン製です)
もちろん「いつもお世話になっております!」ですよね。たとえ目の前にいる山田さんの顔も名前も知らなかったとしても。…認知ってどういう意味なんでしょうか。

関係値について

実は限界オタクたちが“認知”という言葉を使うことは稀です。何故なら上記の通り「フジパンの山田です!」で「いつもお世話になっております」と返ってきたら認知“あり”判定だし、「こんにちは〜」だけで「〇〇さん!この間のアレありがとうございました!」と返ってきても同じ認知“あり”判定で、逆に「初めまして〜」と返ってきたら認知“なし”という、本来は幅があるはずなのに“あり”か“なし”で判定するデジタルな概念だからです。
限界オタクたちは認知の代わりに“関係値”という言葉を使います。
“関係値”というワードをGoogle等で検索すると概ね“信頼関係”を指していることがわかります。
では演者とオタクにおける信頼関係とはどういうことでしょうか。

ファンサとレスについて

“ファンサ”や“レス”という言葉を聞いたことはありますか?「✕✕ちゃんはファンサがエグい」「✕✕ちゃんからレスもらった〜」とかそういうやつです。
“ファンサ”はファンサービスの略で、“レス”はレスポンスの略です。
これだけではちょっと意味がわからないと思うのですが、例えば「イベント中に笑顔で手を振ってもらった」はファンサに該当すると思います。
レスに関しては人によって定義が曖昧で「指ハートしたら返ってきた」が「レスだ」と言う人がいます。レスポンスという言葉の意味を考えればこれは妥当でしょう。しかし「(関係)値がないレスはレスではなくファンサ」と言う人もいます。いずれにせよレスは概ねファンサの上位互換である用語なのでしょう。
特殊な例として、自分から何かしたわけでもないのに自分に関するポーズ(例えばハンドルネームが“マリオ”の人に指でMを作る等)を演者がしてきた場合に、それを“個レス”と呼ぶ人もいます。
上記の個レスを貰う条件は、まず相手に顔と名前を認知されている必要があります。そして認知された上で好感度も高いから個レスが貰えるわけです。つまりこの認知+好感度が先ほど話題に出した“関係値”に該当するのではないでしょうか。

優遇パターン

演者からファンサして貰えるオタクとそうでないオタクは何が違うのだろうと思ったことはありませんか?もちろん運によるものではあるのですが、ある程度傾向があると思います。先に言っておきますがこの話はオカルトです。同じオカルトであるチケット抽選の傾向に例えて、いくつかのパターンを紹介します。

金蔓優遇
シリアルをたくさん購入してたくさん申し込むと当選するパターン。公式グッズをたくさん身に着けている人や、イベント出席率が高い(かつ前方にいる)人が演者から優しくしてもらえる。とてもわかりやすい関係性だと思います。一番公平ですが、ゴリゴリお金が減っていくので大抵のオタクは疲弊します。そして度が過ぎると反転アンチ化することが多いのがこの金蔓優遇パターンだと思います。そもそもこの単純な拝金システムが良いと思うなら演者のオタクなんか辞めてお金さえ払えば好みの女を抱ける風俗にでも行った方が幸福度が高いと思います。

性別優遇
男性向けコンテンツにありがちですが、女性名義だと当選しやすい、あるいは前方の座席になりやすい場合があります。同様に、女性(同性)にばかりファンサやレスを飛ばす演者というのも少なからずいるのです。異性ばかりの環境で同性を見つけると嬉しいのでそれはそう。

古参優遇
例えばチケットサイトやファンクラブの登録期間が長ければ抽選に当選しやすい場合があります。これと同様に、活動当初から応援してくれている人に優しい演者もいます。毎日一緒にいる秘書の名前は覚えられなくても、ほとんど会わない同期のことは覚えている社長みたいなものですね。

