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絵羽模様と和裁①

こんにちは、ものぐさ和裁師です^^

今回はとある動画の感想を仕立て屋の端くれとして僭越ながらアンサーを書き記してみます。
以下は長文となるため2回に分けてまとめていきたいと思います。

では早速ご紹介したいのはこちらの動画となります。

まずはこちらでお話くださっている内容を、簡単に4ポイントでまとめてみます。

※以下、敬称略。尚、本noteは全て絵羽えば模様に関するものとなります。
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「衽の合口あいくちは動かしてはならない」と考えている製作者のお話
身幅の柄合わせに対する観点が仕立て屋と製作者とでズレているかもしれない?
「脇の柄」は合わせるべきか?※次回へ
衽幅を広くしても問題はないのか?※次回へ

◯絵羽模様とは訪問着を代表して、背〜衽等にかけて柄の合口のある模様のこと。
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note公開にあたり(有)染色補正森本さんご意見、ご協力を誠に有難う御座いました。

訪問着の絵羽模様の一例
(古着を購入したもの)

※動画内容4ポイントの内③と④については、こちらからご覧ください↓


①衽の合口問題


——「衽の柄は絶対に動かして欲しくない。脇は犠牲にする」

これは京刺繍職人の春駒さんが動画内で仰っているお言葉です。どういった事情かと言うと

柄合わせをした振袖の上前見頃の様子

※ものぐさの私物はインクジェット振袖しかなく良い例にはなりかねると思います。申し訳ないです。

基本として訪問着を代表とする絵羽付け模様の着物は、着物全体を広げた時に一枚の絵に見える様に、縫製に於いても気を配りながら行われています。

春駒さんは製作時点で決めた衽付けの位置は動かさない脇で柄がズレる場合は合わなくてもよい、と真正面からの構図を最優先で製作されているとご説明くださっています。

⚠️つまり仕立て屋が柄合わせ身幅を優先するということは、製作者側の想定と違う構図で仕上がっていることもあると仰っているわけです。

この振袖で例えると衽幅15㎝の場合
柄合わせ身幅は最大と最小で4分(1.5ミリ)変わる

この4分のために全体の構図がズレるなら脇を捨てて構図を最優先すべきとも考えられるわけです。(実際には4分のうち、どの位置が制作時の衽付けにあたるのか分からない)

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ものぐさ和裁師としてのアンサーは以下です。

A. 脇の柄を合わせるかどうかは顧客側の希望によっても変わり、可能な限り全ての柄が合っている状態でお納めできることを要望されている場合が殆どです。そのため衽付けは脇の柄合わせを優先して決定されることがあります。

衽幅が15㎝指定の場合

前姿が最優先ということはよく分かります。しかしながら製作者の想定した「衽付け」の正確な位置は仕立て屋には分からないことが多い。

仕立て屋の手元に届く反物は加工済みの場合が殆どで、絵付け時点では残っていたであろう衽付の出来上がり筋は、一切残っていないこともしばしばです。

仕立て屋が分かることは、この振袖の場合では最大で4分柄合わせ身幅が変わる。という事実のみです。それを踏まえて全体の構図とお客様の寸法を見比べながら仕立てを行っているのです。


②製作者と仕立て屋とでは柄合わせの観点が違うのか?


🍓製作者の立場
背・衽の柄は絶対に動かさない、脇はズレてもよい。

⭐️仕立て屋の立場
背・衽の柄は絶対に合わせる。脇は最悪ズレてもよい。

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↑二者を見比べてみてください。
両者は一見すると同じ意味にも取れますが、正確には全く違う内容となっています。

製作者側は元々絵付けした衽付けは絶対に変えてはならない。そのため身幅を加味した場合脇の合口の柄がズレることは想定内であるということ。

つまり絵付け時点で、衽付け幅を7㎝に取ってあれば仕立て時も7㎝であり、柄合わせ身幅は確定しているというわけです。(※前後の割り振りは変えられる)

⭐️動画内で「脇から合わせる和裁士さんもおられる」と仰っていますが、厳密に言えば脇から合わせているのではなく、脇と衽を仮置きして柄合わせ位置を決定しているのではないかと考えています。(発端となった当初のご意見を伺っていないので何とも言えない)

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A. 絶対に動かしたくない衽付け位置へ星⭐︎が付けてあると縫製時分かりやすい。(星とは絵付けの目印となるもの)

仕立て屋はあくまでお客様の希望を最優先(製作者とは繋がりがないためそうするしかない)です。仕立て屋と製作者間で上手く連携プレーが取れないものなのか??近くて遠い両者のままで良いのだろうかと疑問が湧いてしまいました。


——長くなる為、一旦ここまでが今回の内容となりますm(__)m
動画へのアンサー途中なので、引き続き②こちらのnoteをご覧くださいませ↓↓


以上、ものぐさ和裁師でした🪡

ものぐさ和裁師は着物と和裁の振興に貢献したいと考えています。美しい着物を未来に残していくためにサポートをどうぞよろしくお願いいたします。