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抽象的な絵画の見方

私は現在、オランダの大学で芸術史を学んでいますが、日本に帰ってくるとよく聞かれることがあります。

「アートって知識ないと楽しめへん?」というものです。

私もまだアートについて学び始めて2年なので、質問されたことに何かしらの答えを言うことにすごく躊躇しますが、1年生の授業中に読んだ本の212-219ページに書いてあった内容とそれを踏まえてどうやって作品をみるのかを考えてみたいと思います。


まず、「どうやってみるのかわからん」とよく言われているのがバーネットニューマンやマークロスコ、カジミールマレヴィッチなどの抽象的な絵画です。キャンバス全体に一色で色を塗ったり、白いキャンバスに黒い四角が描かれているなど、「誰でも描けるやん。」「何がすごいの。」と言う人もいます。

上で紹介した本の著者ハリソンはパーソンAからFという名をつけて様々な解釈の方法を紹介します。例えば、抽象的なものの中に実世界に存在するものを見出す。といったものや、みたものは見たままでしかない(四角は四角であり、それ以上でも以下でもないなど)、文化的・歴史的な文脈が作品を意味づけるなどと言ったものです。

そして最後に紹介しているのが、「何ひとつとして正しい解釈は存在しない。」というものです。私たちはうっかり「作者の意図が作品の正しい意味である」と考えがちですが、それは意図の誤謬 (Intentional Fallacy:作者の意図が作品の正しい意味であると考える誤った考え)です。

つまり、様々な視点から作品を考察することそれ自体が自分の中で新たな気づきやアイデアを導いてくれる興味深いものではありますが、アート体験は自由なものであり、作者や歴史的な解釈もあくまで私たち個人の解釈と同じ一解釈に過ぎません。

もちろんこの考え方そのものもあくまで一解釈ですが、「アート」を近寄りがたい存在であると感じているひとにとっては、頭に置いておくとバイアスを捨てて楽しめるのではないかと思い紹介してみました。

現在はアートを通じて自由で主体的な学びをする場をオンラインにつくるという活動もしていますので、もしも興味があればnoteをフォローしていただければ、公開情報等を更新していきます!(プログラムへの参加は無料です)

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