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納得できない結末

無事に子供が生まれて、早4カ月。子供が大きくなるにつれ、絵本などに関心が出てきて、ふと昔読んだ物語を思い出した。

皆様にも経験がおありではなかろうか。物語の結末に、どうしても納得ができない事が。著者の姉は、浦島太郎の結末に納得できず、父にめでたしめでたしの終わりを考えてもらったと言う。私自身は昔は素直だったのか、そこまで浦島太郎に思い入れがなかったのか、この物語については「浦島太郎、可哀そう」で済んでしまったのだが、大人になってから読んだ別の物語の結末には、ものすごく引っかかった。それは、中川李枝子さん作の大人気作品、「ぐりとぐら」である。大好きな作品にケチを付けられるのが嫌な方、或いはネタバレが困る方は、ここから先は読まない事をお勧めいたす。

ご存知の通り、「ぐりとぐら」は、愉快なネズミの二匹組が大きな卵を手に入れ、素敵なお菓子を焼き上げ、森のみんなと美味しく頂くと言う一見平和な物語である。私も、愛らしい挿絵と美味しそうなお話に惹かれて手に取った大勢の一人、なのであるのだが。お話の最後に森の仲間が一緒に和気あいあい、お菓子を食べる件にとてつもない違和感を覚えた。挿絵には、哺乳動物は勿論、蛇も、鳥もいる。ならば…「卵の親鳥は???」

確か、お話では、食材を探しに森へ出たぐりとぐらは、巨大な卵を拾った事になっている。これが私の記憶違いや、読み取る力不足だったならば、謹んでお詫び申し上げる。元来私は状況を察したり、文章の裏に込められる意味を読み取るのが大層苦手で、国語の「作者の気持ちや意図を説明しろ」という手の問題の成績が芳しくなかったものだから、十分あり得るだろう。もしも、お話の裏でぐりとぐらが、卵を見つけた時点でちゃんと親鳥に断っていて、「あー、それ、無精卵だし、とっておいても腐ってしまうだけだから、良かったら使って」と貰い受けていたのならば、森の仲間が何の屈託もなく、「親鳥さん、ご馳走さまでした!」とお菓子を堪能しているのに納得がいく。

しかし、ぐりとぐらは卵を見て驚き喜んでいる。そして、その卵を割るのに苦労している。これは、この卵の親鳥がまだ森の仲間入りしていない未知の鳥で、だからぐりとぐらはその卵も当然見た事も扱った事もないし、「あー、これは○○さんの卵だから、巣に戻した方がいいのか食べていいのか、聞いた方がいいよねー」という事にもならなかったのだろう。未知の外来種も、こんなにみんな仲良く暮らしているのだから、そこらに卵を産み落としても大丈夫!なんて、思ったのかも知れない。或いは、今までいた所では、その固い殻を割って卵を食べる事が出来る生物はいなかったので、油断していたのかも知れない。いずれにせよ、結果として、卵はただの珍しい食材として扱われ、賢いぐりとぐらに調理されてしまった。

私的に一番自然な結末は、次のようなものだと思う。それは、皆が美味、美味とお菓子を味わっていると、大きな鳥がやってきて、「あのー、それ、私の卵だったんですけど…」といい、森のみんなが気まずーくなってしまうと言う物だ。勿論そんな絵本、絶対に売れないだろうけど。

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