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夜明け前

私が考えついたこの酒をつくることを、小野酒造店さんが引き受けてくださらなかったら、飛騰燈火はいま、この世界に存在していない。

原材料からパッケージに至るまで何一つ妥協せず、全てにこだわり、どこをとっても「それがこの酒の根幹だ」と言えるくらいまでやり切って生まれてきた飛騰燈火。

けれどこの企画は、やはりまずはじめに、小野酒造店の小野社長さんがいなければ、どうやっても実現できなかった。
そのことに、心から感謝している。

時系列で記録を残しておきたいこともあり、早くその出会いからのストーリーに触れたい…。
半年以上も前に、その時のことを書いていたのに、最後の最後を迷って投稿できないでいるうちに、原稿を入れていたパソコンが壊れてしまった。
その原稿が一番、気持ちをリアルに率直に記せていたから、今新たに書き直すことをためらっている。
それでも、とにかくこの大前提だけは、早くここに記しておかなくてはならないと思った。

小野酒造店さんは、私の出身地である、長野県上伊那郡辰野町にある酒蔵で、『夜明け前』というお酒で国際的にも高い評価を得ている。

『夜明け前』ー。
島崎藤村の作品からとられたこの名前を、改めて素晴らしいと思う。

私は、言葉に込められた力を強く信じているので、そんな『夜明け前』をつくっている小野酒造店さんに、この、人間の原点に回帰しながら新たな世界の価値観を切り拓かんとする酒を醸していただけたことに、とても大きな意味を感じている。

夜明け前ー。
ふいに目が覚めてしまうとそこはまだ暗く、夜に戻ってもう一度眠りにつくことも、思い切って起き上がることも、どちらも選択できる曖昧な境界地点だ。

ここから明けていく、本物の美しい世界の始まりの光を見るために、私はしっかりと目を開けていようと思う。


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