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「無いなら作るしかない」JP-MIRAI youth 学生レポーター企画 第5回:外国にルーツを持つ若者グループCOLORS


 「学生レポーターによるインタビュー」企画第5回では、静岡県浜松市で外国にルーツを持つ子供・若者支援の活動を行っている団体 COLORS にお話を伺いました!

2月20日に代表の宮城ユキミさんにオンラインインタビューを実施しました。

カラーズインタビュー

※今までの記事(第1回~第4回)はこちらから→JP-MIRAI youth|note

COLORS(Communicate with Others to Learn Other Roots (Routs) and Stories )は、静岡県浜松市で活動する、外国にルーツのある若者のグループです。2014年から様々な活動を続け、現在9人のコアメンバーが運営しています。全員が、南米やフィリピンにルーツを持つメンバーで構成されています。
COLORSのウェブサイトはこちらをご覧ください。→ https://www.facebook.com/hamamatsucolors/

― COLORSの取り組みについて教えてください

Q:COLORSを設立したきっかけを教えてください

もともと浜松国際交流協会(HICE)が主催するイベントに、私を含む外国にルーツのある若者が参加していました。そのメンバーで、自分たちと同じように外国につながる子どもたちにロールモデルを示す活動を継続して行いたいという話になり、COLORSが結成されました。

Q:現在COLORSでは、どのような活動を行っていますか?

「出張COLORS」という活動では、主に浜松市近辺の定時制高校に行き、外国にルーツのある学生を対象にした、進路に関する講演を行っています。

また近年では、小学校や中学校の依頼を受けて講演イベントを開くこともあります。外国籍が半分以上を占める学校で講演をすることが多いので、「(自分は)途中から日本に来て、日本語がわからなかったけど、頑張って今こういう将来がある」という話をします。日本人の生徒も聞いてくれているので、自分たちの夢をあきらめない大切さ、頑張ることの大切さを伝えるようにしています。コロナ禍以降は、実際に学校に訪問することが難しくなりましたが、現在でも学生にビデオメッセージなどを送っています。


その他にも、多文化共生に取り組む地域からの依頼に応じて私たちの取り組み事例を紹介したり、新卒採用をする地元企業に呼び掛けて、外国にルーツを持つ学生と採用担当とが一対一で話し合える「就職応援セミナー」を主催したりしています。


Q:COLORSはどのような課題の解決を目指していますか?

COLORSのメンバーは全員が外国にルーツのある当事者です。そのため、自分たちが困っていた同様の課題を解決するというのが活動の基本的なスタイルです。

例えば「出張COLORS」は、外国にルーツのある子どもたちが将来を想像しにくいという課題に対して、自分たちのロールモデルを発信したいという思いから始まりました。浜松国際交流協会と相談して学校での講演を始め、最初は1校から始まった活動が2校3校と徐々に広がっていきました。最近では、過去にCOLORSの講演を聞いて自分のルーツの活かし方を知ったという若者が、大学生になってメンバーに加入してくれることもあります。


講演の際には、これまでの経験を美化せずに伝えることを大切にしています。今の私たちの姿は、子どもたちにとってキラキラしているように見えるかもしれません。しかし、その過程には様々な苦労や挫折がありました。そうした経験も必ず話すようにしています。

「就職応援セミナー」を開催したきっかけも、自分自身の就職活動でした。10歳で来日した私の場合、留学生とも一般的な日本の学生とも異なる背景を持ちます。周りと同じように就活をしていても埋もれてしまい、自分の個性をアピールするチャンスが限られていると感じました。そこで、「無いなら作るしかない」と考え、自分たちで企業を呼び、直接アピールする機会を設けました。その活動を引き継いで、COLORSの就職応援セミナーは始まりました。

Q:2014年の設立以来、活動内容に変化はありましたか?

うれしいことに近年はグローバル人材を求める企業が増えてきたため、大卒で外国にルーツを持つ人達を採用する選択肢が増えてきました。そのため、COLORSとして支援をする必要が薄れてきており、高校生以下の人へ向けた活動に集中して取り組めるようになりました。


最近は浜松国際交流協会と協力しながら、高校生向けの就職応援セミナーを実施しています。仕事の探し方や正社員と派遣社員の違いといった、働くうえで大切な情報を発信するとともに、優秀な外国ルーツの高校生がたくさんいることを企業に知ってもらって、積極的に採用してもらうのが目的です。ブラジルと日本の就職活動は全く違うので、日本では面接にスーツを着ていくといった基本的なことから伝えるようにしています。


―宮城様ご自身について教えてください


Q:どのような経緯で日本に来ましたか?

もともと、3年くらい日本にいて、またブラジルに帰るつもりで両親と来ました。それが3年、5年と経ち、気づけば10年以上住んでいます。周りにも、最初は短期滞在のつもりだったけれど日本に住みつづけることになった人が多いと感じます。

Q:宮城さんは10歳の時に来日されたと伺いましたが、日本の生活にはどのような困難がありましたか?

