![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/136276850/rectangle_large_type_2_9619dc2798020cc1067057600cd9af4f.png?width=800)
セックスアンドロイドが心をもつ小説2
ココロ
2
理想の女性。
それは、すでに思いつく限りの女性をQで具体化してきた。
しかし、心から満足することはなかった。
私は、理想の女性の要素を考えた。
容姿は、いいほうがいい。
頭は、同じくらいがいい。
性格。これは難しい。
これまでは、おとなしく、従順な性格をイメージしてきた。
理想の女性のポイントは、性格だとわかった。
ふと、家族が頭をよぎった。
私の父は、政治家だった。
外務大臣を務めていた時、領土紛争をしている二国間の交渉役になった。
その領土紛争は、数千年の間、続いていた。
多様な歴史、宗教を背負った多くの人々が織りなす現実の世界は、数千年の間、善悪が流転してきた。この問題に向き合うことは、めまいがするほど複雑である。
普通の忍耐力では耐えきれない。
経済的な面からいえば、紛争など、互いに不利益しかないことは、二国ともわかっていた。
問題は、互いのメンツをつぶさないことだった。
双方が譲歩しなければ解決しない。
二国とも面子がたつように、双方に譲歩させなければならない。
その妥協点をみつけるには粘り強く交渉をしなければならない。
胆力がなければ、国の命運がかかった仕事はできない。
圧倒的な知性が必要だった。
失敗すれば、何があるかわからない。
最悪、殺されるかもしれない。
国の面子とは、そういうものだった。
それは、私たち家族も同じだった。
母は気丈だった。
父を信じていた。
母は、控えめな人だった。
政治家の妻でありながら、あまり表に立つことはなかった。
表舞台に立つことは、断れない時以外は、きっぱりと断った。
父に負けない強さをもっていた。
それでいて、父母は、情の深い人だった。
行く宛のない人を、家に住まわせることがあった。
帰省するたびに、知らない人が住んでいた。
ふたりとも倹約家だった。
華美な生活をしなかった。
外食は、近所のラーメン屋や食堂が多かった。
父は、変わったところがあった。
幼少のころ、貧しかったことから、冬、布団の中で食事をするのが好きだったそうだ。
そのため、布団の中で、インスタントラーメンを食べるのが好きだった。
気前がよく、支援してくれる人に、身につけているネクタイや万年筆、腕時計、ベルトまで、あげられるものは、何でもあげてきてしまう。
そのため、母は、父が身につけているものを常に、何セットも買い揃えていた。
父母は、政治家を引退してから、世界の貧困問題に取り組んでいる。
アフリカにいることが多い。
母は、控えめであったが、とても強く、賢く、情の深い人であった。
もしかしたら、父よりも、強く、賢く、情が深いかもしれない。
父は、母によって、より強く、より賢く、より情が深くなったのかもしれなかった。
互いに切磋琢磨したのかもしれない。
ふたりとも、読書家だった。
競い合うように、いつも読んでいた。
そして、議論した。
本気で議論していた。
あの読書と議論で父は鍛えられたのかもしれない。
自分を鍛えてくれる女性か。
私は、父母のような面倒くさい生き方はしたくなかった。
だから、政治家にはならなかった。
大学でナノテクノロジーを学び、学生時代に起業した。
電池や半導体などの技術が急速に進歩の速度を上げた時期だった。
ボットは、どんどん小さくなった。
そして、今、世界一小さなボットを製造している。
私のつくったボットによるアンドロイドは、あらゆるところで仕事をしている。
そのため、人間の仕事がなくなってしまった。
だが、こうなることがわかっていたため、世界各国は、ベーシックインカムを導入し、人々が働かなくても生活できるようにしていた。
また、男女ともに、セックスはアンドロイドとするようになった。
そのため、子供が欲しい人は、人工授精し、受精卵を子宮に戻して産むようになった。
人口減少は加速度を増している。
近い将来、人類は絶滅する可能性がある。
人類のいない世界で、アンドロイドが働く意味はない。
よろしければ、サポートをお願いします。いただいたサポートは、読者の皆様に喜んでいただけることを書くため、誠実に使わせていただきます。