偶然の経緯からドイツに徴兵され「尋問の達人」と呼ばれた美術家

今度アメリカのディズニー・ワールドを訪れたら、シンデレラ城のモザイク画をよく見てみよう。これは、第2次世界大戦中にドイツ空軍の "尋問の達人 "だったハンス・シャルフ(Hanns Scharff)によって描かれたものだ。前任者や同僚とは異なり、シャルフは捕虜に肉体的拷問を加えることに断固反対した。彼のやり方には、捕虜を昼食に連れ出したり、妻が作ったおいしい焼き菓子を分け与えたり、自然の中を長く散歩したり、友好的な会話を交わすことなどがあった。

シャルフの共感と親切心に頼る方法は、驚くほど効果的だった。彼は、ある囚人の「修道女から不倫の告白を聞くことができる」とさえ言った。シャルフの主な目的は情報収集だったが、戦争犯罪容疑のかかった数名のパイロットについて、親衛隊に容疑を取り下げるよう説得し、彼らの命を救うことにも成功した。

シャルフは軍人出身ではない。戦前、彼はイギリス人の妻と2人の子供とともに南アフリカのヨハネスブルグで働くビジネスマンだった。戦争が始まったとき、彼はドイツで休暇を過ごすという不運に見舞われ、強制的に徴兵された。当初はロシアの前線に向かう予定だったが、妻の計らいで通訳部隊の一員となることができた。偶然が重なり、そのうちのひとつに上官2人が飛行機事故で死亡したこともあった。

シャルフは尋問官として大成功を収めたようで、戦後、アメリカは彼を招いて尋問テクニックの講義を行なった。

1950年代、シャルフはアメリカに移住し、残りの人生をモザイク制作に費やした。シャルフの作品は、ディズニー・ワールドのほか、カリフォルニア州議会議事堂、ロサンゼルス市庁舎、アメリカのいくつかの大学でも見ることができる。