文体模写の模写日記:太宰治編②
申し上げます。申し上げます。私はバイトが辞めたくなってしまいました。このままでは得意のおパターゴルフすらもままなりません。私はロッカーの扉を出鱈目に開けました。
これは埃のかぶった靴。
これは埃のかぶったハンガー。
これは何かしらに使われたビニール袋。
うわっはっは、と私はおかしくなりました。これは真っ当な人間がする嫌がらせではありません。
私は賭けに出て、その汚らしいおっさんが履いた可能性のある小汚い革靴を手に取って見ました。かなり汚れていました。
靴を片付けるには、まず袋を探さなければなりません。私に立ちはだかったこの敢然たる事実は私をゴミ袋が入ったダンボールへと向かわせました。
ガムテープが途中で切れないように剥がし、慎重に箱を開け、ビニール袋を取り出す。そうれ、俺ならできる。
自分で自分を鼓舞しないがら、私はおっさんが履いた小汚い靴を袋に詰め込みました。
私に靴を捨てる資格があるのでしょうか。きっとあるのです。あるはずなのです。
「怒らないでくれ」
そう呟きながら、私はおっさんの小汚い靴を葬り去りました。
惨憺たるロッカーの整理をした後で、一缶のジョージアコーヒーをすする。
コーヒーから立ち上る湯気が顔に当たって
あったかいのさ。
どうにか、なる。
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