美とは何か

美とは、何か。
ニーチェは『悲劇の誕生』の中で、美とは、アポロン的なものとディオニュソス的なものの出会いだとしている。

ここに、美しい湖がある。誰しも、湖面に見惚れる。しかし、その湖が、底なし沼だったら。これが、アポロンとディオニュソスである。

美は、アポロン的な美しさと、ディオニュソス的な破壊性とを兼ね備えていなければならない。

俗っぽく言えば、美人だけど、やたらと金のかかる女だと思えばいい。
それでも、その女に手を出すかは、その人の美的価値観による。
素人が、軽い気持ちで、手を出せば、大やけどを負うこと、間違いない。

また、美は、多様性を帯びている。
かつては《ミロのヴィーナス》を頂点とする美意識が、人類を席巻していたが、今日では、アフリカのニグロ彫刻に美を見出したピカソなど、美は一律ではないことが、主流になってきている。

西洋の遠近法や余白を未完成とするものの見方も、印象派やセザンヌが東洋美術と出会ってことで、余白は無限の空間を表すことになった。
余白は、未完成なのではなく、観者の想像力に委ねられているのであり、まさに融通無碍なのである。

このように、とりわけ、20世紀以降、美は多様性を持つようになった。
それゆえ、我々は、誰かが示した美の基準に従う必要はなく、また、従うこともできなくなった。自分自身の観察眼のみを信じ、美を探求するしかないのである。

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