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臨床研究への第一歩としてレターを書いてみよう 冬期セミナーWS

今回は,私本田が参加した「レターを書いてみよう」というワークショップがとても良かったのでご紹介します.

良かった点を要約すると以下のようになります.

1. 事前課題→ワークショップ→事後課題・フォローアップの教育方略でアウトカムを達成する構成
2. レターをPublishするというわかりやすくモチベーションを高めるアウトカム設定
3. EBMの実践から臨床研究の実践へ進む間のステップとして優れた課題設定
4. 若手の学術活動を推進するきっかけになる

日本プライマリ・ケア連合学会主催の第16回 若手医師のための家庭医療学冬期セミナー内のワークショップの1つとして,2021年2月7日に開催された勉強会です.主催者は片岡裕貴先生(兵庫県立尼崎総合医療センター)です.

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医学雑誌に掲載された論文に対するレター(letter to the editor)の書き方を学び,実際に投稿することがアウトカムとして設定されていました.

①事前課題

YouTubeにアップされたレターの書き方に関するレクチャー動画の視聴,課題論文をはじめてシート(The SPELL)に従って批判的吟味をして読むことが事前課題として課されました.

参加者は4つの班に分かれ,それぞれにチューターの先生がついてレター執筆の指導をする体制でした.
日本プライマリ・ケア連合学会の英文誌であるJournal of General and Family Medicine誌に掲載された論文が題材で,私たちの班は,筋痙攣に対する芍薬甘草湯の有効性を報告したシステマティックレビュー論文,Effect of Shakuyaku‐kanzo‐to in patients with muscle cramps: A systematic literature reviewを扱いました.

②ワークショップ

zoomを用いたオンラインのワークショップで,短時間のレクチャーの後,グループに分かれて課題論文に対する批判的吟味の結果をもとにレターを作る作業を進めました.私たちの班は4名の参加者とチューター1名の5名で,Googleドキュメントを使ってレターの素案を作りながら進めていきました.他の人の意見から自分では気づかなかった批判のポイントがわかり勉強になりました.システマティックレビューのRisk of Biasの評価ツールであるROBISやGRADE guidelines等の資料も提示されどのように書くのがよいか検討しました.

ワークショップ内で大枠は完成し,終了後にGoogleドキュメントを使って適宜メールで連絡を取りレターを完成させることになりました.

③事後課題

ワークショップ後,翻訳ソフトDeepLの力を大いに借りてレターの素案を作り,Googleドキュメント内で修正点をディスカッションして完成させました.英文校正を経て,Submitに必要なCoverletterやTitle page,COI Formといった文書も作成し,Journal of General and Family Medicine誌に投稿しました.3月末にオンラインでPublishされました.ワークショップからSubmitまで約3週間,Publishまで約2か月程度でした.

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以下3点について指摘した内容となっています.
・RCTの網羅的な収集が不十分である可能性,出版バイアスが存在する可能性
・中国や韓国の漢方が対象となっているか不明確であり,対象とするのであれば中国語や韓国語のデータベースも使用すべきである
・結論がシステマティックレビューの結果から飛躍している

冒頭にも書きましたが,エビデンスの批判的吟味やEBMの実践がある程度できるようになった人が,臨床研究の実践に進む前のステップとして,科学的なライティングの原則に基づいた英語論文の執筆から出版までの一連の流れを簡易に経験できることも含めて優れた課題設定だと感じました.

主催者の片岡先生らが展開されているプロジェクト:日本の臨床研究を増やしたい!系統的レビュー論文を書いて、メンターになろう!

(文責:本田優希 聖隷浜松病院)

※当記事の内容は、所属する学会や組織としての意見ではなく投稿者個人の意見です。
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