見出し画像

物語:ほしぞらのおか〜月の章〜

移植を考えた日:2023/04/13
作成開始日:2023/05/04
完成日:2023/06/01

原作:五の物語 叶えられしたり
原作者:過去の自分

読み終わるまで約12分です。作者の感覚的にですが。

(まえがき)
この作品は、2年半ほど前に書いた物語です。
ノートに書いたアナログ小説というものです。それをnoteに移植しました。
再現重視で書くので、表現的に変な部分もそのままです。誤字脱字は直します。

(注意してね)
以下の要素が含まれます
・ドラゴン(知能あり。人間の言葉を喋るよ)
・ファンタジー世界観
・異種族間交流

名前被りなどは、意図して真似をしていません。すべてオリジナルで思いついたものです。何か参考にしたかもしれないけれど。
また、この物語はフィクションです。

星の章からの続きとなりますので、先にそちらを読んでからだと話が繋がります。

それではどうぞ






太陽と月は、よくお似合いだと言われるけど。
そんなわけないじゃない。
だって、格が違いすぎるもの。



半月の日。
「最近、なんだかうるさいわね。」
流れ星。大きなエネルギーを持つ、チョット危ないもの。
3日ほど前から、星のエネルギーが活発化した。
「まさか、アイツじゃないよね…。」


ほしぞらのおか。さっそく気配を感じた。
おそらくアイツも気付いたはず。

「何者だ?我のテリトリーを侵す者は。」
「ハーイ、元気してる?」
「ムーンリングか。今は忙しいから去ってくれ。」
「相変わらずツンツンしてるわねー、そういうのは見た目だけにしなさいよ。」
「だったら構うんじゃない。それと、我はスターダストドラゴンだ、ツンツンではない。」
「じゃあワタシのこともベールって呼んでよこのツンツン。」
「だから我はスターダストドラゴンだと」
「ツンツン。」
ツンツン「おい、やめろ、なんだこれは?名前変えるな」
「細かいことはいいじゃない。」
ツンツン「生意気だぞ、ハコイリめ。」
ハコイリ「ちょっと、やめてよ。」

・・・・・


ベール「それで、スターは何かあったの?」
スター「何も。」
ベール「それはどうかしら?だって、ここ最近星のエネルギーが乱れてるもの。」
スター「久しぶりに暴れたくなっただけだ。」
ベール「らしくないわね。あなたいつもはおとなしいのに。」
スター「それは昔の話だ。」

ベール「そういえば、ちょっと前の人間、今日は来てないわね。」
スター「…それが何だ?」
ベール「何かあったの?」
スター「別に、いい加減うんざりしたから…少し…な。」
ベール「まさか、ひどいことしたの?あのこ人間なのに。」
スター「はぁ、面倒なことを思い出させるな。」

ベール「ちょっと、どこ行くの?」
スター「気分が悪い。」

ベール「困ったわね、あのこ面白そうだから話しかけてみたかったのに…人間ってもろいから扱いが難しいのよね…。」
独り言を言うのは年寄りくさいけど、どうせ他に誰も聞いてないし。

ベール「スター…変わっちゃったな…。」
月竜は、空を見上げながら今と昔の景色を重ねていた。

またひとつ、星が流れた。

満月の日。
ベール「今日はいい日ね、流れ星がなければ、だけど。」
光っては落ちる、流れ星。
ベール「願いが叶う、か。」
もし、本当なら、変えられるかもしれない。間違えてしまった過去を。でも…
スターはきっと自分から願うことはない。
だから、ワタシが今願うなら、それは…


キラキラお星さま、叶えたのは、月竜の願い。


新月の日。
「お星さま、お星さま、わたしのところへ来てください。」
スター「…。」

「どうか、どうか、来てください。」
スター「…ホシ。」
「えっ?」
スター「っ!」

「お星さま?」
・・・・・。

「そこに、いるの?」
・・・・・・・・。

「…お祈りしなきゃ。」


半月の日。
「お星さま、お星さま…。」
スター「…。」

「会いたいな、お星さま。」
スター「……わからない。」
「近くにいるの?」
スター「…。」

「そこにいるのはお星さま?」
スター「っ!?ダメだ」
「どうして、お星さま、行かないで」
スター「すまぬ…」
「お星…さま。もう、あんなに遠くへ…。」


ベール「あれは…もしかして、あのときのこかしら?」
話しかけるべきではない。今は、まだ。
ベール「月が満ちたら、会いましょう…。」



満月の日。
「お星さま、お星さま。…どうか願いを聞いてください。」

・・・・・。

「お星さまがいない…どうして?」


ベール「スターがいない…どこ行ったのかしら。」
過ちを正すために過去に戻ったのに、スターは一歩をふみだせないでいる。
それはきっと、相手が人間だから。
だったら、ワタシにできることは…


