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拘りのお昼ごはんだったなぁ

高校時代の時のお昼ごはんを思い出していた。
ほとんどの子がお弁当だったけど、中には拘りメシを貫いていた子もいた。
まず、Мちゃん。彼女は某有名カップ焼きそばと誰もが知ってる乳酸菌飲料の500mlパック。
食べ方も決まっていて、まず焼きそばだけ食べる。
そのあと乳酸菌飲料を一気飲み。そして「うめぇーっ!」までがセット。
もう一人すごかったのがHちゃん。
そろそろ肌寒くなってきたねぇという頃に発売される某有名メーカーのシリーズの、あんまん。
大きいタッパーに、あんまんを5個詰めて持ってきてた。
調理室の電子レンジで温めなおして、ほかほかあんまんを美味しそうに頬張っていた。
でも5個だよ。毎日あんまん5個。しかもデザートもチョコとか。
そして、忘れられない子が一人いる。Aちゃん。
彼女は食べない子だった。食べることに興味がないというわけではない。
少しでも、お金を貯めるためだった。
彼女の家庭は複雑で、両親は別居していて、Aちゃんは母親と住んでいた。
父親はコンサル会社の社長。それもあって毎月の生活費はけっこうな金額を振り込んでくれてたらしい。
そしてAちゃんにも「お小遣い」として月10万円。高校生には多すぎる。
でもAちゃんは、ほとんど手を付けずに貯めていた。
「何でそんなにお金が必要なん?」と聞いたら「卒業したら家を出たいから」と返ってきた。
父親の気持ちは、とっくに母から離れている。母は、今は毎晩のように飲み歩いて楽しそうにしてる。
でも私が卒業したら離婚するのが決まってる。そしたら母は間違いなく自分に依存してくる。
そうなったら一生、母から逃げられない。だからそうなる前に家出するんだ。
真っ直ぐ前を向いたまま、ゆっくりと話してくれた。
「親を捨てることになるんよな。酷い人間やと思うやろ」
「ううん。Aちゃんの人生や。お母さんの人生まで背負うことない」
「ありがと…初めて話したわ、こんなこと」
そう呟いて照れくさそうに笑った顔が忘れられない。
そんなわけで、一円でも多く!を目標にAちゃんは頑張っていた。
ちなみに、毎日の食費として3000円もらってたようだ。
それも節約のために、ほぼ遣うことなく…。
で、卒業式当日。Aちゃんはキャリーバッグを引きずりながら学校へ来た。
「式が終わったら、そのまま新しいとこ行く。家には戻らん」と。
そして本当に式後に「じゃあ行くわ!ばいばい!」と軽やかに去っていくのを、みんなで見送った。
どこへ行くのかも、これからどう生きていくのかも。誰も何も聞かなかった。
あの日以来、Aちゃんがどうなったのかは知らない。
根性あるし頑張り屋だから、きっとどこかで元気にしてくれてると思う。

ちなみにAちゃんのお昼ごはんは、いつも飴2個だった。
普通にご飯食べてくれてたらいいな。

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