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桜尽くしと悪事三昧その3(司法試験予備試験令和3年刑事実務)

(ゴールデンウィークとその明けは時間がなく、刑事実務は書けそうだったので、とらあえず書いたものです。もし万が一にもこの答案シリーズを読んでいる方がいたら、飛ばして下さい。下調べが不十分ですし、推敲もされていません。深瀬さんの登場も最小限度にしています。次回の公法から頑張ります。)
桜あんの和菓子と抹茶でティータイムを取り、いよいよ本日の最終科目である刑事実務の講義に入ります。作者の都合でカットされるのは、たいがいですよね。少し授業をのぞいてみましょう。
(深瀬先生の授業。ただし、大幅にカット)
⇒早送り
⇒さらに、早送り
というわけで、今回の刑事実務の問題は、特に奇をてらったとこがなくオーソドックスのような気がします。
もし、罠が仕掛けられているのであれば、勾留の関係では、刑訴法60号各号の他に、「勾留の必要性」に言及することと、準抗告審は原審の判断を尊重すべきとした最判平成26.11.17を参照することぐらいでしょうか。
⇒早送り
設問4については、出題の趣旨に沿った解答ではありません。

次の【事例】を読んで,後記〔設問〕に答えなさい。 【事例】 1 A(35歳,男性)は,令和2年1月18日,「被疑者は,令和2年1月9日午前1時頃,H 県I市J町1番地K駐車場において,同所に駐輪中のV所有の大型自動二輪車1台の座席シー ト上にガソリンをかけ,マッチを使用してこれに火を放ち,その火を同車に燃え移らせてこれを 全焼させ,そのまま放置すれば隣接する住宅に延焼するおそれのある危険な状態を発生させ,も って公共の危険を生じさせた。」旨の建造物等以外放火の被疑事実(以下「本件被疑事実」とい う。)で通常逮捕され,同月20日,I地方検察庁の検察官に送致された。 送致記録にある主な証拠の概要は以下のとおりである(以下,特に年を明示していない日付は 全て令和2年である。)。
① 1月9日付け捜査報告書
目撃者W(27歳,女性)から1月9日午前1時3分に119番通報が寄せられた旨が記載 されている。
② 1月9日付けWの警察官面前の供述録取書
「この日,仕事が遅く終わった私は,会社を出て少し歩き,通勤に使っている車を止めて いるK駐車場の中に入った。すると,駐輪スペースに止めてある3台のバイクのうち,真ん 中のバイクの脇に男が1人立っているのに気付いた。何をしているのだろうと思い,立ち止 まってその男を見ていると,男は,左肘に提げていた白いレジ袋からペットボトルを取り出し, 中に入った液体をそのバイクの座席シート上に振りかけ,そのペットボトルを再びレジ袋に仕 舞った。そして,男は,そのレジ袋からマッチ箱を取り出し,その中に入っていたマッチ1本 を擦って火をつけ,これを座席シート上に放り投げた。その火は瞬く間に座席シート全体に広 がった。男は,火が燃え上がる様子を少しの間見ていたが,私に見られているのに気付くと, 慌てて走り出し,そのまま私とすれ違い,K駐車場を西側出入口から出て南の方向へ逃げてい った。私が119番通報をしたのはその直後である。私が見ていた場所は,男が火をつけて いた場所から約7メートル離れていたが,付近に街灯があり,駐車場の敷地内にも照明があ ったので明るく,視界を遮るものもなかった。男は,胸元に白色で『L』と書かれた黒っぽ い色のパーカーを着て,黒っぽい色のスラックスを履いていた。私が男の顔を見たのは,まず, 男がバイクに火を放った直後に,男がその火を見ていた時である。ただ,この時の男はうつむき加減だったので,その顔がはっきりと見えたわけではない。しかし,私が見ているのに男が気付いた時,男がその顔を上げ,男と視線が合ったので,私は,この時点ではっきりと男の顔 を見ることができた。私は,放火犯人の顔をよく見ておかなければならないと思ったし,すれ 違い様には男の顔を間近で見ることができたので,男の顔の特徴はしっかりと覚えている。男 は,30歳代くらいの小太りで,私より身長が高く,170センチメートルくらいあった。顔 の特徴は,短めの黒髪で,眉毛が太く,垂れ目だった。なお,当時,犯人も私も顔にマスクは 着けておらず,眼鏡も掛けていなかった。」