当初は日本語が全く話せませんでした。日本に友達もいなくて、辛いことが多かったです。小学6年生として日本の小学校に編入しましたが、はじめは学校のルールやマナーに戸惑いました。ブラジルでは、メッシュやピアスをして学校に行くことが普通でしたし、学校に持っていくカバンも自由でした。でも、日本の学校に合わせるために、黒髪にして、ピアスを外してマニキュアを取って、皆と同じランドセル、ヘルメットを着けて…「何でこんなことしないといけないんだろう」という気持ちになりました。

Q:宮城さんが辛いときにサポートしてくれる人はいましたか?

はい。これまでの人生を振り返ったとき、自分のことを信じて支えてくれる人が必ず周りにいました。

例えば、 来日してすぐに、日本語を覚えるために国際教室に入ったのですが、その時の先生が日本語や心のサポートをしてくれました。中学3年生の時の担任の先生は、進路に悩む私に公立高校への進学を勧めてくれました。ポルトガル語をしっかり勉強したいという思いが強かった私は、当初ブラジル人学校への進学を考えていました。しかし、先生がポルトガル語も学べる日本の高校を紹介してくれたことで、私はその高校に進学し、日本語とポルトガル語の両言語を身につけることができました。高校の時も先生が大学進学を勧めてくれました。このように、大事な場面で「あなたならきっとできる」と信じて背中を押してくれる人がいたことが大きかったです。

Q:幼少期に来日した子どもは母語の能力を失いやすいといわれていますが、宮城さんはどのようにポルトガル語の能力を保持してきたのでしょうか?

家族とは基本的にポルトガル語で話すほか、ブラジルにいる親戚とはポルトガル語で連絡を取るので、それも学習のモチベーションになっていました。また、ネット上で母国の記事を読むなど、自分でも意識的に学習を続けました。
グローバル人材には英語以外の言語能力も求められる時代になっているので、今振り返ってみると、ポルトガル語の勉強を続けてきてよかったなと思います。

Q:宮城さんは、ご自身のルーツをどのように捉えていますか?
 
実は中学2年生の頃、アイデンティティ・クライシスを経験しました。「自分は何人なのだろう」と考えこみ、「日本人になりきろう」と思ったこともありました。しかし、あるとき学校の友達に、何気なく「ポルトガル語話せるの?すごいね!」と言われて、そのときにポルトガル語が話せることはポジティブなことなんだ、と気づきました。自分のルーツについて周りが「すごいね」と肯定的にとらえてくれたこの経験が自信につながり、やがて自分のルーツを肯定的に話せるようになりました。


今同じ悩みを抱えている子どもたちにも、母語をポジティブに捉えてもらえるように、そして母語を学んでいきたいと思ってもらえるように活動をしていきたいと思っています。


―外国にルーツを持つ子どもや若者について教えてください

Q:日本語習得・教科学習・他の子どもたちとのコミュニケーションなど、外国にルーツを持つ子どもたちが抱える課題は多岐にわたると思いますが、特にどの点に課題を感じていますか?

最近、日本生まれの子どもが増え、母語も日本語もどちらも十分に使えない「ダブル・リミテッド」といわれるような子どもが多くなっていると感じます。日常会話レベルの日本語に支障がない中学1年生でも、問題を解かせてみると簡単な漢字が書けない、九九ができない、簡単な四則演算ができない、分数ができない、というような問題を抱えていたりします。そういう子はずっと日本の学校に通ってきた子たちです。支援している側からすると、「学校の先生は何してきたのかな」とどうしても思ってしまいます。

また、来日時の年齢によって、教育上の課題に違いがあります。ある程度母国で教育を受けてから来日した場合、日本語のサポートをすれば日本の勉強になんとかついていける子どもも多いです。一方で、幼少期から日本の学校に通っている子どもは、授業がわからないままやり過ごしてきた子が多い印象です。


Q:外国にルーツを持つ子どもや若者がより生きやすい社会を実現するために、日本社会に求められていることは何だと思いますか?

外国にルーツを持つ子どもたちの中には、親御さんが日本の学校の仕組みを知る機会がないために、進路に関する相談ができない、学校になじめずいじめられてしまう、などの様々な問題を抱え、サポートを必要としている子が多くいます。この子たちが日本でより良い生活を送れるように、周囲の人たちが進学や生活、心の問題において支えていくことが必要です。

また、日本社会には、もっと柔軟になって受け入れる体制が必要です。国籍の問題のみではなく、性別や障害の有無などを含め、広い意味での多文化共生が求められていると思います。集団の中で周りと同じでなければいけないという固定観念をもたず、「みんなそれぞれ個性があって、少し違ったって良いんじゃない?」という考えを、小さいころから学ぶ必要があります。そして、自分が「違う」と思ったことは主張すること、それを周りは嘲笑わないことも多文化共生の実現のために大切だと思います。


―若者へのメッセージ  

Q:多文化共生に興味のある若者へのメッセージをください!

