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レトロ喫茶のススメ〜オールド上海café1930〜【静岡県】

静岡市葵区七間町。

駅前の喧騒から少し離れ、閑静な石畳の道が続く駒形通り沿いのビル2階に店はある。
細い階段を登っていくと、年季の入った扉が半開きになっていた。

ギィっと音を立てて扉を開けると、そこは別世界

@カフェ店内入口付近
一気に店の雰囲気に引き込まれる


店名の通り1930年代の上海をイメージした店内は、中国の民芸品や骨董品をはじめとして、日本の昭和初期にもあったような、レトロな照明や置時計、絵画、木製のオルガンなどが所狭しと並べられ異国情緒あふれる店内。天井から床までびっしりとその雰囲気を纏っている。

しばらく店内の雰囲気に酔っていると、店の奥からひょっこり現れた店主に声をかけられた。
お好きな席へどうぞということで、手前の通路沿いのソファ席へ。店に入った瞬間から、ビロード調のどっしりとした1人掛けソファが気になっていた。
沈み込むような柔らかさは無いものの、しっかりとした座り心地。

店内奥には、観音開きの窓から外を眺めることができる優雅なカウンター席も用意されており、昼下がりのティータイムには持ってこいのロケーションだが、筆者には既に花粉に咽ぶ季節だったため断念...。

しばらくすると、これまたレトロな赤と黒のキューブ模様が可愛らしいグラスに注がれた水と、同時にメニューが差し出された。
本格的な数種類の中国茶、マンゴープリンや仙草ゼリーなどの中華スイーツが並ぶ中、昼食をとり損ねていた空腹が、真っ先にランチメニューを探し当てた。

いくつかあるメニューのうちから、日替わりで2〜3種類が選べるタイプのランチは、どれもセットで本格的な烏龍茶がついてくるのがありがたい。
この日のランチは、魯肉飯と上海炒麺(焼きそば)。一品ずつ注文することにした。

厨房が近いのか、待っている間から、えもいわれぬ良い香りがふわふわと流れてきて期待値が高まる。
可愛らしいプラスチックのお盆に乗せられて2品が運ばれてきた。

魯肉飯(奥)と上海炒麺(手前)


立ち上るオイスターソースの香りに耐えられず、取り急ぎ目の前に置かれた上海炒麺にがっつく。

・・・!
淡白そうな見た目とは裏腹に、ひと口目からオイスターソースのガツンとした塩気とうまみが広がる。一般的な焼きそばに多い中華麺ではなく、少し平たくて細いうどんのような麺が、味付けのパンチに全然負けていない。きくらげ、イカ、ホタテなどのおおぶりな具材がごろごろ入っていて、カフェのランチメニューとは思えないクオリティだ。街中華にでも来たのかと錯覚しそうになる。

うっかりそのまま食べきりそうになるのを抑えて、お待ちかねの選手交代、魯肉飯だ。
米も肉も卵も均一にタレ色に染まっており、添えられたチンゲンサイの緑がその茶色をいっそう引き立てる。たまらずひとくち頬張る。

茶色い見た目とは裏腹に、優しく奥深い肉の脂の味が沁み入ってくる。決してくどい脂っこさはなく、後からふんわり漂う八角の香りもあいまって、スルスルと食べられてしまう。

カフェランチとは思えない本格的な味に感動している間に、食後の烏龍茶が運ばれてきた。
白地に青で紋様が描かれた丸い湯呑みの蓋を慎重に開けると、爽やかで複雑なお茶の香りがふわっと広がる。渋みは少なく自然な甘さがあって、食後の口を清めてくれるような澄んだ味だ。

カフェランチとは思えない本格的な料理とお茶で、気分はすっかり30年代の上海娘である。


店内中央のソファ席では、2人組の若い女性客がスイーツメニューを楽しんでいた。失礼ながら会話を盗み聞きしていると、推しキャラに関するトークのようだった。
情緒漂う素敵な空間で、本格的な中華スイーツを楽しみながらの推しトーク...なんとも映える女子会の光景ではなかろうか!

何気ない休日の昼下がりが、異国情緒と昭和の風漂う素敵な時間に早変わりする。そんな、日常からちょっと足を浮かせたような特別感を味わいに、また足を運びたくなる空間に出会えた。





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