望まない脱毛予想図Ⅱ

一般的には夏は終わったようであるが、私の夏はまだまだ終わらない。夏といえば、松尾芭蕉は夏の句を読む際には「股間のかゆみ」と「短パン」を季語にしていたという逸話がある。

閑さや
夏は股間が
かゆくなる
                          松尾・デリケア・芭蕉

余談であるが芭蕉はDの意志を継いでいたとのことである。

さて、股間パートが終わったところで本題の短パンパートに入ろうと思う。

本当に小っ恥ずかしい話だが、私は21歳を迎えいよいよおしゃれにも気を使わないといけないなと思うようになった。
今までは母親が買ってきた服を着ていたのだが、あいにく母親の趣味が昔から変わっていないため、ミニスカに厚底ブーツ、ロングヘアと細眉という格好をさせられており、ヒゲモジャ安室ちゃんが爆誕していたのである。街行く人に変な奴だと罵られようものなら「Can you Celebrate?」と言い放ち黙り込ませていた。
そんな私が大学3年になってからは色気付き、instagramで自分の服装を投稿したり、自社ブランドを立ち上げたり、おしゃれなオフパコ(おしゃパコ)をしまくったりしている輩をフォローして最新の流行を追おうと努力し始めたのだ。
「あたしだって輝きたい!」「おしゃれって本当にワクワクする!」このような気持ちが芽生え始めていた。

ファッションインスタ野郎どもは、夏に短パンばっかり履いている。
春先まで100枚くらい重ね着して、レイヤードを楽しむぞい!と言っていた厚着モンスターたちが、夏には短パンしか履いていない。もう夏は終わりかけであるがまだまだ短パンの夢は終わらねえ!!!(松尾・デリケア・芭蕉談)。


短パンを履く上で気になるのがやはりお毛毛事情である。ただでさえすね毛が濃い人間は短パンを履きにくい風潮があるのだが、私はすね毛どころか陰毛が果てしなく濃く、ズボンの裾からはみ出してしまうことがある。さらにそこにすね毛で追い打ちをかけるわけだから、私が短パンなど履いた暁には裾からは2匹の黒龍が出現してしまう。千と千尋のハクがニギハヤミコハクヌシという龍であるとするならば、私のズボンからはテニオエヌオケケタチが現れるのだ。さらに向こうはハクと言っているが、毛もじゃの私は絶対に短パンはハカナイ。私の陰毛、すね毛は宮崎駿のヒゲを凌駕する。

短パンを履きファッションを楽しむには必然的に脱毛をしなければならない。この間、エロいyoutubeの広告をオカズに自慰に耽っていたところ、フィニッシュと同時に今すぐこのボタンをクリックと言われ、賢者タイムの朦朧とする意識の中でとある脱毛サロンのサイトにたどり着いた。いろいろあったはずの宮迫がすこぶる笑顔で宣伝をしており、私の頭の中のフジモンも「俺の毛、なんとかならないっすか〜!!!」と泣き叫んでいた為迷わず行くことを決意した。どうやら顔の脱毛しか出来ないようだが、顔に生えているすね毛が消えるなら短パンへの道は一歩近づく。世の中の毛は2種類、脛に生えているすね毛か、それ以外のすね毛かだ。

早速そのサロンに向かったが、ドアを開けた瞬間に脱毛し過ぎてしまったドクターが登場。宮迫の笑顔よりも眩しく輝くその頭には、脳内フジモンも泣き止んでしまった。軽い地元トークをした後、あれよあれよという間に施術室に連れて行かれ、ツルピカドクターから「下のすね毛はモジャモジャでも、上のすね毛はどうかな」とツルピカボイスで囁かれながらヒゲを剃られてしまった。その後何か冷たい器具からレーダーを発射し脱毛へと映るのだが、自分のデコ付近に冷たい感覚がないか細心の注意を払っていると一瞬のうちに終わってしまった。

その後、今回は体験だった為、通院をしないかとの話をされるわけだが、私が通院をしない意思を見せるや否や、ツルピカ24カラット勾玉ドクターの顔色が一変。来店時には薄いトークと薄い頭髪で福岡と鹿児島の共通点を必死に探していたのだが、毛ありと毛なしは分かり合えないという態度で威嚇。心なしかさらに禿げ上がっていたような気がする。怒髪天をつくといったような様子だったのだが、残念なことに髪などなく、ツルピカ24カラット超合金満月ドクターは怒天しかつけない。今回の勝負も同点。どてんとどうてん。ハゲもヒゲもドロー。
帰り際にヒゲは清潔感がなくモテないし仕事も来ない、お前の地元は芋くさいと散々罵倒され涙の帰宅となった。

その後時間が経ち、現在口の周りには隠毛のごとくヒゲが生えてしまっている。このままでは擬似陰部露出罪で捕まってしまうので、まずは顔に短パンを履かなくてはなりませんなこりゃ。


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