「今日が、最後の日なのに…」
ベール「こんばんは、人間さん。」
「お星さまじゃない、あなたはだれ?」
ベール「ムーンリングドラゴン…って言っても難しいよね、ベールで良いわよ。」
「えっと…お月さま。」
ベール「ええ、それで良いわ。ところで、最後って?」
「今日はね、わたしがここにいられる最後の日。」
ベール「どこかへ行ってしまうの?」
「うん。明日はりょこうが終わって、大きな街に帰るの。」
ベール「都会の子だったのね…」
「でも、わたし、まだお願いをかなえてない。」
ベール「どんなお願い?」
「お星さまに、会いたいの。そのためにここにきたから。」
ベール「スターに?願いを叶える者に会うのが願いなの?」
「うん。」
ベール「なんか、そういうのはじめて聞いたわ…」


ほしぞらのおか。願いが叶うとうわさのスポット。
星の力に満ちていて、人間にもそのパワーは感じとれる。
実際に今まで何度も願いは叶ってきた。と言っても、小さな願いしか叶わないけど。
星そのものに願いを叶えるパワーはない。でも、流れ落ち、燃え輝くその瞬間だけ、願いを叶えるパワーが生まれるという。まぁ、スターがこのことに気付いてるかはわかんないけど。
とにかくこの子は、うわさを聞いて、旅行と見せかけてここに来るのが目的だったのね。
でも、スターは人間を相手にしない。

ベール「ワタシが願いのお手伝いをしてあげる。」
「どうすればお星さまと会える?」
ベール「ワタシの体を貸してあげる。この姿なら、スターに会えるわよ。」
「わたし、お月さまになっちゃうの?」
ベール「心配しなくても大丈夫。すぐに慣れるわ。」
「お星さまに会えるなら…わかった」


ピカピカピカピカお月さま。放つ光は神秘の青。


「これが、お月さまの姿…」
ベール『気を付けてね。その姿でいられるのは、今日だけだから』
「あっ…わたしが倒れてる」
ベール『そうね…じゃああなたの器はワタシが代わろうか。』
光が人間に乗り移り、同時に意識も目覚めた。
ベール「よいしょ…これが人間の体ね、けっこう動きやすくていいじゃない」
「ありがとう、お月さま。わたし行ってくるね」
ベール「頑張ってね。見守ってるから。」

月竜は、星へ走っていった。

どうかうまくいきますように

祈りをささげた


おかしい。
あの人間が、いるはずがない。
時に干渉した?
まさか。時を戻すなんて、ことわりに逆らうのと同義だ。
この気持ちは何だ?何故私の記憶がある?
わからない。私は、どうすれば…。

「あの…」
この声は、ムーンリング?…そうか、今日は満月か…。
「お星さ…じゃなくて、すた…でもなくて、あの、そのっ」
スター「…なんだ?さっきからどうした、ムーンリング?ん…?」
「えっと…」
スター「様子が変だぞムーンリング。大丈夫か?」
「それってその…ベール…さん、のこと、ね」
スター「何?確かにそうだが…。ベール、じゃないのか?」
「あ、う、うん…」
スター「す、すまないっ、似てるものだからつい、失礼したっ」
「だ、大丈夫…」
スター「そうだった、私はスターっ、よろしく頼む、それでええっと、あなたは?」
「…知ってるよ、スター。」
スター「な?だが初対面…」
「わたし、ベールさんと仲良いから、ね。あなたの名前は聞いてる。」
スター「あぁ…そういうことか。えーと、それであなたは…」
「名前?わたしは……ツキ。」
スター「ツキか。しかし、ベールによく似てるな…血縁関係の話は聞いたことがないのだが」
ツキ「そ、そう?ベールさんのほうが年上だと思うけど…」
スター「ほう、妹か」
ツキ「あ、うん…それより、ベールさんのことムーンリングって呼んでなかった?」
スター「あー、いや、それはあまり気にしないでほしいのだが…」
ツキ「仲良いの?」
スター「まあ…腐れ縁みたいなものだ。」
ツキ「いつから知り合ったの?」
スター「物心ついた頃にはよくつきまとわれてたな…」
ツキ「幼馴じみってことかな。なんだかいいね。」
スター「そんなことはない。あいつの相手をしてると疲れて大変だぞ」
ツキ「でも、ベールさんきれいだよね。」
スター「ん?…あぁ、そう…かもな」

・・・。

ツキ「どうしたの?そんなにまじまじと見て」
スター「いや…そんなこと、考えたこともなかった、から」
ツキ「そっか、わたし、ベールさんと似てるんだっけ」
スター「ま、まぁ、だからかな」