新規優遇
古参優遇の逆です。新しいアカウントばかり当選する場合があります。新規客を増やしたいのでしょう。チケットならアカウントを作り直せばいいですが、演者がこれをすると客が定着しないでしょう。でも、少なからずそういう演者がいます。いなくなる人以上に新たに来る人が増えれば良いだけですから。

単番優遇
チケットの申込みを1枚にした場合に当選しやすいパターンです。空いているところに入れるのだからそれはそう。演者が優しくしてくれるのは人間関係が存在しない彼らを哀れんでいるだけかもしれませんね。

連番優遇
チケット抽選においては同じ公演を2枚以上購入すると優遇される通称連番優遇という概念があります。同様に、知り合いをたくさん連れて来る人に優しい演者もいると思います。単純に連れてきた分お金になりますし、集客が良ければ次の仕事に繋がりますから、その中心人物は必要不可欠な存在になるでしょう。

単推し優遇
これをチケット抽選に例えることができるのか?と思ったかもしれませんが、複数公演のうち1公演だけ申し込んだ場合です。例えば東京公演と大阪公演があって、両方申し込んだ人は大阪公演しか当たらないみたいな話はよくあると思います。東京公演に行きたいなら大阪に浮気せず東京だけ申し込めってことです。演者から見れば自分だけにリソースを割いてくれる人が誠実で素敵に見えるのでしょう。一方で演者は自分“だけ”に何かしてくれたりはしません。酷い話です。

複数(箱)推し優遇
昼夜両部優遇がそれです。連番優遇と同じで単純にお金になりますから不人気コンテンツではよくあることでしょう。
では箱推し(グループ全体を推している人)を優遇する演者なんているのかですが、これは「優遇しないと自分にリソースを割いてもらえなくなる」という不安から優遇してしまうんじゃないかと思います。逆に単推しは自分から離れないと思ってるんですかね。知らんけど。

真剣(含:全肯定/レス乞食)優遇
そんなチケット抽選はないだろと思うかもしれませんがあります。Twitter抽選()なんかはほぼこれです。自分のことをしっかり見てくれて何でも褒めてくれるオタクくんが大好きな運営や演者は少なからずいますが、自分に都合の良い人だけを周りに置いて成長はあるのでしょうか。あと目立ったもん勝ちの現場は民度が…

平等
ラブライブ!等でたまにあるパターンで、どれだけシリアルを積んでも1人1回分の抽選にしかならない通称“縦積み無効”です。新参古参や使った金額に関係なく接してくれる演者が良いか悪いかは人によって感じ方が違いますが、リソースを割くメリットがないので真剣な人からいなくなっていくでしょう。

真剣とは

説明する前に既に“真剣”という単語を2回使ってしまいましたが、Googleで検索して出てきた2つ目の「いい加減や遊び半分でなく本気なこと」そのままです。でも“真剣”は人によって定義が異なるのでいくつか例を紹介します。どれが真剣かは自分の中で決めて、なおかつ他人の真剣は否定しないでください。

・グッズをたくさん集める、痛バを作る
通称グッズ厨。一言で言わせていただきますと経済力だけで解決します。自己完結しているので素晴らしい。痛バ(演者やキャラの缶バッジセット一面に並べた痛いバッグ)を作るには経済力だけでなくセンスが試されます。

・イベントにたくさん行く
イベントに行くことが生き甲斐の通称イベンター(本来イベンターはイベントを開催する人のことで、明らかに誤用。最初に言い出した奴は間違いなくバカ)。お金と時間に加え、体力も必要です。抽選を突破する頭脳や気力も必要でしょう。しかし、世の中には公表されていないイベント(大企業の社内イベントなど)もあるので、全通(全てのイベントに通うこと)にこだわったり、それを誇ったりする奴は現実が見えていないバカです。行きたいイベントに行ったら結果的に全通になるよう心掛けましょう。

・番組にお便りをたくさん送る
通称ハガキ職人と呼ばれる彼らの目的は様々。純粋に演者に聞きたいことを書いている人もいれば、演者から名前を呼ばれるのが快感で何度もお便りを出している人もいます。何回も読まれたことを誇っている人もいますが、それは演者に好かれているのではなく、あくまで番組の構成作家から好かれているだけということを忘れてはいけません。もちろん、良い文章は書いているはずなのでそれは誇っても良いと思いますが。

