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日本映画界における性加害に関するステートメント

 2022年3月10日発売の週刊文春に掲載の、俳優・映画監督である榊英雄氏による一連の性加害について、一般社団法人Japanese Film Projectは断じて許すべきでない卑劣な行為であるということをここに発言し、強く非難します。
 まず、被害に遭われた方々、ならびに日本中の数多くの性被害サバイバーの方々が、この事実の露呈により再び大きく傷つき、苦しまれていることに心を寄せ、二次加害や心ない言葉から守られることを切に願っています。
 氏が謝罪として発言した「映画に罪はございません」。これは彼が口にしていい言葉でしょうか。共に映画を作ったスタッフや観客が口にしこそすれ、作られた作品を死に追いやった張本人が免罪符として口にできる言葉ではありません。
 この件は氏の個人的な問題だと捉える人もいるでしょう。しかし、日本映画界という非常に狭い業界、フリーランスのスタッフが下支えし、誰もが誰かと繋がり合っているような特殊な世界では、声をあげるのは容易ではないうえ、声を上げる窓口すらありません。これまでにも多くの人が辛い経験を胸にしまって「それでも映画を作りたいから」と仕事をしてきました。
 そして、この「それでも映画を作りたいから」という気持ちの恩恵によって、数多くの多様な日本映画は作られ続けているのです。

 3月14日現在、「映画製作事業の健全なる発展」を目的としている映画製作配給大手四社(東宝・松竹・東映・KADOKAWA)からなる日本映画製作者連盟からは、この件について一切の発言が確認されていません。今こそ、多くのフリーランスのスタッフの恩恵にあやかっている大手会社は、「映画界のスタッフ一人一人が、あらゆる局面で守られ、安心して働くことができる職場を我々が用意する」という強い決意を打ち出す時ではないでしょうか。
 また、フリーランスのスタッフたちを束ねる存在である日本映像職能連合からも、この件についての見解を示すべきだとも考えます。

 映画界において強い力を持つ大手映画会社が、この件を個人の問題であると軽視するのではなく、業界全体の構造に関わる問題と認識し、具体的な改善策を打ち出さなければ、今後も同様の事件が起こり、辛く苦しい思いをする人を生み出し続けるでしょう。
 私たちは、榊氏への強い非難とともに、日本映画界全体が性加害・パワハラ問題について迅速かつ厳格な対応を行うことを、ここに強く要請します。

2022年3月14日
一般社団法人Japanese Film Project(文責:近藤香南子)


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