それから、お星さまとふたりで空を眺めていた。
初めてだった。こんなにきれいな星空も、あんなにきれいな満月も、おだやかなスターの横顔も。
わたしたちは、ただ空を見上げているだけなのに、不思議と飽きなかった。

私は、おそらく満たされている。この、楽しくも、どこか緊張したような、言い表しようのない、そわそわした気持ち。心が締まるようで落ち着かないが、不快ではない。初めてではないような気がする。


ツキ「今日、晴れててよかった」
スター「ああ、きれいだな」
ツキ「うん、きれい。きらきらしてる」
スター「まぶしくて、輝かしい」

ツキ「星。」   スター「月。」

ちょっと、間をおいて、わたしたちは目が合っていた。

わたしにとっては、お星さまはきらきらしてる。

私にとって、ツキはかがやいている。

でも、お星さまを見るわたしは?

だが、ツキにとっての私は?

光っているのかな?


満天の星空が小さく光り、空に浮かぶ満月が道を青く照らす。
決して明るいとは言えなくとも、星も月も、確かに光っていた。
それでも、その光は、本当に本物なのか?誰かの借り物ではないのか?

スター「ツキ。私を、どう思う?」

偽りの光ではないのか?誰かの虚像じゃないと証明するには?私は今まで自分自身で光っていると信じていた。だが、今になって光が弱まってしまった。
だから…問わずには、いられなかった。

ツキ「…わたしは、今のスターのほうがいいかな」
スター「光っているのか?」
ツキ「うーん…でも、やっぱり今のほうがいい」
スター「今、か。何故だ?」
ツキ「うまく言えない。でも、恐くないっていうか…ね」
不思議なことに、悪い気はしなかった。お互いに。


それからまた空を眺めた。小さな光が、平面状に散らばっている。ぎっしりつまった砂じゃなくて、間をおいて、ひとつひとつが光っている。まるで静止画のようだった。

スター「…ツキ。」
ツキ「ん…なに?」
スター「飽きないのか?」
ツキ「うん。」
スター「いくらきれいでも、よくそんなに見てられるな」
ツキ「そう言うスターも、空から目を離さないよね」
スター「あの丸い月を見ていると、ひきこまれそうになるんだ」
ツキ「どうして?」
スター「よく見ると、模様のようなものがあるんだ。それが何の形かは、よくわからないけど」
ツキ「うさぎ、とかもちつきしてない?」
スター「うさぎ?小動物のことか?だが、もちつきとは何だ?」
ツキ「えーと…こうやって、ぺったん、ぺったんってやるの。」
スター「何だその動きは?うさぎは四足歩行だぞ。そんな動きできるわけないだろう。」
ツキ「と、とにかくこうやってもちつきしてるの」
スター「よくわからんぞ…大丈夫かツキ?」
ツキ「あ…うん…えっと、さっきのは忘れていいよ」
スター「?」
そっか…お星さまはドラゴンだもんね。もちつきとか知らないよね。うーん、はずかしい…変に思われてないかな…。

スター「ツキは、何を見てるんだ?」
ツキ「星。」
スター「どうしてだ?星なんて、小さな光の点々だろう。」
ツキ「待ってるの。」
スター「待っている?」
ツキ「星が流れるのを、待ってるの。」
スター「…それは、流れ星というものか?」
ツキ「うん。いつ流れてもいいように、ずっと見てないと」
スター「もし流れたら、どうするんだ?」
ツキ「お願い事をするよ」
スター「願い…か」

ツキ「お星さまは、お願い事を叶えてくれるの」
スター「…。」
ツキ「本当に、本当に、叶えてくれたの」
スター「……。」

ツキ「だからね、お礼を言いたい」
スター「お礼?」
ツキ「流れた星は消えてしまうけど…それでもわたしは、ありがとうって、伝えたいの。」
スター「どうして、感謝するんだ?消えてしまっては聞こえないだろう…」
ツキ「意味があるって、知ってほしいから。お星さまは、ひとつ、ひとつ、そこにあって、全部に意味があるの」
スター「あの小さな光…全部?」
ツキ「そう、ひとつひとつ、名前も、大きさも、色も、光も、そこにある意味も違う。けれど、無駄なものはひとつもないって」

スター「…ツキは、変わったドラゴンだな」
ツキ「やっぱり変かな?」
スター「今まで私は、そんなこと考えもしなかった」
ツキ「そう、だよね」
スター「…ひとつ、思いだしてな」
ツキ「どんなこと?」
スター「ツキみたいなこと言っていた人間がいたんだ…星は願いを叶える、と。」
ツキ「人間…」
スター「結局その人間は…私がどうにかしてしまったのだがな」
ツキ「それは…」
スター「今なら、少し、その人間の気持ちがわからなくもない。」
ツキ「でも、その人は」
スター「ああ、私が感情に任せてしまったせいで…。あの人間は…私を恨んでいるだろうな」
ツキ「きっと、許してくれるよ」
スター「どうしてそう思うんだ?」
ツキ「わたしなら、許すから」
スター「ツキは、優しいな。ありがとう。」
ツキ「スターが変われたからだよ」
スター「私が?」
ツキ「うん。」
スター「そうか…変わったのか…私が…。」

