アルビレックス新潟戦 (Home)

  連敗を止める勝利。ホームで今季初得点、初勝利、初クリーンシート。良いこと尽くめなんだけども、どこか、腑に落ちないというか、起承転結があっての快勝、という感じがない。論理的な展開がない。結局、覚醒したジャメの身体能力と、ペイショットの高さか、というあっけなさというか。それらももちろんすごい武器になっているし(と言うより、現時点でほぼ唯一の、が正しいか)、この拮抗したリーグにおいて武器を前面に打ち出すのは至極まっとうな判断なのだが、先期からの積み上げという観点では、中途をぶった切られたような、映画を観ながら寝落ちしてしまって、目覚めたらもうエンディング、のような、まさにストーリー性の欠如を感じさせる。
 唯一、手応えのある感想は、やはりCBの一角は伊藤槙人より鈴木海音の方がいいんじゃないかということ。単純に速いし、身のこなしもより正確だから、余計なファールが少なく、クリーンにボール奪取できる。見ていて「あ~あ」という嘆息が出るのが少ない。ラインコントロールの妙とか、リーダーシップとか、コーチングとか、はたまたリカとの呼吸とかあるのかもしれないが、直近2試合のパフォーマンスを考えれば、鈴木起用は是非継続してもらいたいものだ。

 自軍の勝利よりも、自分はアルビレックスの戦いぶりの方が印象に残ってしまった。前節からフィールド全員入れ替え。完全なターンオーバー。それでもこれだけの練度を見せられるのは大したものだと感心した。パスサッカーでJ2が上がり、J1の舞台で残り続けるんだという決意を感じさせるだけのベースが確かにあるように思う。
 結果は無得点での敗戦であり、アルビファンとしては言いたいことの一つや二つはあるだろう。事実、戦術はしっかり共有されている印象はありつつも、パスサッカーの肝と個人的に考えるSBやセンターハーフからの前線への効果的な配給は少なかったし、アタッカーがアイデアを発揮するシーンも少限られていた。失点シーンではDF陣の集中力欠如が露呈してしまった。それでも、チームのアイデンティティとしての繋ぎという意識をゲームを通して感じさせてもらったし、ターンオーバーとは言え出場するからには爪痕を残してやろうという野心の発露も随所に見られた。
 改めて今シーズンのスタメンを振り返ってみると、前節からはスタメンはフィールド全員が入れ替えながら、小見を始め2~3人はレギュラークラスと言える立場にいることがわかる。ジュビロであったらどうか。上原、リカ、ジャメを残して全員入れ替えなんて可能だろうか。現時点ではちょっと現実的ではない。J1昇格から2年目だが、これまで徐々に肉付けし、今の選手層を形成していったのだろう。素直に羨ましく思う。ジュビロも今シーズン残留を達成し、プラスの方向でのチーム強化を実現してほしいものだ。降格すると、流出の危機への対処という、マイナスの方向に嫌でも引っ張られることになる。

 アルビに着目したのは、昨シーズンジュビロが最終節で昇格を決めてからすぐ、Fマリノスとアルビのゲームを見て強く印象に残ったからでもある。来るJ1の舞台はどの程度なのかと挑戦者目線で観戦したが、驚いてしまった。マリノスの強さではなく、それに十分に対抗していたアルビのサッカーに。雨が降っていた中での試合か、パス回しに定評のあるホームチームの便宜のため水を撒いていたのか忘れてしまったが、アルビの選手たちのパスはピッチ上を本当に気持ちよさげに滑っていた。マリノスのそれよりも小気味よく、快活そうに見えた。自分の中の挑戦者は、とても敵わない、と降参していた。
 その時のゲームに比べれば、今節はうまくいっていない部分がかなり多かっただろうと思う。パスサッカーのキーマンは高木、秋山あたりか。折り返しのアルビホーム戦では、怖いもの見たさ、ではないが、あの流麗でスピーディなグラウンダーのパス交換を見せてほしい、という思いがある。アンビバレントだけれども。
 それと、敵将の松橋監督の雰囲気、コメントにも好感を持った。昨シーズンあれだけのサッカーを見せて、かつ、結果も伴っているのだから、自信もあるだろうし、逆にこういう完封負けの時はストレスが表に出やすいものだと思う。でもこの監督は、"私"の感情をうまく包んで、プロ意識だけを表出するのが自然にできるタイプなのだと見受けられる。負けていろいろ考えるし、いろいろ計算違いも痛感しているのだろうが、雑にそれらを見せることがない。組織から余計なブレを排除できる、すなわつ継続的に結果を出せる素養の持ち主だと思う。

 最後に戻ってジュビロの話。今節の殊勲は、DF陣とツートップ。鈴木の奮闘は前述の通りで、リカの実力は周知のとおり。松原もポカがなければ及第点はクリアできる実力はあるし、植村もだいぶ慣れてきたようだ。ジャメの代表選出はかなりあり得そうな雰囲気になってきて、無双、と言っても過言ではないくらいの次元になりつつある。相変わらずペイショットのパスはちょっと心もとないが、高さは間違いなく脅威で、ヘディングでの落としは足に比べてかなり正確である。
 横内ジュビロの要諦は組織力、それも中盤での連携にあるはず、だったのだが、その強みは今のところ発揮されていない。そこに複雑な思いを抱く中、さて、次の京都戦はどうするのか。指揮官が哲学を放棄する気がないのは平川のスタメン継続に現れていると推察するが、サイドではどうも芳しくない。やはり一度短時間でも中央での起用を試してみるがの良いと思う。一方で当座の勝点確保に向けては、中盤も難しいこと考えずにサイドでの突破とツートップ援護に注力するのがベター、とも思う。
 今節の勝利で、提言の方向性を見失ってしまった。
 
 

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