青になびく
人は複数の時間や場所、環境から構成されている。
あの時にいたあの場所はふとした瞬間に僕の前に現れる。
青の匂い。
それが今回、伊南で僕の中に刻まれたものだと思う。
これからこの記憶は僕を表し、僕を支えるものになっていくのだろう。
川の冷たさの中に、僕の生を感じた。
心臓が僕の体全体に血液を送る音。
遠くの山や遠くの海が空から降りてきた水を介して自分と繋がる感覚。
円の一部を成す自分として、その母なる円を愛するということ。
共鳴が生きる感覚を思い出させてくれた。
子どもたちの中に、純朴さの力を感じた。
青さを帯びる木々の葉と子どもたちが重なった。
忘れ去られた僕の青さが純粋な青によって呼び起こされた。
既存の価値観にとらわれずに自分を揺らすものをすぐに見つけ出すこと。
スポンジのように場所の養分をすぐに吸収すること。
純朴さが僕の目には古くて新しいものに見えた。
人のつながりの中に、関係性の恵みを感じた。
木々の根が絡み合い、その場所に水分を蓄える。
土の中には強いつながりがあり、僕はそのようにして支えられた土の上に立っている。
立場や年齢に関係なく、そこに来る人を平等に招き入れる。
恵みが与えられ、その恵みがもっと広い世界へと伝播していく。
川の水が重力に従って自然に流れていくように、僕は流れになびいていった。
川底に根を張る水草に対してのように、その水は新しい養分を与え続けてくれた。
水草も水やひかりの恵みから、混じり気のない新鮮な酸素を生み出していく。
その酸素は次の世界にとっての恵みとしても循環していく。
恵みの連鎖の始まりを伊南の地で感じたのだった。
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