ツキ「あ、あれ…?」
突如視界がぐらりと揺れる。同時に意識ももうろうとする。
スター「ツキ!大丈夫か!?」
心配そうに抱きかかえるスターをよそに、わたしには、声が聞こえていた。
『日が近付いてる。ワタシのチカラもここまでみたい…戻ったらすぐに行くから、待ってて!!』
スター「ツキ!!どうしたんだ…頼むから、目をあけてくれ!」
力なく倒れるツキにどんなに声をあげても、何も反応してくれない。
どうしてこんなにも、私は動揺している?
なぜ、ツキを失うのがこんなにも怖いんだ?
私の頭が理解する前に、私の身体は私を動かしていた。


空は明るみがかり、星々の光は影となるように見えなくなっていく。
「あれ…朝…?」
地面に寝転がってるのもそもそもおかしいけど、疲れて起きるわけにはいかなかった。
そういえば、お月さまが来るとか言ってたっけ…。


ベール「ん…うーん…。」
スター「あ…ツキ、起きたのか!?」
ベール「ん〜?…スター?どうしたのよ、そんな顔して」
スター「え…?」
ベール「ごめんね、ワタシ、すぐに行かなくちゃ。」
ふらふらしながらも、月竜は飛んで行ってしまう。

スター「さっきのは…ベール…?」
雰囲気でわかるものだろうか。気が付くと、私はその名を口にしていた。
スター「いや…そんなはずはない…。」
普通に考えればありえないことだ。だって、私はツキをずっと看ていたから。
混乱している間に、月竜はもう追えないほど遠くに行っていた。


ベール「ふー、つかれたー…で、あなたはそれでいいの?」
「うん。お星さまに会えたから。たくさんお話できたから。」
ベール「そう。喜んでいるなら、ワタシもがんばったかいがあったわね。」
「わたし、帰らなきゃ。今までありがとう、お月さま。」
ベール「どういたしまして。でも、またここに来てもいいのよ、ツキ?」
「ううん、たぶん、無理だと思う。」
ベール「そっか…残念ね。」
「それに、ツキは、もういないから…。」
ベール「本当の名前じゃないの?」
「わたし、星月っていうの。」
ベール「それじゃあツキは、一夜限りの奇跡かしら?」
星月「うん。…お星さまには、さよならって言えなかったな…。」
ベール「そうだったの…よかったら、お願いしてく?」
星月「ううん、わたしはもう、気持ちいっぱいだから。」
ベール「でも、スターはどう思ってるかしらね?」
星月「お星さまが?」
ベール「ワタシの見た限り、いい線いってたと思うけどね〜。」
星月「わたしは…お星さまみたいにはなれないから。」
ベール「…そこまで言うなら止めとくけど。」
星月「そろそろ行かなきゃ。」
ベール「あなたの親も心配しちゃうかもね。」
星月「うん。お月さま、さようなら。」
ベール「さよなら、星月ちゃん。ワタシも楽しかったわ。」


人間は、もろいけど、価値があると、ワタシは思う。それはまるで、ガラス玉。
それにしても・・・
ベール「あのふたり、お似合いだと思ったのだけど…運命ってば、残酷ねぇ…。」
あるいはその運命こそが、人とドラゴンを分かつ境界線なのかもしれない。



流れ星。みたび願いを言えば、その願いは叶うと言われている。
ただし、タイムリミットは星が消えるまで。
それは、人間が広げた妄言。ありえぬうわさ。信じるに値しない。
だが…あの、出来事は…。

・・・太陽は、いささか眩しすぎる。
強烈過ぎる光。この光の前では、星竜ごときはただの影。頂点とも言える、ただ一つの光。何者も寄せつけない。
スター「・・・。」


青く晴れわたる空。星竜は、東に背を向け、上空を眺めていました。

彼の瞳には、流れ落ちる小さな星の光が映っていました。


終わり


〜月の章〜








(あとがき)
私も、流れ星にお願いごとをしたことがあります。
願いが叶うのは、夢があって好きです。
でも、消えるまでに3回言うのは無理がありますよね。

本にある分はこれで終わりです。
当時はこれで物語は終わりにしたかったのかも。
でも、いつの日か、続きが書けますように。


(おまけ)

実際に書いていた本

手書きで物語を作るのは慣れてなかったし、慣れない環境の中で感傷に浸りながら書いていたような。
手書き小説を書くきっかけをくれた友達には、感謝しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?