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【ドラマ感想】エルピス-希望、あるいは災い-#7さびしい男と忙しい女

※ネタバレを含みますので視聴後にお読みいただけると嬉しいです😌

まるで罠に絡め取られたかのように忙しくなっていく恵那。一見、ニュースエイトのメインキャスターという花形部署に返り咲き、活躍するカッコいいアナウンサー。

が、押し寄せる日々の海を泳ぎ着ることにエネルギーが注がれるうちに、時間がどんどん過ぎてゆく。

恵那のように事件を追っている立場でなくても、私たちは日々の生活や仕事に追われて、大事なことを忘れてやしないかと思わされる。

筋だけで言えばこの第7回で大きな予想はついてしまった気がする。これからはその経緯が丁寧に描かれるのだろう。

人々が目を向けようとしない冤罪事件、取り上げタブーとされている現実を扱ったこのドラマを最後まで見届けよう、改めてそう思った。

長い前置きでしたが😆今回も気になったセリフを取り上げて、ドラマを振り返ります。



家を出た岸本が久しぶりに母とお友達を交え、3人でレストランでランチをする。弁護士であるお母さん(筒井真理子さん)曰く、

日本はね、検察の方が圧倒的に強いから
いかに世論が高まろうが、検察が嫌がる決定はしない。言ってみれば、彼らもただのお役人だもの。

(強いっていうのは、人事権があるとかそういうこと?ー岸本の友人)

そう。検察に嫌われたらあっという間にとばされちゃうわけ。
だから日本に有罪率が99.9%とかになるわけよ。

検察に言うなりに有罪判決出しちゃうっていうわけですか?
(えー!?きつい話っすね、それー岸本の友人)
(ふたりの会話を食事を噛みしめながら聞く岸本)

そうよ、
この社会っていうのはね、君らの思っているよりずっと恐ろしいものなのよ。
岸本母

上記の話を聞いて、やはり真犯人を見つけるしかないと思いを新たにし、今の経理の仕事なら土日動けるからと村井と飲みながら話す岸本。

ここで恵那の出演するニュースエイトが始まり、松本被告のDNA再鑑定の速報が恵那の口から読み上げられる。


再来月に退官する裁判長ー出世も左遷も気にすることなく仕事出来る人が、

稀にそのような奇跡的な決断を下すことがあると木村弁護士が恵那と岸本に説明する。 

いやあ、あるんですなあ。話には聞いていましたけれど、私も目の当たりにしたのは初めてですよ。都市伝説みたいに思ってました。
木村弁護士 

そんなに検察の力って強くて、裁判所から覆すチャンスは稀少なのか…驚きであり、なんともやり切れない。

これで松本被告が犯人でないという結果が出るのか?恵那が問うが、それはわからない、たどり着くまでに幾つもの高いハードルがあるという。

岸本が問う。どちら側にも、松本さんがやっていないという結果が出て、それで検察側がその結果を正直に言うか?と。木村弁護士曰く

なんとも言えませんねえ。過去の鑑定が間違っていたと認めることは、科警研、ひいては警察、検察の威信を揺るがす由々しき事態ですから、この結果を全力で潰しにかかる可能性もあります。

だが一方で、組織というのは必ずしも一枚岩ではない
(略)。
松本氏が無罪か否かだけではなく、この結果によって我々は、さまざまな現実を確かめることになるんでしょうな。
木村弁護士

木村弁護士の話を受けて、公平な選択がされることを絶対に信じられるともいえないし、絶対に信じられないとも言えないと恵那がいう。

忙しい女とさびしい男



それに対して岸本は「僕は信じられない。公正な結果は出ないと思って、引き続き真犯人を探します」と。

深い絶望を抱えている。表情も暗いがしかし、希望を忘れずにいる岸本。

以前屋上で空を見上げながら「正しいことがしたいなあ」とつぶやいていた頃と気持の方向性は同じでも、その強さは比べようもなくもはや信念に近く、目をつぶることが出来なくなっている。

恵那はまずは信じたいという。今回の裁判長みたいに多くの人に良心が眠っていて……と語るが
岸本は

なに平和ボケしてるんですか、考えることをやめたんですかと指摘する。

そこで恵那は「バカ、バカ、バカ!」と岸本を殴りまくる。彼女をとどめていた堰を切ったかのように。岸本は恵那の核心に触れる。恵那にとって自分をさらけ出せる存在なんだよね。


恵那が一人家路につく頃、村井から着信がある。泣きながら、さきほど岸本とのやり取りを村井に話す。何も分かっていないくせに嫌味を言ってきた、と。



村井がいう。

男が嫌味を言ってくるときってのはなあ、さびしいときなんだよ。(略)

男が泣いてるときってのは、なんだか分かるか、さびしいときだよ。
(村井は女性の膝枕で頭を撫でられながら、泣きながら話している)

だってよ、岸本がよ、さっきニュース見た途端、飲み屋飛び出していきやがってよ。あいつ経理なのに。その背中を見ながら俺は、ああ俺も昔はこんくらいバカだったなあって。(略)
問題はさ俺んなかにもう、あの情熱が消えちまってることなんだよ。年かなあ俺も
村井