③ 1月9日付けV(40歳,男性)の警察官面前の供述録取書
「放火されたバイクは私が半年前に200万円で購入し,通勤に使用しているものである。 私は,自宅アパートから徒歩5分の所にあるK駐車場にこのバイクを駐輪していた。本日午 前1時30分頃,K駐車場の管理者から電話がかかってきて,私のバイクが放火されたことを 知り,急いで現場に駆けつけた。私には放火されるような心当たりは全くない。」
④ 1月9日付け実況見分調書
同日午前2時30分から同日午前3時30分までの間に実施されたV及びW立会に係る実況見分の内容が記載され,別紙見取図が添付されている。 現場であるK駐車場は,月ぎめ駐車場兼駐輪場であり,同敷地及びその周辺の状況は別紙見取図のとおりである。K駐車場西側市道の駐車場出入口付近に街灯が1本設置され,同駐車場 敷地内に照明が4本設置されている。被害車両の両隣にはそれぞれ大型自動二輪車が1台ずつ駐輪されており,被害車両の火が消し止められなかった場合には,その両隣の車両に燃え移る 危険があり,風向きによっては,現場に止められた他の普通乗用自動車4台や隣接する一戸 建て家屋にも延焼するおそれがあった。被害車両は大型自動二輪車で,車体全体が焼損してお り,特に車両中央部の座席シートの焼損が激しい。 また,Wが犯行を目撃した地点(別紙見取図のⓦ)と,犯人が火をつけていた地点(同ⓧ) との距離は6.8メートルであり,ⓦ地点とⓧ地点の間に視界を遮る物は存在せず,ⓦ地点に 立ったWが,ⓧ地点に立たせた身長170センチメートルの警察官の顔を識別することができ た。
⑤ 1月9日付け捜査報告書
K駐車場があるH県I市J町の同日午前0時から同日午前4時までの天候は晴れであった旨 の捜査結果が記載されている。
⑥ 1月14日付け鑑定書
被害車両の焼け焦げた座席シートの燃え残りからガソリン成分が検出された旨の鑑定結果が 記載されている。
⑦ 1月15日付け捜査報告書
「現場から南側に約100メートル離れた場所付近の防犯カメラに録画された映像を解析し た結果,1月9日午前0時55分頃,現場方向から進行してきた普通乗用自動車が道路脇に停 止し,運転席から,白いレジ袋を左手に持ち,胸元に『L』の白い文字が入った黒っぽい色の パーカーを着て,黒っぽい色のスラックスを履いた人物が降り,現場方向に歩いていく様子 が確認され,同日午前1時3分頃,同一人物が,白いレジ袋を左手に持ちながら,現場方向か ら走って戻ってきて,同車に乗り込んで発進させ,現場と反対方向に走り去る様子が確認され た。また,同車のナンバーから,その所有者及び使用者がAであることが判明した。」旨が記載されている。
⑧ 1月16日付け写真台帳
短めの黒髪で眼鏡を掛けていない30歳代の男性20名の顔写真が貼付されている。写真番 号13番がAであり,その容貌は眉毛が太く,垂れ目である。
⑨ 1月16日付けWの警察官面前の供述録取書
(警察官が,Wに対し,「この中に見覚えがある人がいるかもしれないし,いないかもしれ ない。」旨告知し,⑧の写真台帳を見せたところ)「写真番号13番の男性が,私が目撃した犯 人の男に間違いない。眉毛が太くて垂れ目なところがそっくりである。私は,この男と面識はない。」
⑩ 1月17日付けVの警察官面前の供述録取書
「刑事からAの顔写真を見せられたが,昨年11月までうちの会社にいた元部下である。彼 に恨まれるような心当たりはない。」
⑪ 1月18日付けA方の捜索差押調書
同日,A立会いの下,A方を捜索したところ,胸元に白色で「L」と書かれた黒地のパーカ ー1着,紺色のスラックス1着及び携帯電話機1台が発見されたので,これらを差し押さえて 押収した旨が記載されている。