・プレゼントを贈る、花を贈る
演者へのプレゼントは、お節介で贈っている親戚のおばさんのような人もいれば、演者に気に入られようと必死なガチ恋くんもいます。事務所によっては手紙以外は受け取らなかったり、宅急便は受け取らなかったり、高価な物は受け取らなかったりするので、ルールを確認して贈りましょう。花(フラワースタンド)に関しても贈る理由が様々で、前述の通り演者に気に入られたいガチ恋くんもいれば、関係各所にその演者の存在(規模感≒財力)をアピールしたくて贈る人もいます。いずれにせよ自己満足の世界なので、プレゼントやフラスタを出してない人にマウントを取ったり、逆にプレゼントやフラスタを出している人を必要以上に叩いたりするのはやめましょう。

・ラジオやインタビュー記事を全て把握する
出身や好きな食べ物はもちろん、身長や足のサイズ、どのインタビューでどんなことを言ったかまで彼らは記憶しています。彼ら曰く「自分の知らない推しがいるのが嫌」らしいです。ある意味で一番“コンテンツ”として楽しんでいる層でしょう。

演者のスタンス

演者とオタクの関係を拗らせる原因のほとんどはこの“演者のスタンス”にあると思っています。ぱっと見でわかるいくつかのパターンを紹介したいと思います。

・過干渉タイプ(地下アイドルタイプ)
接近イベント(お渡し会など)で「この間〇〇してるってツイートしてたよね〜」「バイト大変そうだね〜」等とファン個人をきちんと見てそれを相手に伝える無駄に距離が近いタイプ。ファンから貰ったプレゼントを説明なくSNSにアップするなどの(オタク界隈における)私信を送るのもこのタイプ。ガチ恋営業とも言います。承認欲求モンスターはこれにハマるし、実は演者側も承認欲求モンスターであることが多いです。このタイプが好きなオタクたちは言い訳のように「ファンサも仕事のうち」と言いますが、それなら“それ”が本職の地下アイドルにでも行った方が幸せだと思います。もちろん地下アイドルのスタンスも様々ですが。

・無干渉タイプ(プロフェッショナルタイプ)
いつまでも「はじめまして」みたいな面で対応してくるタイプ。このタイプはそもそも最初期以外に接近イベントがない傾向なので事実永遠にはじめましてです。演者はファン個人の動向に興味がないし、それでも何かしてくれていることに気がついたら「皆さんからの応援はお仕事で返していけたらと思います」みたいなことを言います。そして、それで納得しているファンが付くというか、そういう人しか残れません。演者そのもののパフォーマンスレベルが高くないと演者も生き残れないのでド健全。

・微干渉タイプ(地上〜天空アイドルタイプ)
演者とファンの間に絶対的な壁があるタイプ。地下アイドルタイプとの違いは“演者がどうしたいか”が行動指針となっていること。“ファンが喜ぶから”行動するのではなく、“自分が良いと思ったから(あるいは事務所方針で)”何かしらの行動をします。つまり“ファンのため”の行動は基本的にしません。故に、ファンの声は届かないか、届いていても反映されにくいです。自分の中で答えが決まっているのに、ファンの声も聞いたふりをしなければ成り立たない中途半端な実力の演者とも言えます。

演者とオタクの「合う/合わない」とは

ここまで前提条件を語ってきましたがついに本題です。ですが、演者とオタクの話をする前に、ラーメンの例を考えてみましょう。

あっさり醤油が好きな人もいれば、濃厚豚骨が好きな人もいます。麺に関しても細麺派や太麺派、ストレートや縮れ麺、バリカタや柔らかめ等ありますし、トッピングもチャーシューや味玉、海苔、ワカメ、ナルト、メンマ、様々な選択肢があります。

