メタバースが「普段使い」になる日:子どもたちが「前のめり」になる教育革命
今回は「エデュテイメント」についてお話します。
エデュテイメントは教育(エデュケーション)と娯楽(エンターテインメント)を融合させた造語です。「漫画に登場するキャラクターで、漢字の読み方を覚えた」「トランプやUNOで数字の概念や足し算を覚えた」という感覚は、実は誰しも経験があるのではないでしょうか。
楽しみながら学ぶエデュテイメントの形
エデュテイメントで有名な例としては、桃太郎電鉄(いわゆる「桃鉄」)があげられます。桃鉄をプレイしていたら、いつの間にか日本国内の名産品、名所や駅名を覚えてしまっていた、というような話は、もはや説明不要でしょう。この桃鉄の教育版が2023年にリリースされて、すでに全国7000校の教育現場に導入されています。
※「春休みの宿題が桃鉄10年!」ということもあるようです。
ゲームの他にも、海外の人たちが日本のアニメを観ていたら自然と知っている日本語を増えていた等の話はよく聞きますね。「言語導入」の場面でも、エデュテイメントはすでに根付いています。
最近注目されているのが、UGC(User Generated Content)プラットフォームを活用したゲーム作り教室(=プログラミング教育)です。例えば昔は動画作りと言えば、TV局か映画会社くらいしかすることはなく、家で機器を集めてホームビデオに字幕を付けるなどしていた人はそうとうなマニアだったかと思います。それが今では、YoutubeやTikTokでの公開が一般化しています。このように、実はゲーム開発も個人が手軽に行えるようになってきています。
ゲームで宇宙を探索しながら学ぶ
メタバースゲームにおけるエデュテイメントの実例が、JAXA企画制作のマインクラフトの月面ワールド「LUNARCRAFT」です。
「LUNARCRAFT」は、まさに「ゲームをしていたらいつの間にか月についてめちゃくちゃ詳しくなっていた!」という感覚を提供する月面教育ゲーム(エデュテイメント教材)です。
「LUNARCRAFT」公開!!|お知らせ|JAXA 宇宙教育センター
この教材は、JAXAが公式に企画・制作して発表したもので、話題性と信頼度が高いこともあって、各地でこの教材を活用したワークショップが開催されています。さらに、プログラミングの塾でも教材として採用されるなど、幅広い場所で活用されているようです。
また「マインクラフト」も「宇宙」も、世界中の誰でも共通の話題にできるコンテンツなので、さまざまな国のメディアが話題にしており、世界各地で宇宙教育において活用されています。」
アメリカ
New 'Lunarcraft' game lets you build your own moon base in the Minecraft world
This immersive experience lets you build and grow your own Minecraft moon base circa 2050.
ドイツ
Minecraft: Mod Lunarcraft erlaubt Erkundung eines realitätsgetreuen Mondes!
ポーランド
エクアドル
Lunarcraft: La «versión lunar» de Minecraft Japonesa
フランス
ロシア
Lunarcraft позволяет построить собственную лунную базу в мире Minecraft
Японское космическое агентство выпустило свою игру про освоение луны для Minecraft
チャンネル登録者650万人のメキシコYoutuberによるゲーム紹介動画
日本の人気Youtuberもプレイ
ほかにも中国、ブラジル、エジプト、イラン、ブルガリアなどの国のメディアにも取り上げられました。
コンテンツ自体が無料で公開されているので、各地で自主的なワークショップも開催されています。
メタバースゲームを通じ宇宙への興味を喚起「メタバースで学ぶ宇宙教室」大分県で開催
株式会社モンドリアンのプレスリリース(2024年3月25日 12時30分)メタバースゲームを通じ宇宙への興味を喚起「メタバースで学ぶ宇宙教室」大分県で開催
今後、教育委員会や自治体が、宇宙科学館などでLUNARCRAFTで宇宙を学ぶワークショップ等の取り組みを行うなどのユースケースも出てくると、メタバースによる宇宙教育がより広く普及する可能性があります。このような試みは、教育へのアクセス性を高め、学習の楽しさを促進することは自明です。
課題はゲームへの根深い敬遠
しかしながら、いい話ばかりではありません。まだまだ団体や行政によっては、ゲームが及ぼす悪影響を謳い、ゲーム禁止を推奨する流れもあります。
今も残る疑問、制定3年「香川ゲーム条例」のその後
ゲーム条例は前文で、「インターネットやコンピュータゲームの過剰な利用は、子どもの学力や体力の低下のみならずひきこもりや睡眠障害、視力障害などの身体的な問題まで引き起こす」「脳の働きが弱い子どもが依存…
ゲームメタバースにおけるエデュテイメントは有用な教育ツールとしての側面は持ち合わせつつも、今後そのエビデンスをどのように獲得していくかが、教育現場へのより広い浸透のカギとなってきます。
数回にわけてメタバース×教育について、解説してきましたが、主に解説した内容は「今スグに使える地に足のつけたメタバース施策」です。このほかにも、メタバースのその没入感による教育深度の高さを活かして、工場の事故防止や車の運転のヒアリハットなど、様々な分野での活用が進んでいたり、不登校支援や居場所作りなど、より本質的にメタバースの価値を活用される場面もあります。メタバース空間内で教師が生徒に教えたりするなどは、技術的には可能ながら、現場に浸透するのはまだ少し先の話ですが、「教育」が真の意味でメタバースのキラーコンテンツとして、産業成長のきっかけになる可能性は高いと考えています。そのときを楽しみに、まずは一歩一歩、ユースケースを皆さんと一緒にチャレンジしていければ幸いです。
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