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「素敵な暇つぶし」を紹介したい

またJessicaのことを書きます。
Jessicaの曲はどれも好みではあるけれど、その中でも「素敵な暇つぶし」が好きだ。

「素敵な暇つぶし」はJessicaの1st mini album「Good Time」に収録されているので是非聴いてほしいです。



歌詞で描かれるのは「私」と「あなた」のこと。
二人は恐らく恋人同士ではあるが、互いに温度差がある。「私」が「あなた」に対して抱く愛情を果たして相手も同様に抱いているか……答えは多分、ノーであろう。どこか、ズレを感じる。そして、残念なことにこのズレはどうしようもない。築き上げるのは難しいが、壊れるのは簡単なのだ。繊細にできているようで、脆く、危うい。適切な距離や接し方を間違えると相手を傷つけてしまう。人間関係とは難しい。

「素敵な暇つぶし」は別れの予感が付き纏う歌だ。

「私」は「あなた」のことを思う夜が好きなのだろう。暗い部屋で、光が届かなければ彼を見ることはできない。それを、愛し方が見つからない言い訳にするように「私」は夜を歓迎するのだろう。夜に包まれた世界で、「私」は「あなた」を見るのだ。

「私」は暇をつぶすために過去を思い出す。
「あなた」と過ごした日々を愛おしく、お気に入りのシーンを再生する。けれども、時間の経過とともに思い出には「私」の生み出した都合のいいものが混ざっていくのかもしれない。創造された記憶すら愛おしく思えるだろう。相手を好き過ぎるがあまりに創作してしまうのだから。

「私」と「あなた」はそう遠くない未来には別れているだろう。そして、お互い、隣には別の人間がいても不思議ではない。その相手と過ごしていくうちに二人で過ごした時間はいつか思い出としてラベリングされ、きちんと保管したことに安心して忘れていくのかもしれない。それを薄情だとか言うものはいないだろう。何もかもを抱えて生きるには人生はあまりに長く、時間の経過とともに老いていく人間にとっては酷だ。

一人ひとりに暇つぶしはある。
暇をつぶすということはその先に何か予定があるということだ。

眠れない夜に「私」は「あなた」を待っている。

「あなた」のことを考える。
「あなた」の姿を待っている。
「あなた」の声を聞きたい。

素敵な暇つぶしはいつか終わる。
その時を「私」はただ待っている。


この曲を聴いて、ぼくは上記のように感じた。
何度も聴いている曲だが、イメージを文章にするのは難しいことだなと思った。自分の好意の度合いを正確に相手に伝えるのが困難なように。オーバーだと嘘くさく、素っ気ないと信用できない。だが、そんなことをいちいち気にしていては疲れてしまうのもまた事実。難しい。

「素敵な暇つぶし」は強がりな自分を慰めるための歌かもしれない。しかし、強がるということは己の弱さを認めていることでもある。並大抵のことじゃない。大事なのは自分が自分のことを一番に信じてあげることかもしれない。自ら可能性を閉ざすのはあまりに惜しい。

夜は明ける。朝は来る。

隣に「あなた」がいなくても
「私」は今日を生きていく。生き延びていく。

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