特別美味しかったり、逆に特別不味かったりしなければ記憶は薄れていくものです。結構好きでもたまにしか行かない店なら、何という名前の店だったか思い出せない時もあるでしょう。たまたま来た店で一口目を食べた時に「あっ、これ…」と、実は昔食べていたことを思い出すかもしれないし、思い出さないかもしれません。逆に、特に印象がなくても頻繁に食べていればだんだん味を覚えて、少しの変化でも気がつくようになったりもします。

ラーメン屋はお客さんの好みに合わせて細麺や中麺を提供することもできるし、店のこだわりで太麺しか提供しないことだってできます。胡椒を置くのも置かないのも店側が選べます。そして細麺が食べたいお客さんに太麺しか出せなかったら「美味しい」と言ってもらえなくても当然です。何も変えずにその店を続けるのも、細麺を提供するのも、はたまた太麺が求められている別の場所に移転するのも個人の自由です。

本題である演者とオタクの関係に戻しますが、パフォーマンスは演者からファン(観客)に提供されるものです。しかし、これは一方的に受け取るだけの関係ではなく、ファンは応援を演者に提供します。応援という行為をラーメンに例えるなら、オタクはラーメン屋で、演者はお客さんということになります。
演者とオタクの「合う/合わない」というのは、豚骨ラーメンが食べたい演者に豚骨ラーメンを提供することが「合う」、醤油ラーメンを提供することが「合わない」みたいな簡単な概念なんです。

しかし、ラーメン屋のオーダーと違って演者はどんな応援が欲しいか言いませんし、オタクが聞いても本当の意味で正解は言ってくれないでしょう。そして、ラーメン屋と違って演者側もオタクを選ぶことはできないのです。だから演者とオタクの「合わない」はオタクが演者のオーダーを理解し折れるまで発生し続けるのです。

「合う/合わない」は簡単な概念とは言いましたが、豚骨ラーメン1つを例に挙げてもその内容は単純ではないことがわかると思います。背脂多めが良いとか、細麺が良いとか、チャーシューは薄めが良いとか、紅生姜はいらないとか、それぞれ詳細な好みがあるでしょうし、唐突に塩ラーメンが好きになるかもしれません。
全部のイベントに来てくれるオタクが良いと思う演者もいれば、全部来るオタクはキモいと思う演者もいるでしょうし、手紙が嬉しいという演者もいれば、手紙より金品という演者もいるでしょう。自分の応援スタンスを演者の要求に合わせても良いし、自分の応援スタンスを喜んでくれる演者を探すのも良いと思います。オタク三原則(オタク3ない運動とも言う)も・や・し「求めない・病まない・斜に構えない」を胸に、素敵なオタクライフを歩んでください。

















ところで、最近は「推しの幸せを祝えない奴は本当のファンじゃない」という意味不明な話が一般的になってきました。
でも考えてみてください。せっかく何年もかけて至高のラーメンを作ったのに、お客さんが何の前触れもなくいきなり焼肉を始めたら嫌でしょう?
唐突な「結婚のご報告」ってそれと同じなんです。
「推しの幸せを祝えない奴は本当のファンじゃない」なんて言える自称ファンの有象無象たちはラーメンを作ったことなくて、コンビニで買ってきたカップ麺にお湯を入れて提供してラーメン屋面してると思うんですよね。だから客が何をしても「祝うべき」なんて無責任に言えるのです。
いきなり焼肉を始めても、叙々苑とかA5ランク黒毛和牛とか何かしらのブランド牛なら素直に負けを認められるでしょう。でも何の肩書きもない一般男性なんてスーパーで買ってきた肉と同じです。もちろんスーパーで買ってきた肉でも良い肉である可能性はあると思います。でも何の説明もないスーパーの肉に、何年もかけて作った至高のラーメンが否定されるなんて認めたくないでしょう?だから最低限、どんな相手なのか説明するのが礼儀だと思います。
僕が伝えたかったのはこれだけです。

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