鹿島アントラーズ戦 (Home) - 番外編 鈴木優磨選手

 28歳。まだ若い。もう随分と長くJリーグきっての悪童役を演じ、また各チームの脅威となり続けてきた印象がある。
 それもそのはず、20歳になる年の2016年から主力級の主力の一人として鹿島の攻撃を担い、若いうちには多くのタイトルを獲得するチームの一員となった。その後タイトルには恵まれていないが、海外にいた数年を除き、鹿島の最前線を物心両面で支えてきた。
 この試合でも、ジュビロにとって厄介な存在であり続けたが、不思議なことに、オープンプレーからはそれほど危険な匂いを感じさせなかった。なぜなのか。はたまたそれは、一部で確執が噂されている現代表監督がなかなか当人を代表に招集しない理由と結び付けられるものなのか。

 これまで10~20試合はじっくりと鈴木優磨の出場試合を観てきて、そしてまた改めてこの試合で観察し、いくつか危険な香りに欠ける理由が見えてきた気がした。

 一つには、ペナの幅から頻繁に外れてしまう。つまりは、サイドのスペースに流れてくることが多い。ポストは確かにうまいのだが、恒常的にゴール前から遠いイメージがある。いくらフィジカルを鍛えようが、ペナの外からそう簡単にシュートが決まることはない。
 昔、まだ金崎が健在だった頃、鈴木が左サイドハーフで使われていたことがあった。その時の方が今よりも滑らかに、居心地良さそうにプレーしていたのは、記憶の錯綜だろうか。鈴木は本質的にはサイドハーフが適性というのは、何だか禁断の扉を開けてしまったような気もするが。縦に強いウィングではもちろんない。けど、なんでもできる。そしてなんでもできる中で、サイドで前を向いて隙を突くプレーがもっともナチュラルに見えるのだ。

 二つ目。一つ目にも関連するが、ペナ内でガツンとぶつかり合うプレーが少ない。そこに、元鹿島の大迫勇也とは明確な違いを認識せざるを得ない。
駆け引きの一環と思われる、いわゆる「かます」行為は中盤付近で実行することが多い。ゴール前ではいたってノーマルな印象。ゴール前では存外、よく言えばスマートな身のこなしに終始し、悪く言えば泥臭さ、強引さに欠ける印象がある。と言うより、中山雅史的なごっつあんの記憶が、ほぼ全くない。
 余談だが、上述の「かまし」は、以前本人が強く影響を受けていると言っていたプロレスの要素を多分に含んでいるように感じられる。ジュビロ戦でも、開始2分に鈴木海斗にかまし(それもやはり中盤付近)、6分あたりにかまし返されたが、こういう場面ではあまり本人は激高することは少ない。ゴール前以外では少々のかましは皆にとっての権利、という考えの持ち主なのかもしれない。

 第三に、存在感があり過ぎて、また、なんでもやり過ぎて、ゴール前でフリーになれない。虚を突くポジション取りができない。見た目(金髪)と、ちょっとガチャガチャしたような、一つ一つにぎこちなさを感じさせるアクション。それだけでも存在感が際立つ。もとよりサイドで起点になることが多いのだが、はたいた後にするするっとペナに入っていく、というイメージが極めて薄い。むしろ、相手を敢えて引き連れていくかのようにのっしのっしと突進していく。敵陣に勇猛果敢に斬り込んでいく武将のように、あるいは、魚の大群を追って突っ込んでいく鮫のように、周囲の耳目を自ら集めるかの如く。
 なので、センターフォワードながら、エアポケットを突いてのゴールが少ない。守る側から見て、悔しいのは100%崩されてのゴールではなく、崩され切っていないながらポジション取りの妙であっさりと奪われたゴールだ。実際、サッカーの世界では全得点の内、完全な崩しを経てのゴールは僅少であることは周知の事実だ。巧妙な仕留め方を心得た小林悠はJリーグでずっと危険なハンターであり続けたし、最近では宇佐美の効率の良さが群を抜いている。

 見た目はセンターフォワードだし、ポジションもセンターフォワードなのだけれど、内実はセンターフォワードでない選手。抽象的にまとめるとこうなる。そこには、その万能性や献身性、稀有なキャラクターも含んでいる。貶めているわけではない。同時に、煌びやかなウイングの才能に恵まれた現代表チームへの落とし込みづらさにも、自然と行き着いてしまうのだ。

 


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