寸借詐欺されかけた話。

『寸借詐欺』という言葉をご存じだろうか。
一言で言えば、「人の善意に付け込んで、金銭を騙し取る行為」のことである。
刑法第246条にも、
1 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
とあり、詐欺罪に該当しているといってもいい。

「財布を落としてしまった。電車賃を貸してほしい」とか、「鞄をひったくられて帰れない。タクシー代を貸してほしい」等と声をかけ、少額のお金を騙し取る人間が存在しているのは事実だ。
「お気の毒に」「電車代ぐらいなら」と、見ず知らずの相手に貸してしまうこともあるだろう。そのお金が返って来なかったとしても、少額だからと諦める人間も少なくない。よって、事件化するケースは非常にまれである。

今回、私は娘のように思っていた知人に対して、「家賃が払えない」等の理由で、合計20万円を貸した。
「返済出来ない時はちゃんと相談してね。待つから」
「お金がないと精神的にも病むから、爪に灯を灯すような生活をしてまで返さなくていい。出来る時に少しずつでかまわない」
というのは、私から何度も彼女に伝えた言葉である。

その結果、返済はなかった。1年半以上もの間だ。
最初にお金を貸した7カ月後、「今度会う時に3万円返します」と言われたものの、当日になって「持ってくるのを忘れた」と言われ、その後1年近くその3万円の話はなかった。
後日、何に使ったかを確認したところ、「覚えていない」「何かの支払いに使ったと思うが忘れた」と言われたが、

返済するはずのお金を使ったにも関わらず、何に使ったか覚えていないことってあるのか?

という疑問しかない。

最初に貸したのは2021年12月末だ。
だが2022年後半頃から、
「毎月○○のサイトで1万円以上買い物している」
「メ○カリで着物を○○○○円で買った(※複数回)」
「三味線を習おうと思う」
「中古のスノボを買おうと思っている」
等の発言を本人から繰り返し聞かされ、またライブ等にも行っていることを彼女本人から聞かされて、疑問が湧き上がるのを止められなかった。
この間、1円の返済もなく、返済の相談すらない。
「返せなかったら言ってね、困ったら相談してね」と何度も伝えたが、彼女から返って来たのは「わかったぁ❤」「相談しゅる~❤」という言葉だけだった。

そして、私は馬鹿だった。彼女に対して甘すぎた。
当初は、「遊べる経済的な余裕が出来たのなら良かった」と喜んでいたぐらいだ。
ただ、ふと気づくと返済についての話が一切ない。相談もない。
むしろ、会うたびに「あれ買ったこれ買った」の話を聞かされ、「お金を返すつもりがないのだろうか」という疑問だけが膨れ上がっていった。

まず、返済する意志があるのか確認しよう。
そう思って彼女に確認したところ、反省する内容のLINEが届いた。「恥ずかしいです」というその真摯な内容を信じて、「毎月末に振り込む金額を連絡した上で振り込む」という彼女からの返済案を受け入れたが、結局それが守られたのは1回だけだった。自分で提案し、約束した返済方法も守らなかったのだ。
流石の私も激怒するしかなかった。

彼女の名誉の為に言うと、ようやく返済らしい返済が始まっている。
6月15日現在の返済残金は115000円。まだ半分以上残っているが、遅延損害金も利息も、貸した時に使った振込手数料も私は請求していないし、受け取っていない。
彼女に対して、「利息はいらない」と貸した当初に約束したからだ。

「借用書を書きます」
「少しずつ返せると思う」
彼女はそう言って私からお金を借りた。家賃が払えないと称してだ。そして、借用書が自発的に書かれることはなかった。
今となっては、それが本当か嘘かはわからない。反省しているかどうかもわからない。逆恨みしているのかもしれないが、それは彼女自身の問題なので、私には関係がないと思っている。
少なくとも、返済についての約束は何度も破られ、嘘を吐かれ、それを見抜けなかった私自身が馬鹿だった。
娘みたいに思って信じ、結果的にメンタルがボロボロになったのは私の問題だが、安易にお金を貸してしまったことを今は深く反省している。
本人が路頭に迷おうがどうしようが、お金は貸すべきではなかった。
その反省と自戒の意味を込めて、一連の経緯を残そうと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?