今日はどこまで。

運転手のドライブさんは街行く人々に思いを馳せた。

けどなんも浮かばない…

うかうかしてると今日のノルマ達成できなくなるぞ!
と自分に言い聞かせて今日も元気に車を走らせる。


「今日はどこまで」
ドライブがそう告げると女性は口を開いた。

「東京の恵比寿までお願い」
一瞬思考が止まった。
なぜならここは新潟なのだ。

ドライブは新潟生まれ新潟育ちだ。豊な自然と豪雪という環境でスクスク育った。身体は地元のコシヒカリによって支えられているという自負があった。

「ここ新潟だよ⁉︎」
驚きのあまり敬語を使うのを忘れてしまっていた。
しかし、女性は特に気にする様子もなく、返答した。
「わかってる、お金ならあるからお願い」
車窓からの景色を眺めながらそっけなく告げた。

まるで私がお金だけを心配していると、そう思っている様子だった。
正直、お金を稼げることより、東京まで運転しなくてはいけないストレスの方が大きかった。

「わかりました。では恵比寿まで向かいます」
返事もなく聞いているかもわからなかったが自慢の栄進丸を走らせた。

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6時間近く会話もなく、恵比寿に到着した。

さぁ明日は誰を乗せるのだろう。変哲のない日々へと栄進丸を走らせる。





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