一つ目に、「自分が海外に行ったらどういう気持ちになるんだろう」と想像して行動してみてください。そして二つ目に、決して支援対象者のことを「かわいそう」と思わないでほしいです支援してあげているというよりも、日本を良くするために一緒に活動しているという思いを持って取り組んでほしいです。日本でもグローバル人材という言葉がよく使われるようになりましたが、皆さんが今支援している人達が日本にもっといたいと思ってくれたら、それは日本にとってもすごく意味があることだと思っています。

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学生レポーターの気づき・学び


日本がいかに画一的であるのか、そしてそのような日本社会で外国につながりのある子どもたちがいかに困難を抱えているのかを痛感しました。「髪型からカバンから、なんで全部同じにしないといけないんだろう」という小学校の時の宮城さんの気持ちを聞き、周りと同じにすることを私自身が当たり前だと思っていたことに気づき、驚きました。生まれてから日本で生活してきた私には、皆同じにすることが当たり前だと考え、自分でも気づかないうちに、自分の「普通」を誰かに押し付けてしまっているのかもしれません。どれほど気を付けていたとしても、何らかの固定観念を持ちそれを他人にも当てはめてしまうことがあると思います。そういう時は、広い意味での多文化共生社会の実現に向けて活動なさっている宮城さんの力強い言葉を思い出し、私もyouthメンバーとして、その実現に少しでも貢献できるように取り組んでいきたいと思います。 (相山) 

宮城さんは自分の経験や思いを明朗にわかりやすく話してくださり、ご自身の経験に裏打ちされたエネルギーがひしひしと伝わりました。特に印象的だったコメントは二つあります。一つ目は「『自分が海外に行ったらどういう気持ちになるんだろう』と考えてみてほしい」というものです。二つ目は、その直後の「(海外にルーツのある子どもたちを)決して『かわいそう』って思わないでほしい」というコメントです。どちらも思い当たる節があり、正直少しひやりとしました。最も身近なところでは、住んでいる寮で自分がしている留学生サポートのやり方です。ただ日本語を英語に翻訳して「あげる」とか、日本人として「お世話してあげる」という発想は自分の中でもしっくり来ていませんでした。せっかく留学に来ていて同じ寮に住んでいるのだからお互いもっと楽しく生活できるような工夫をする、と思った方が確かに納得できますし、自分ももっと試行錯誤したいと思えます。国籍やエスニシティの領域にかかわらず、今後自分の中でマジョリティ・マイノリティ意識が頭をもたげるたびに今回のインタビューのことを想起すると思います。(前川)

外国にルーツを持つ子どもが抱える家庭、学校、就職での様々な課題について、ご自身の経験や活動を通しての知見からご説明頂きました。言語的な障壁だけでなく、アイデンティティの揺れ動き、他人からの視線、日本の学校に通うことへの理解など課題が山積みであることを再認識しました。同時に、外国人材受入の歴史が長い浜松でも苦労された話を聞き、多文化共生の難しさを痛感しています。
宮城さんが繰り返されていた言葉、「無いなら作るしかない」。学生のころから当事者として課題に取り組み、積極的に活動されてきた宮城さんのこの言葉は、Youth会員としても一学生としても襟を正す思いです。良くも悪くも学生として、若手として、フラットな立場からの自由な発想と活力を生かして活動することの大切さに気付かせていただきました。学生や若手だからこそ果たせる役割を自覚し、今後の活動につなげたい、そう考えています。 (遠藤)


「今までの自分たちの経験を美化せずに伝えることを大切にしている」という言葉が印象的でした。中学生のころ、「自分は何人なのだろう」とアイデンティティ・クライシスに陥ったという宮城さん。いま同様の問題を抱えている外国ルーツの子どもたちにとって、共有の悩みを経験した先輩の存在はどれほど心強いことでしょうか。COLORSの活動を通じて、自分のルーツを肯定的にとらえられる子どもたちが増えていってほしいと願っています。
そしてJP-MIRAI youthとしても、「それぞれ個性があっていいんじゃない」と、誰もがありのままの姿を認め合えるような社会の実現に向けて、これからもメッセージを発信していきたいと思います。 (持田)

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JP-MIRAI youthとは
JP-MIRAI youthは、責任ある外国人労働者受け入れプラットフォーム(https://jp-mirai.org/jp/)のユース組織です。2021年8月から始動し、外国人労働者に関する活動・研究をしている、または関心を持つ方のための学びや交流の場を提供しています。



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