⑫ 1月18日付けAの警察官面前の弁解録取書
「被疑事実は,全く身に覚えがない。1月9日午前1時頃は1人で自宅にいた。」
⑬ 1月19日付けAの警察官面前の供述録取書
「私は,自宅で一人暮らしをしている。酒気帯び運転の罰金前科が1犯ある。婚姻歴はない。 昨年11月まではバイク販売の営業の仕事をしていたが,勤務先での人間関係が嫌になったの で退社し,昨年12月から今の会社で自動車販売の営業の仕事をしている。平日は午前9時か ら午後5時まで,会社で事務仕事をしたり,営業先を回ったりしている。自宅から車で10分 の所に両親が住む実家がある。父は70歳,母は65歳であり,二人とも無職で,毎日実家に いる。私は貯金がほとんどなく,両親も収入は年金だけであるため,生活は楽ではない。私の 身長は169センチメートル,体重は80キログラムである。私も両親も,これまで健康を害 したことはない。」
2 検察官は,Aの弁解録取手続を行い,以下の弁解録取書を作成した。
⑭ 1月20日付けAの検察官面前の弁解録取書
⑫記載の内容と同旨。
3 同日,検察官がAにつき本件被疑事実で勾留請求をしたところ,Aは,勾留質問において,「本件被疑事実について身に覚えがない。」と供述した。 同日,裁判官は,刑事訴訟法第207条第1項本文,第60条第1項第2号及び第3号に当たるとして,本件被疑事実でAを勾留した。 同日,Aに国選弁護人(以下,単に「弁護人」という。)が選任された。
4 弁護人は,同日中に,勾留されているAと接見した。その際,Aは,弁護人に対し,⑬記載の 内容と同旨のことに加え,逮捕当日にA方が捜索されて,パーカー,スラックス及び携帯電話機 が押収されたことを告げたほか,「自分は放火などしていない。1月9日午前1時頃は家にいた。 不当な勾留だ。両親や勤務先の上司に,自分が無実の罪で捕まっていると伝えてほしい。」と述べた。 弁護人は,1月22日,Aの勾留を不服として裁判所に準抗告を申し立て,㋐その申立書に以 下の疎明資料ⓐ及びⓑを添付した。
ⓐ Aの両親の誓約書
「Aを私たちの自宅で生活させ,私たちが責任をもってAを監督します。また,Aに事件関 係者と一切接触させないことを誓約します。」
ⓑ Aの勤務先上司の陳述書(同人の名刺が添付されているもの)
「Aは当社の業務の遂行に不可欠な人材です。Aがいないと,Aが取ってきた商談が潰れて しまいます。Aには早く職場に復帰してもらい,継続的に働いてもらいたいです。」 これに対し,裁判所は,同日,㋑弁護人の準抗告を棄却した。
5 その後,検察官は所要の捜査を行い,以下の証拠等を収集した。なお,Aは黙秘に転じたため, Aの供述録取書は一切作成されなかった。
⑮ 2月3日付け捜査報告書
1月14日実施のWの健康診断結果記載書の写しが添付されており,同記載書には,Wの視 力は左右とも裸眼で1.2であり,色覚異常も認められない旨が記載されている。
⑯ 2月3日付けWの検察官面前の供述録取書
②及び⑨記載の内容と同旨。
6 検察官は,㋒V所有の大型自動二輪車に放火したのはAである旨のW供述は信用できると判断 し,勾留期限までに,Aについて,I地方裁判所に本件被疑事実と同一内容の公訴事実で公訴を 提起した。
7 第1回公判期日において,A及び弁護人は,Aは犯人ではなく無罪である旨主張した。 弁護人は,検察官が犯行目撃状況を立証するために取調べを請求した④及び⑯の証拠について,「④については,別紙見取図を含め,Wによる現場指示説明部分を不同意とし,その余の部分は同意する。⑯は全部不同意とする。」との意見を述べ,裁判所は,④に関し,弁護人の同意があ った部分を取り調べた。引き続き,検察官はWの証人尋問を請求し,同証人尋問が第2回公判期日に実施されることになった。
