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11月20日(2004年) 史上最大

この日は、浦和が初めてリーグ戦のステージ制覇を決めた日である。名古屋に敗れたものの、2位のG大阪も横浜FMに敗れた為にステージ優勝が決まった。場所は汗と涙と思い出の詰まった駒場、1993年のJリーグ・ホーム開幕戦で完敗した名古屋がこの日の相手、そしてチャンピオンシップで対戦する横浜FMの援護射撃を受けての優勝決定と何か因縁めいていたが、初めて味わうリーグ戦での歓喜に喜びいっぱいだった。三菱自動車も翌日の新聞各紙に、歓喜の広告を出した。

試合以上に印象に残っているのが、選手入場時に撒かれた「史上最大」の紙吹雪である。試合を生中継したNHKの内山アナが「まるで大雪のような」と思わず実況した紙吹雪は、詰めかけた観衆の、テレビで見ていた視聴者の文字通り度肝を抜いた。私は西側スタンドにいたが、視界を遮るほどの本当に「大雪のような」紙吹雪は、その日の青空をバックに奇麗に映えていた。

この紙吹雪は事前にロッソ・ビアンコ・ネロさんから呼びかけがあり、私も職場で昼休みに自宅から持参した、また職場で捨てられていた古新聞をハサミで切って作っていた。以前の経験でわかってはいたのだが、一人で昼食休憩の1時間に全力で切っても大した量にはならない。休日も動員してやっとデパートの紙袋が満杯になる程の紙吹雪を作り、試合当日に持参したのだが、多くのサポが作成したものを持ち寄ってもなお、スタンドから撒くには足りなかったらしい。当日抽選が終わると、駒場の待機列で紙吹雪作成が始まった。クルマで古新聞をかき集めてくるサポ、その古新聞を待機列に配るサポ、そして待機列では私を含む多くのサポが、ビニールシートの上で開門ぎりぎりまで新聞紙をビリビリやって紙吹雪を作っていた。この手作り感こそが、浦和のヴィジュアルの最大の醍醐味かもしれない。

入場すると、今度は各席への紙吹雪の配布である。コンビニやスーパーのビニール袋に1人分ずつ入れられた紙吹雪が各席に配られる。列整理で遅れて場所についたサポには、周囲のサポが紙吹雪を分けながら撒くタイミング、撒き方を説明した。こうして撒かれた紙吹雪は見た目の奇麗さ、史上最大の量の迫力だけではなく、作った、配った、撒いたサポ一人一人の汗と、思いとが詰まっていた。それを私も体感したから、なお美しく感じられた。

撒かれた紙吹雪は、足元に置いたバッグを隠さんばかりに、試合中スタンドを埋め尽くした。その「史上最大」の紙吹雪は試合後、サポによって奇麗に片づけられた。大きなゴミ袋の山が幾つも出来ていた。スタジアムを後にするとき、私のいた西側スタンドには紙吹雪の一片の欠片さえも残っていなかった。これもまた浦和サポの真骨頂である。


浦和駅まで戻ると号外が配られていた。手にすると、「史上最大」の紙吹雪の姿が「初V」の文字とともに紙面を飾っていた。感激と充実感とが私の心を占拠した。酒蔵「力」周辺の紙吹雪の再現のような盛り上がりを目の当たりにして、私は家路に就いた。心地よい疲れに、乗り過ごしに気を付けながら電車のシートに腰を下ろした。思い出多き1日だった。

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