映画『ルックバック』を観た(ネタバレ含む)

映画を観終わった直後の率直な感想としては、原作を読んだ時と同じで、「漫画家じゃないからそんなに分からないな」という感想

漫画を実際に書いて作品を完成させたことがない以上、簡単に共感などとは言えない。

そんな中でも、映像化されたことでより印象に残ったシーンがあった。

1つ目は、京本にファンだと言われたあとの藤野の帰り道。

表現者として、誰かに好きだと言われることの喜び、しかも自分が敵わないと思っていた人に言われたことの喜びが、言葉が無くとも動きでひしひしと伝わってきた。

原作でも十分に伝わり印象的なシーンだったが、映像で長く描かれることでより感情が乗り、観ていて泣いてしまった。(横の人も泣いてた)

2つ目は、「じゃあ藤野ちゃんはなんで描いてるの?」という問いの後の、藤野と京本の思い出の回想シーン。

原作より手厚く表現されており、これまで藤野と京本が漫画を描くことを通して喜びや充実感を味わったシーンが描写される。

漫画を描くという作業のほとんどは地味で変わり映えのない作業であるから、喜びや充実感を感じられるようなシーンはごくわずかなのかもしれない。

それでもそんなかけがえない時間があるからこそ漫画を描き続けているのだと自分は解釈した。
(言語化することで具体を削ぎ落としてチープな印象になってしまうが)


そして最後のエンドロール。
原作では表示とラストページに書かれた藤野が漫画を描く背中。
映画ではエンドロールでずっと映し出される中、景色が移ろい時が進んでいく。

漫画を描くという作業が、長時間ペンを動かし続ける地味で大変な作業だということがより伝わってきた。

そして、そうやって作られた作品を普段安価に享受できているんだなと感じた。


総じて描かれていたのは、表現者の苦悩と喜び。

自分はサラリーマンで本業の表現者には遠く及ばないが、このnoteなどで誰か一人でも刺さるようなものが作れたら、これ以上ない喜びになるだろうと思った。

そしてそんな時のために世の表現者たちは表現を続けているのだと思った。


僕の好きなコスメティック田中というYouTuberが、以下の動画でルックバックはメッセージ性が足りてないという趣旨のことを言っていた。


僕個人としては、映画にメッセージ性や実用性みたいなものを求めていないし、受け手のことを意識しすぎた作品はチープに感じてしまう。

逆に、作り手が受け手を過度に意識せずに本当に作りたくて作ったものが好きだ。

ルックバックは割と漫画家や表現者に閉じたメッセージがあるので、一般人には伝わらない部分もあるだろうが、藤本さんが本当に作りたくて作った、体重の乗った作品であると思う。

だからこそ、原作を読んでいたとしても、58分で1700円を払う価値が十二分にある作品だったと、僕は思う。


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