そこで冷静になり
「甘えないでください。まだ何も終わってないのに」と電話を切る恵那。
悪いけど、酔っ払いの泣き言を聞いている暇なんて、もう私にはないと。

うん、自分が取り乱しているときに、自分以上に取り乱すのを見せてくれる人の存在って、ここからどうするかを分からせてくれる。

みっともない酔った村井さんの泣き言も、恵那の立ち直りに貢献。

口が悪い村井さんはなんだかんだ、恵那を心配し結果的にフォローして、いい(元)上司だ。そして弱いところ出しててとても人間らしい。


結局、弁護側はDNA不一致、検察側はDNA不検出で再鑑定不能という結果に。

一瞬の望みは消える。

食堂で話す恵那と岸本。

恵那は以前、斎藤が急に特集の放送をやめさせようとしたことがあったと振り返り、

大門副総裁が八飛市出身で当時捜査に圧力をかけたのではと考えたので、関係者周辺を探ってほしいと伝える。


そこで岸本に電話が。昨年八飛署で事件当時の話を聞いた平川刑事だった。


昨年は「何も話すことはない」と言ったが「全部話したい」と言ってきた。おまけに50万せびりながら。。

今回の話の恐ろしくなるような要所はここだった。馬鹿らしくなったので全部話したいと平川刑事。

無実ですよ。松本は。ご明察通り、うち(の署)は無実の人間を犯人にでっち上げたんです
当時の捜査担当・平川刑事


でもやっぱり、組織が一度でも罪を犯してるとダメなんですよね。
抜けない毒針みたいなものなんですよ。時間をかけて全身に毒が回って、気が付けば再起不能。自滅への一本道ですよ。

(略)

松本の逮捕がでっちあげなのは現場の皆が感じていましたよ。と同時によほどの裏事情があるんだなってのも感じてたんですよ。(略)これは僕の憶測ですけど、真犯人をどうしても逮捕させたくないみたいでしたね。

誰が?

うーん、かなり上の。署長とかそういうレベルじゃなくて、さらにずっと上の人間だと思いますけれどね、そっからの強い圧力があり、一方で地域住民やマスコミからの「まだ犯人見つからないのか?」っていう突き上げがありで、もう署ぐるみで犯人でっちあげるしかなかったんじゃないでしょうかね。

変わりに逮捕出来るならだれでもよかったんでしょうけど、松本はちょうど身寄りのない、うらぶれた中年男で、しかも家出少女なんかかくまっていた。

たぶん最高におあつらえ向きだったんでしょう。

それって真犯人が誰かって分かってたってことですよね?

ま、上は知ってたかもですよね。僕らはいまだに知らされてませんけど。(略)署内でこの話は超タブー。開けちゃいけないパンドラの函(はこ)なんでね。聞かない、考えない、話さないで僕らは15年間思考停止させられてきましたから。(略)
知ったら、余計な悩みが増えるだけですから。
でもいまとなっては、真相の解明を望んでいるわけです。(略)

僕からのアドバイスとしては、12年前の事件じゃなくて、去年の事件を追ったほうがいいってことですね(略)あっちは手掛かりとか証拠とかまだ手付かずですから。

(略)

僕らはもう終わってるんですよ。毒の回った頭で走り続ける死にぞこないなんです。だから岸本さん、これ以上罪を重ねないように早く息の根を止めてやってくださいよ。

こんな間にも、以前インタビューに応じてくれた井川晴美さんの姉が、被害者遺族の会の結成に立ち上がり、岸本もその会合に呼ばれる。

まずは結成の記者会見を開きたいと被害者姉の井川すみかさんが話すが、その場にいる人たちの反応はいまひとつだ。


昨年被害にあったばかりで、遺族が来ていなかった中村優香について岸本は考えていた。

平川刑事が置いていったUSB?資料によると、当時14歳だったが、18歳と偽り、デリヘルでアルバイト。常連客もたくさんいた。
遺族は34歳の母親と二人の幼い妹弟の3人暮らし。

事件現場で花を手向けながら、中村優香さんに心の中であいさつをする岸本。

でも僕みたいにお気楽に生きてきた男には彼女は何も打ち明けてくれない気がした、と心の中でつぶやく。

帰り路、大門副総理のポスターを見る岸本。八飛市は彼のポスターだらけ。なじみになった商店街の喫茶店でマスターから土地持ちの本城氏の話を聞く。

大門とは幼馴染でなにかと懇意にしているらしい。

この本城家の長男が八飛の商店街のシャッターが閉まっていた店をやっていた男だったという。

岸本から電話で報告を受けた恵那に戦慄が走る。恵那も以前対面したあの男だ。

男の名前はホンジョウアキラ(永山瑛太)という。


この回は「クソっすね」とゴードンが言っていた、平川刑事の告白が特に圧巻の内容だった。

そんなことがあってほしくないと思うようなことがありありと具体的に語られる。

BGMは不協和音に近い音楽(?音楽と呼べるかも分からない効果音だった)

触れてはいけない内容の近くにいる者は、転勤や定年を待っている、という。

そんな人ばかりではないのかも知れないが、なんともリアルなフィクションだ。

フィクションだけれども、冤罪事件が生まれるときとはこういう幾つもの要素が重なり、関わっている人がたくさんいるにも関わらず、

途中で暴かれることなく進んでいってしまうのだろうか。

だとしたらなんと恐ろしく、悲しいことだろうか。

近くに悪があるのに、気付かない振り、見ない振り。

世の中の冤罪事件がすべてひっくり返されることはないのだろうか、せめてこの話だけでも希望を感じられる展開になってほしい。

また次回を楽しみにしております❣