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雨の降り始めの匂いがする

先日、雨の中を歩いての帰りみち、ほこり臭いような、日向臭いような匂いがした。ああ、雨の降り始めの匂いがする。

これは、雨が降り始めて、アスファルトが濡れはじめた時の匂いだ。

そこで思い出したのはずっと昔コンサートの帰り道の事、何を聴いたか覚えがない、多分弦楽四重奏を聴いてホールから出て歩き始めた時に、雨が降ったな、と思った、その時、すぐ後ろで「雨が降ったよ、ほら雨の降り始めの匂いがするでしょ、アスファルトが濡れる匂いだよ」と、饒舌に話す若い男性の声がした。

おやおやと、聞き耳をたてると彼はそのあとも、昨夜どんな夢みたかを説明するような他愛のない話を続けて、連れが相槌を打つ気配がある。そっと振り向くと、大学生のような2人連れ、彼が懸命に話す言葉を聞いている男性も若い。

驚いた、私も雨の降り始めの匂いがするなと、思っていたので。
 
駐車場に向かって曲がって、もう彼らの声は聞こえなくなってしまったが、同類の発見は忘れられない想い出。

あんな他愛のない事を聞いてくれる連れがいるなんて、彼はめぐまれているな、今はどうしているのかな、私はここに他愛のない事を書こう、読んでくれる人がいたらシアワセなことだなと思う。

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