8 検察官は,第2回公判期日前,Wと打合せを行った。その際,Wは,検察官から各種の証人保護制度について教示を受けた後,「Aは人のバイクに放火するような人間なので,復しゅうが怖 い。Aに見られていたら証言できない。それに,私は人前で話すのも余り得意ではないので,傍聴人にも見られたくない。I地方裁判所に出頭して証言すること自体は構わないが,ビデオリン ク方式にした上で,遮へい措置を採ってもらいたい。」と申し出た。検察官は,㋓その申出を踏 まえ,AとWとの間の遮へい措置のみを採るのが相当である旨考え,Wと協議した上で,裁判所 に対してその旨の申立てをし,裁判所は,AとWとの間の遮へい措置を採る決定をした。
9 第2回公判期日におけるWの証人尋問の主尋問において,WがAの犯行を目撃した際のAとW の位置関係を供述した後,検察官が,その位置関係の供述を明確にするため,裁判長に対し,④ の実況見分調書添付の別紙見取図の写しをWに示して尋問することの許可を求めたところ,㋔裁判長は,検察官に対し,「見取図から,立会人の現場指示に基づいて記入された記号などは消さ れていますか。」と尋ね,釈明を求めた。これに対し,検察官が「消してあります。」と釈明したため,裁判長は,前記写し(ただし,ⓧ及びⓦの各記号を消したもの)をWに示して尋問するこ とを許可した。
〔設問1〕
1 下線部㋐に関し,準抗告申立書に疎明資料ⓐ及びⓑを添付すべきと判断した弁護人の思考 過程について,具体的事実を指摘しつつ答えなさい。
2 下線部㋑に関し,弁護人の準抗告を棄却すべきと判断した裁判所の思考過程について,具体 的事実を指摘しつつ答えなさい。ただし,罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由の有無に ついては言及する必要はない。
〔設問2〕 下線部㋒に関し,W供述の信用性が認められると判断した検察官の思考過程について,具体的 事実を指摘しつつ答えなさい。なお,証拠①,③から⑧(ただし,④のうち,Wによる現場指示 説明部分を除く。),⑩,⑪,⑬及び⑮に記載された内容については,信用性が認められることを 前提とする。
〔設問3〕 下線部㋓に関し,AとWとの間の遮へい措置のみを採るのが相当と判断した検察官の思考過程について,刑事訴訟法の条文上の根拠に言及しつつ答えなさい。
〔設問4〕 裁判長が検察官に下線部㋔の釈明を求めた理由について,証人尋問に関する規制及びその趣旨 に言及しつつ答えなさい。
(解答例)
設問1
小問1について
1 勾留の要件については、刑事訴訟法60条1項各号の該当性とともに、
 勾留の必要性についても検討の上、勾留担当裁判官は勾留の要否を判断す
 る。
2 本件については、勾留の必要性とともに同項2号の「罪証隠滅のおそ
 れ」、 同条3号の「逃亡のおそれ」がありと判断されている。
3 そこで、弁護人は、Aが自宅で一人暮らし気軽に逃亡を図れる状況か
 ら、両親と同居させ監督してもらうことで、「逃亡のおそれ」がなくなると
 考えた。 
4 本件は、否認事件であり、直接証拠として、犯行を目撃したWの証言が
 必要になる事件である。そこで、弁護人は、両親に「事件関係者と一切接
 触させないように」監督してもらうことで、「罪証隠滅のおそれ」がなくな
 ると考えた。
5 また、勾留の必要性については、仕事への影響が大である陳述書をAの
 勤務先の上司に書いてもらうことで、勾留によって得られる利益とAが仕事
 に行けない不利益を比較し、仕事に行けない利益が大であることを裁判所
 に考慮してもらおうと考えた。
6 よって、疎明資料aとbを添付した。
小問2について
1 準抗告審が勾留裁判官の判断を取り消すには、その判断が不合理である
 との理由を示さなければならない(判例同旨)。
2 準抗告審として、弁護人がa、bの書類を添付してきたものの、被疑者の
 両親が高齢であり、外出もしないことから、その監督能力に疑問を抱くと
 ともに、収入も年金だけであり、被疑者との同居生活に耐えられる経済力
 もないことから、aの書面に書かれている事項の実効性に疑問があり、勾
 留裁判官の判断を覆すだけの疎明となりえないと考えた。
3 また、Aは営業職で会社を抜け出す時間が自由に取れるので、目撃者と
