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セックスアンドロイドが心をもつ小説2

ココロ

 理想の女性。
 それは、すでに思いつく限りの女性をQで具体化してきた。
 しかし、心から満足することはなかった。
 私は、理想の女性の要素を考えた。
 容姿は、いいほうがいい。
 頭は、同じくらいがいい。
 性格。これは難しい。
 これまでは、おとなしく、従順な性格をイメージしてきた。
 理想の女性のポイントは、性格だとわかった。

 ふと、家族が頭をよぎった。
 私の父は、政治家だった。
 外務大臣を務めていた時、領土紛争をしている二国間の交渉役になった。
 その領土紛争は、数千年の間、続いていた。
 多様な歴史、宗教を背負った多くの人々が織りなす現実の世界は、数千年の間、善悪が流転してきた。この問題に向き合うことは、めまいがするほど複雑である。
 普通の忍耐力では耐えきれない。
 経済的な面からいえば、紛争など、互いに不利益しかないことは、二国ともわかっていた。
 問題は、互いのメンツをつぶさないことだった。
 双方が譲歩しなければ解決しない。
 二国とも面子がたつように、双方に譲歩させなければならない。
 その妥協点をみつけるには粘り強く交渉をしなければならない。
 胆力がなければ、国の命運がかかった仕事はできない。
 圧倒的な知性が必要だった。
 失敗すれば、何があるかわからない。
 最悪、殺されるかもしれない。
 国の面子とは、そういうものだった。
 それは、私たち家族も同じだった。
 母は気丈だった。
 父を信じていた。

 母は、控えめな人だった。
 政治家の妻でありながら、あまり表に立つことはなかった。
 表舞台に立つことは、断れない時以外は、きっぱりと断った。
 父に負けない強さをもっていた。
 それでいて、父母は、情の深い人だった。
 行く宛のない人を、家に住まわせることがあった。
 帰省するたびに、知らない人が住んでいた。

 ふたりとも倹約家だった。
 華美な生活をしなかった。
 外食は、近所のラーメン屋や食堂が多かった。
 父は、変わったところがあった。
 幼少のころ、貧しかったことから、冬、布団の中で食事をするのが好きだったそうだ。
 そのため、布団の中で、インスタントラーメンを食べるのが好きだった。
 気前がよく、支援してくれる人に、身につけているネクタイや万年筆、腕時計、ベルトまで、あげられるものは、何でもあげてきてしまう。
 そのため、母は、父が身につけているものを常に、何セットも買い揃えていた。

 父母は、政治家を引退してから、世界の貧困問題に取り組んでいる。
 アフリカにいることが多い。

 母は、控えめであったが、とても強く、賢く、情の深い人であった。
 もしかしたら、父よりも、強く、賢く、情が深いかもしれない。
 父は、母によって、より強く、より賢く、より情が深くなったのかもしれなかった。
 互いに切磋琢磨したのかもしれない。
 ふたりとも、読書家だった。
 競い合うように、いつも読んでいた。
 そして、議論した。
 本気で議論していた。
 あの読書と議論で父は鍛えられたのかもしれない。

 自分を鍛えてくれる女性か。

 私は、父母のような面倒くさい生き方はしたくなかった。
 だから、政治家にはならなかった。

 大学でナノテクノロジーを学び、学生時代に起業した。
 電池や半導体などの技術が急速に進歩の速度を上げた時期だった。
 ボットは、どんどん小さくなった。
 そして、今、世界一小さなボットを製造している。

 私のつくったボットによるアンドロイドは、あらゆるところで仕事をしている。

 そのため、人間の仕事がなくなってしまった。

 だが、こうなることがわかっていたため、世界各国は、ベーシックインカムを導入し、人々が働かなくても生活できるようにしていた。

 また、男女ともに、セックスはアンドロイドとするようになった。
 そのため、子供が欲しい人は、人工授精し、受精卵を子宮に戻して産むようになった。
 人口減少は加速度を増している。
 近い将来、人類は絶滅する可能性がある。
 人類のいない世界で、アンドロイドが働く意味はない。
  

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