 接触を図った場合、目撃者を畏怖させるに足りることから、Aが仕事に行
 けない不利益を考慮しても、勾留の必要性は高いと考えた。
4 また、本件被疑事実は、放火罪(110条1項)であり、短期1年以上
 の懲役刑である重い罪であり、勾留の必要性にそのことも加味して、原審
 の判断に不合理はないとし、準抗告を棄却した。

設問2について
1 まず、Wがいた地点からAの顔を識別できたかどうかであるが、⑤によ
 り当時の犯行現場の天気は晴れており、街灯もあり識別が可能であったこ
 とは、同じ状況下で行われた実況見分(④)より明らかである。Wの視力
 や色覚には問題がない(⑮)。
2 Wが、当時、犯人が身につけていた着衣については、防犯カメラ映像で
 確認され(⑦)、同じ柄のパーカーと同色系のスラックスがAの自宅からも
 押収されている。
3 面割りについては、Wは躊躇なくAを選び出した(⑧、⑨)。
4 Aは、現場にいたことを否定しているものの、犯人が使用していた車両
 は、Aが使用及び所有している車両である(⑦)。
5 被害車両がAの元上司であるV所有のものであり、犯行動機については、
 Aが⑬で元「勤務先の人間関係が嫌になった」と供述していることからVと
 Aの人間関係にあると推測できる。
6 以上の補助証拠や間接事実からもAの犯人性は推測できるので、検察官
 は、 Wの供述に信用性が認められると判断した。


設問3について
1 証人の遮へいについては、刑事訴訟法157条の5が規定し、ビデオリ
 ンク方式については、同法157条の6が規定する。
2 証人の遮へいについては、証人が、被告人から見られることによって、
 「圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認められる場
 合」に取られる措置であり、ビデオリンク方式については、性犯罪の被害
 者等が証言する場合に取られる措置であり、併用が可能である(同法15
 7条1項かっこ書)。
3 どちらの方式も、検察官のみならず、弁護人及び被告人の意見を聴い
 て、裁判所が判断する。
4 かつて、ビデオリンク方式と遮へい両者の併用が、憲法82条1項の
 裁判の公開や37条1項の証人審問権の侵害で争われたことから、検察官 
 としては、弁護人の反対意見を考慮した。
5 ビデオリンク方式の場合、原則、「犯罪被害者」が使用する措置である
 ことから弁護人の反対が予想されるので見送り、遮へいも、傍聴人と証人
 との間は、証人が性的被害者でないので、裁判の公開に反するという弁護
 人の意見がでることを予想し見送った。
6 そして、検察官としては、弁護人が反対しても裁判所に認められやす
 い、被告人と証人間の遮へいのみの措置を採るのが適切と考えた。

設問4について
1 証人尋問における図面等の利用については、刑事訴訟法199条の12
 第1項において、供述明確化のために、裁判長の許可を受けての利用が認
 められている。
2 この規定の趣旨は、証人尋問は、口頭で行われるが、証人の証言内容を
 裁判所に的確に把握させるために、裁判所の審査を事前に受け許可を得る 
 ことで、同規則199条の3に記載のある「書面の朗読その他証人の供述 
 に不当な影響を及ぼすおそれのある方法を避け」たとみなされ、図面等が
 利用できるということである。
3 そもそも、④の実況見分調書については、弁護人はWの指示説明部分を
 不同意としている。
4 もし、立会人の現場指示に基づいて記入された記号が残っていれば、そ
 れが指し示すものを証人は理解しており、その尋問による証言は、従前の
 指示説明の内容をなぞるだけで意味のないものになってしまう。
5 そこで、裁判官は、弁護人が不同意とし、証人の供述に不当な影響を及
 ぼすおそれのある方法を除外するため釈明を求めた。
 

 


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